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大学はなぜ学生に返金をしないのか?

コロナで大学生が通学できない状態が続いている。今春入学以降、ずっとオンライン授業で大学には行けていない、行ったのは1、2回?という学生もある。秋学期の授業もオンラインだという。通学課程と通信課程では学費が大きく異なるのにこれでは通信課程と同じではないか。学生は何に対して高額の学費を支払ったのか、学費の構成から妥当性を考えてみた。

大学によって使われる言葉は多少違うが、大学の学費は主に入学金、授業料、設備費・実習費(教育充実料などとも言われる。授業料に含まれていることもある)、諸会費で構成されている。学費の構成とその内容(何に対するものか)は概ね以下のようなものだろう。

【学費の構成とその内容】
①入学金:大学で学ぶ機会を得るための手続き周辺のこと
②授業料:先生から教えてもらうこと、授業を行ってもらうこと
➂設備・実習費:授業を受ける、学ぶ環境を提供してもらうこと
④諸会費:父母会、校友会等の運営に関すること

①は一時的に支払うもの、④は金額は小さい。支払いが複数年に亘り、金額が大きいのが②と➂である。

オンラインでも授業は行われているので、学生が大学側に支払った学費のうち授業料が返金されないのはまだ理解できる。入学の諸手続きとしての入学金も同様だ。

しかし、設備費・実習費は返金対象になるのではないだろうか?

学生は通学できていないから当然、図書館を始め、キャンパス内の施設、設備を利用できていない

そればかりか、自分のPCをフル活用し、人によってはオンライン授業を受けるためにわざわざPCやカメラなど学習環境整備のために自分で設備投資をした学生もあるかもしれない。

学部によっては実習も、自分で材料諸々を揃え、部屋で行い、その映像を自分で撮影して動画を大学に提出といったケースもあると聞く。これでは何のために大学に費用を払ったのかわからない。

授業料においても疑問は残る

なぜなら、通学課程と通信課程をもつ大学ではその金額が大きく異なるからだ。都心の某大学の通学課程と通信課程の学費を比べると、通学課程は通信課程の倍の学費となっている。学部や大学によってはこの差は更に大きくなりもする。

オンライン授業とは結局のところ、通信授業だ。
学費がこれだけ違う以上、通学課程のオンライン授業が通信課程の通信授業より高額な理由を大学側は説明できなければならない。通学して受けるはずだった授業をオンライン(通信)授業に切り替えた結果、授業の内容、品質、学生が得られる成果・効果に差異が生じている可能性もあると思う。

大学は教育サービスを提供する、その「対価」として高額の学費を学生から受け取っている。対価とは他者に財産・労力などを提供した報酬として受け取るものである。

大学は、提供していないサービスに対して先に受け取ってしまった報酬を学生に返金するのが筋ではないか?

春先は未知のウィルス出現による混乱が大学にも学生にもあっただろう。
大学も学生もオンライン授業にそろそろ慣れた今、大学は受け取った学費と提供しているサービスの妥当性をまずは再考されてはいかがだろうか?

また、学生は、学費に見合ったサービスを提供してもらえていないのであれば返金を求めても良いのではないだろうか?

コロナの下での生活、教育が常態化していく一方、DX(デジタル・トランスフォーメーション)で社会は大きな変貌を遂げていく。

テクノロジーの急速な進化により、「人間とは?」といった根源を問われている今、「大学とは?」「そこで学ぶ意義とは?」といった根源的な問が大学にも向けられている。

根源的な問に対する答えを踏まえて、大学での教育の在り方、提供される授業の内容、通学・通信といったサービス提供の在り方・仕方、提供するサービスに対する対価(学費)の在り方など、細かな整理が今後さらに進むことになるだろう。

大学にはITに弱い教授や事務室等の関係者も多いと思われるなか、混乱のなかで大学側も教授陣もオンライン授業の実施、教育サービスの提供において学生のために様々な努力、工夫をしてくれているだろう。

一方で、玉石混交とはいえ、学位や学名に拘らなければ「学びの場」はネット上に溢れている

教授のライバルは同一学部、同一大学、他大学の教授ではなく、世界中の教授orもっと若いYouTuberかもしれない時代だ。

オンライン授業なら教授の数ももっと少なくて良いかもしれない。もちろん、オンラインがすべて良いわけでもないだろうし、リアルの対面授業の良さもあるだろう。逆にそれを見極めるときと言えるだろう。

学生、若者を巡る環境の変化は激しく、有名な大学を出たからと言って将来への安心が得られる時代でもない

コロナは見方を変えれば、大学にとっても変革を可能とする、最後のチャンスなのかもしれない。

オンライン授業の品質や効果が仮に高いのであれば、もともとあった通信課程を見直すこともあって良いだろう。逆に、通信課程の教授は通学課程の教授とは異なるノウハウを持っているかもしれない。大学にとってはゼロベースで見直すチャンスとも言えるのではないだろうか?

いずれにしろ、学生は大きな困難に直面している。
今春、地方から上京したのに大学に行けず友達ができない。
バイト先の飲食店も状況が厳しく、退学が頭をよぎる。
奨学金、ローンの返済が心配だ。

こんな風に精神的にも経済的にも厳しい状況にある若い学生に対し、熟練した知識や経験、時に財力も持つ大学や教授陣だけが安泰、安穏な状態ではいられないだろう。





歩く好奇心。ビジネス、起業、キャリアのコンサルタントが綴る雑感と臍曲がり視点の異論。