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【2021年5月】今月の新語・流行語 in English ~逃げ恥婚・投げ銭・予約殺到~

こんにちは。旺文社ココマナ編集部のS藤です。
連休から気持ちよくはじまった5月も残すところあと4日。
五月病なんて言われる時期でしたが、みなさんうまく乗り切れたでしょうか。

さて、今回で2回目となる「今月の新語・流行語 in English」。毎月末、世の中を映しだしていることばのなかから広がりやおもしろみを感じるものを選出し、編集部が英訳を考案して発表します。

▼先月の記事はコチラ

それではさっそく、2021年5月の新語・流行語トップスリーをみていきましょう!

第3位「予約殺到」

3位_2021年5月

5月に入り、新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化。自治体がワクチン接種の予約受付を開始しましたが、希望者のアクセスが集中し電話回線やウェブ予約システムがパンクする事態が多発。予約殺到により各所で混乱が生じる様子が報道されました。

「予約殺到」は a flood of appointments と表現します。flood は「洪水、殺到」という意味。洪水のように appointments が押し寄せてくる様子を想像すると、「殺到」ということばのイメージと結びついて納得感がありますね。

また、「予約」というと reservation を思い浮かべる人も多いと思いますが、この場合は appointment を使うのが自然。どちらも「予約」という意味ですが、その対象がレストランやホテルなど「場所や空間、施設」の場合は reservation、「人」の場合は appointment を使います。
ちょっと意外に思えるかもしれませんが、英語では病院を予約する場合も、「お医者さん(看護師さん)に会う=人に会う」と捉えるので、appointment を使うんです。

また、別の言い方で inundation of appointments と表現することもできます。inundation も「洪水、殺到」という意味で、inundate は「~を水浸しにする、(受身形で)~が押し寄せる」という意味の動詞。レベルが高い単語なので、使いこなせると上級者です!

会話で使うときはこんなふうに言います。

My call won't connect because of a flood of appointments for vaccinations.
(ワクチン接種の予約が殺到していて、電話がつながらないの。)

On the release date of the new game, the online shop was inundated with reservations.
(新作ゲームの発売日、オンラインショップに予約が殺到しました。)


第2位「投げ銭」

2位_2021年5月

近年ライブ配信サービスなどでよくみられるようになった課金システム、通称「投げ銭」がランクイン!
5月7日、Twitterが「投げ銭」機能をテストしていることを明らかにしました。「投げ銭」はもともとストリートミュージシャンや大道芸人に対し、パフォーマンスのすばらしさを称賛して少額の現金を投げ入れる行為を指すことば。近年では、動画や音声などの配信者に、視聴者がお礼や応援の気持ちを込めてお金を送ることを言うときにも使います。

投げ銭、特にネット上での投げ銭を言う場合は、online tipping と表現できます。海外のチップ文化についてはご存じの方が多いと思いますが、これを online「オンラインで」行うと考えて訳します。
ほかに、「投げ銭」の英訳として tossing money ということばを見聞きしたことがある人もいるかもしれません。しかし、現代ではこのような意味で使われることはほとんどなく、なんと「投資」を意味するケースが多いようです。

会話で使うときはこんなふうに言います。

Did you see that video?  It was so interesting that I made an online tipping!
(あの動画見た? すごくおもしろかったから投げ銭しちゃった!)


第1位「逃げ恥婚(共生婚)」

1位_2021年5月

今月のトップは、一世を風靡した大ヒットドラマで話題になった「逃げ恥婚」、もとい「共生婚」です!
5月19日、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で主役をつとめた新垣結衣さんと星野源さんが結婚を発表。劇中で夫婦役を演じた二人のリアルでの結婚を、多くの人が祝福しました。

このドラマを通じて「逃げ恥婚」とも呼ばれ話題になったのが「共生婚」。共生婚とは、お財布や部屋などを別々にし、ルームメイトのように割り切った生活をする新しい結婚スタイル。従来の結婚のイメージとかけ離れていますが、お金の管理や家事の分担などで揉めない、一応は結婚という形をとることで親や周囲を安心させ、社会的地位を守ることができるなどのメリットも注目されています。

欧米では、結婚やロマンスの概念が宗教やおとぎ話の影響を受けてつくられていることもあり、「共生婚」という概念はあまり浸透していないようです。そこで我々編集部が提案するのが、individualistic marriage という表現。直訳すると「個人主義の結婚」となり、互いが独立して暮らしているということを表すことができます。
ただし、これだけでは相手に伝わらないことがあるため、話すときは具体的にどんな結婚スタイルを指しているのか補足しましょう。

共生婚のほかにも、「〇〇婚」という言い方はたくさんありますよね。それぞれの特徴を捉えた「〇〇婚」はこんなふうに表現します。

・contract marriage(契約結婚)
・arranged marriage(お見合い結婚)
・commuter marriage(別居婚)
・status-gap marriage(格差婚)
・sudden marriage(電撃結婚)
・common-law marriage(事実婚)

・shotgun marriage(できちゃった結婚)
…娘から妊娠していることを告げられた父親が、激怒の末彼氏にshotgun(ショットガン)を突きつけ結婚を迫ったことからきたことばといわれています。

・May and December marriage(年の差婚)
…一般的に、11歳以上年の離れた結婚に対して使います。由来には諸説あり、May(5月)と December(12月)が離れていることからきた説や、May=春を若者に、December=冬を年配者にたとえたという説もあります。


会話で使うときはこんなふうに言います。

Individualistic marriage is a new style of marriage, that was featured in the popular drama ”Nige-Haji”.
(人気ドラマ「逃げ恥」で取り上げられた共生婚は、新しい結婚の形です。)

I would like to have an individualistic marriage because it would save me a lot of stress.
(ストレスが少なくて済むから、私は共生婚したいです。)


ちなみに、ドラマのタイトル「逃げるは恥だが役に立つ」はハンガリーのことわざ。そのまま英訳すると、Running away is a shame, but it helps. ですが、原作漫画の英語版タイトルは The full-time wife escapist というそうです。
full-time wife は「専業主婦」、escapist は「現実逃避者」という意味。ストーリーやキャラクターを捉えたおもしろい英訳ですね!


総評

今年は梅雨入りの時期が平年より早い予想です。梅雨前線は flood を引き起こす可能性もあるのでじゅうぶんご注意を。
とはいえ、しとしとと降る雨はなかなか趣深いもの。一説には、日本には400語を超える雨の呼び名があるそうです。もとの意味から使われ方が変わってきた「投げ銭」や現代の価値観を反映した「共生婚」などの新しいことばも、昔からある美しいことばも、どちらも楽しみながら使いたいですね。


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「今月の新語・流行語 in English」
世の中を映しだしている旬なことばのなかから、旺文社ココマナ編集部がことばとしての広がりやおもしろみを感じるものを選出して英訳し、1位から3位までを発表。英語で決まった言い方がないことばは、編集部が独自に表現を考案します。毎月最後の金曜日に投稿中。

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