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「猫の地球儀」秋山瑞人

SFはどうしてもとっつきにくい。
物語・設定が重厚なハードSFなんて呼ばれるものだと余計にだ。
でもMっ気があるのか、そのとっつきにくさこそSFだ、なんて思ってしまう。

SFは設定が大事、いかに魅力的な設定の世界なのか、というところが非常に重要なのだ。
それを描くのに、妄想をだらだら書き連ねるように設定だけを書くと、物語としては、いつ始まるの?となってしまう。
取り扱い説明書か?と。
かといって、物語を進めながらだと最初は一体何を書いているのだろう?と”?”を飛ばしながら必死についていくことになる。
この世界観を理解するまでの2パターン、どちらもSF慣れしていない人にはとっつきにくい要素となるのだろう。

でもね。。世界観にしっくり来た瞬間、物語のなかにどっぷりはまっていくのだ。
逃れられない、結末を見るまでは。
SFは読むのに覚悟がいるのだよ、それがライトノベルであっても。

本作はライトノベル、電撃文庫から発行された作品。
ライトノベルと侮るなかれ、非常にSFしているのだ。

サムネイル?画像は表紙の写真。
主人公は少女ではなく猫の方なのだ。

この世界は宇宙のコロニー、人類は衰退していた知能をもった猫たちが支配している。
機器の捜査や日常の色々をこなす為、ロボットを利用する。
このロボットが人間型なのだ。
主人公の黒猫があやつるのが少女の形をしたロボットなのである。

主人公の黒猫は、いつか地球に行きたいと思っている。
だが地球は猫たちの世界では宗教的な意味のあるところ、観念的な存在なので、そこに行きたいと思うのは異端とされ、排除の対象となる。
まるでキリスト教圏における地動説のようだ。
それでも地球に行きたいと願う人たちをスカイウォーカーと呼ぶ。
黒猫はスカイウォーカーとなり、地球を目指すのだ。

ロボットと猫との絆、地球に行くという夢を追う猫の情熱、迫りくる体制側の手、そしてロボットを使った戦闘。
ライトノベルだからといって、やわでぬるい展開は無い。
夢の為に犠牲になるものや、どうしようもない現実、別れなどが丹念に描かれる。
表紙のかわいらしいイラストからは想像できないぐらい重厚な物語だ。

この本は、このSFがすごいで見つけたと記憶している。
何が感動したって、SF好き達はライトノベルだなんだとなめることなく、SFとしてきちんと評価しているってこと。
隠れた名作を隠れさせない、ファンたちの執念を感じた。

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