また大きく欠伸をしたね 夕べ 眠れなかったのかな 陽だまりに抱かれて揺れている うつらうつらと虚ろな眼 堪えず君は寝転んで 浅く微睡みに落ちてゆく 楽しみで 嬉しく…
まっさらな布地を指でなぞった。 ざらりざらざらと爪音を弾くカンバスを ひとしきり眺めた後にふっと溜め息を吐く。 そして一歩、二歩下がり座に着いた。 そうして向き…
桜の咲く春の日の朝。 朝露を落とす桜の木と足元に散り潰れた花弁、 その美醜両端が視界に映る度に ふと思い出すことがある。 それは幼い頃の記憶。 サクラ、パンジー、…
臙脂原おぼろ
2022年10月11日 12:36
また大きく欠伸をしたね夕べ 眠れなかったのかな陽だまりに抱かれて揺れている うつらうつらと虚ろな眼堪えず君は寝転んで浅く微睡みに落ちてゆく 楽しみで 嬉しくて淋しさで 哀しくて夜を更かしてしまったんだね 時間も忘れて耽る享楽の上らんらんと世界を照らす室内灯その頭の中までもが感光して熱を帯びたまま冷めないんだね 悲哀を抱いて零した涙の跡ぼんやりと薄目で仰ぐ常夜灯
2022年5月15日 00:22
まっさらな布地を指でなぞった。 ざらりざらざらと爪音を弾くカンバスをひとしきり眺めた後にふっと溜め息を吐く。そして一歩、二歩下がり座に着いた。 そうして向き合ったままの四畳半には知らずのうちに斜陽が射していて、何も描かないのかとばかりに足元に散らばった画材を照らしている。わかってるいるよ。と、ひとりごちて座したまま私はそうっと目を閉じた。 いつの日だったか、半ば衝動的に
2022年4月4日 07:03
桜の咲く春の日の朝。朝露を落とす桜の木と足元に散り潰れた花弁、その美醜両端が視界に映る度にふと思い出すことがある。それは幼い頃の記憶。サクラ、パンジー、タンポポ、マリーゴールドサルビア、シロツメクサ、スミレ、チューリップツユクサ、オオイヌノフグリなどの花。園の花壇や周りに咲いたそれらを童心故に悪気もなく手当り次第に摘み入れてはそこに水を注いで、揉んで、潰して、抽出して、