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面倒な主人公達

※この記事の内容は、お食事中を避けて閲覧される事を強く奨めます。


普通、RPGの主人公達は宿屋に泊まる位しか休息が無いのであります。
その他、多くの疲勞はアイテムや魔法を使うだけで治ってしまうので、頗る便利な身軆をしているのであります。
時々食事をしたりしますが、風呂に入ったり便所に行ったりなんてのは殆ど見受けられません。

もしかしたらセーブして電源を落とした後にプレイヤーの見ていないところで濟ませているのかもしれませんが、それらは偏に「面倒だから割愛する」の一言に尽きます。
そこまで作るのもプレイするのも面倒であり何ら面白味も無いから、そう云う生理的要素は尽く排除されるのです。尤もな話です。

私は密かに遊んでいる『RPGツクール』でも作風は勿論ですが何か自分だけの獨自の要素を構築してみたいと思ってゲームを作って參りました。
そうでもしなければ結局のところ凡庸な作品が出來上がるだけだと思うからです。
自分なりに一癖あるゲーム、それが私の理想であります。

然して多くの作品で「面倒だから」と云う理由で排除されていった要素に着目し、それを巧くゲーム上の戰略として樂しめるものに落とし込めないだろうかと思っておりました。

そこで行き着いた一つの結論。
それは「主人公は腹も減り、便所にも行き、風呂にも入る」と云う事であります。
主人公だって人間ですからね、地球人類ですから…。

RPGの食事|くつろぎぶた|note
以前、空腹と食事のシステムの事を書きましたが、實はそれ以外にも時間經過と移動距離によって「便意」と「衛生度」が変化していく様に出來ているのです。

便意が一定数を超えてしまうと「腹痛」状態になり、HPが少しずつ減っていきます。
衛生度は一定基準を下廻ると通行人から罵られて碌な話を聞けなくなります。

酷い扱いをされる主人公。メッセージウインドウも変化してしまいます…。

こう云う余計なトコロが妙にリアルに出來ていて多くのプレイヤーから「めんどくせえ主人公」とのお褒めのお言葉を頂戴してきましたが、そもそも旅とは色々と面倒なのです。

何分にもテーマパークに遊びに行っているのではありません。
「ファンタジー世界」ではないので、色々な事に氣を配らなくてはなりません。旅と冒險とはそう云うものです。

つまりはこのゲーム、そう云う部分の戰略が重要になって參りまして「敵を倒す事」や「謎を解く事」と同様に「いつ主人公を休ませるか」を考えておく必要があります。
ここで言う「休ませる」とは單なるHPやMP等のステイタスの回復の意味ではなく「食事して風呂に入ってお手洗いを濟ませて…」と云う「一息入れる」事であります。

…とは申しましても、特段難しく考える事は無いのです。
無暗矢鱈に難易度を上げる様な事は私も好みません。それなりの分別を持っているつもりですから………。
大事な事は旅路の段取りやスケジューリングとして樂しむと云う事です。

基本的には町や村に着いたらそれらの問題は解決出來る様になっております。

飯屋や辯當屋で食事を濟ませます。
風呂屋でひとっ風呂浴びて…
あとは便所を探して入るだけです。

基本的に町や村の中をゆっくり見て廻れば自ずと問題は解決する様になっております。もし面倒であればお金を出して上等な旅籠を使えば一度で濟みます。

町や村に在るのが「道具屋」と「宿屋」と「通行人の情報」と「壺や箪笥の中身」だけでは面白味に欠けると思っております。
折角の補給地点なのですから、それらを「生きている」状態にしたい訳であります。
色々なお店や設備があるから單なる「作業」としてではなく町を探索する樂しみも出てくるのであります。

日本全国津々浦々を巡る物語でありまして、それらの町や村を中心に物語は進んでいきます。
そこは腐っても旅。行く先々にゆっくり滞在するのがこのゲームの特徴となっております。

お待ちかね 入浴シーン

お風呂に入ると「衛生度」を最高値迄回復させる事が出來ます。
特に個人的に風呂と温泉に強いコダワリがあるものでございまして、こう云うものを作り込んでいるトコロが實に「私の作品」たらしめているのです。某國民的時代劇も20時半頃には由美かおるさんの入浴シーンがお約束になっておりましたので、こう云う部分は大切にしたいと思っております。

石段に在る温泉町。群馬縣某所…。

當然、温泉も樂しみます。
それぞれの温泉には効能があり、毒や麻痺を治せる湯なんてのもあります。
「衛生度」を維持すると云う攻略上必要な事以前に日本人ですから…。
安っぽい画質のゲームとはいえ「情緒」を大事にしたいのです。

ドリフターズのカバーではなく、元祖デュークエイセス版…♪

所によってはこう云う主人公の(どうでも良い)一枚繪が出てきます。
伊豆は混浴、箱根は富士見、草津は湯もみと無駄に細かいのが特色です。

だってそう云う方が作っていて樂しいものですから…。



便所も便所でそれなりにこだわっております。
「腹痛」の状態は「毒」状態の輕微なものですが、ジワジワとダメージが効いてきます。それを防ぐ為にもこまめに便所に行かなくてはならないのです。

便器を跨いでする事は…?

常識的に考えて3番目の選択肢は無いと思いますが、それはプレイヤー次第。コレを選ぶとどうなるかはご想像にお任せ致します…。
但し、ダンジョン(敵の屋敷や城)の中にも便所が在って當然の様に利用出來るのですが、中には便器の中に重要なアイテムや秘密の抜け穴が隠されていたりするので油断は出來ません。

江戸時代です。水洗便所ではありません…。

敵は主人公の行く手を阻む為に牢屋の鍵やら事件の証拠品やらをこうして隠している事があります。
しかも便器を調べたりすると「衛生度」が激減するオマケ附き…。

冷静に考えれば、派手な宝箱に入れて「ここに重要な品物が有りますよ」と解り易く放置しておく事は普通しないのです。
『マルサの女』よろしく証拠隠蔽の嫌がらせも甚だしいのであります。

便所は基本的に町や村と云った「前線基地」に在る物でございまして、遠出をする時や大掛かりな洞窟や峠を攻略する時は鬼門になります。
そこで所々存在する「野宿が出來る地点」を上手く使えばこの問題は解決します。

長旅に野宿は附きもの。

しかし、それでも駄目な場合は最後の手段として…

或る~日♪ 森の中♪

フィールド上の森やダンジョンの物陰と云った一部の地形上に居れば「緊急回避」が出來る様になっております。


何故ここまで面倒なモノをわざわざ拵えるのか。
それは主人公にフィールド上やダンジョンをウロウロしてほしくないからです。

RPGの禁句

經驗値や所持金を稼ぐ為にマップを作業的にうろつく事は古今東西数多の主人公達が行ってきたRPGに於いては當然の行為ですが、私は昔からコレが好きではありませんでした。
RPGが嫌われる原因の一つにコレがあるとの説もあります。

故に、無駄にウロウロしているとすぐに腹が減って便所に行きたくなり、身軆も汚くなってくる…。
謂わば一種の「永久パターン防止」の措置なのでありますが、そう云うゲームなので主人公の強化やお金の稼ぎにも工夫が求められます。

そう云うところを考えながらの旅なのです。
「ゲーム」なのですから「作業」にしたくないのでありますれば、この作品は文字通りの「クソゲー」として扱われているところを申し上げる次第でございます。

主人公だって色々と面倒なのです。


(記事全文3000字!)


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