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「甲賀忍法帖」山田風太郎

社畜という言葉がある。
最近よく聞くし、社畜がこうなっただああなっただの、社畜と○○だのという漫画も多い。

そもそも社畜ってなんだ?
会社の為に、私生活を犠牲にして長時間働くってことが社畜?
でもそれって昔はモーレツ社員とか言われて肯定的にとらえられてなかった?

何が違うんだろう?
会社がそういった社員に対して渡すもの、”対価”が見合わなくなっているのはあると思う。
また社員側もその影響か、やり甲斐や使命感よりもプライベートを重視するようになってきている。
なので上記のような働きかたに否定的な意見が出てきて、社畜という言葉が出てくるのだ、と勝手に分析。

所属している組織の他に大事にするものがある、それが許されている世の中だから出てくる言葉。
ではそれが許されない時代だとどうだろう?
組織に従わなければいけない時代だったら。。そうしなければ生きていけない時代だったら。。。

江戸時代はそんな時代だ。
武士が政治を行い、組織を作るために規律が重視された時代、逆らうということはその政治を、そして国を揺るがしかねないので、守らないということはイコール死なのだ。

本作は山田風太郎の忍法帖シリーズの1作。
いつものように奇想天外な忍法を楽しむだけではない。
上記の通り、個よりも組織が重視される時代において、殺し合うしかない忍者の悲哀が描かれている。
これがただの忍術合戦に深みを与えて、傑作としているのだと思う。

あらすじは下記の通り。
伊賀と甲賀の忍者の里は、長年確執があったが、忍びの頭領である服部半蔵に不戦を言い渡されていた。
しかも伊賀の頭領の娘と、甲賀の頭領の息子は恋仲で近いうち祝言をあげる予定。
これで両者は完全に和解するはずだったのだが。。。

世継ぎに悩む家康、秀忠の次の将軍は竹千代か?国千代か?
そこで武家らしく戦いで決めることに。
双方の代表を殺し合わせ、勝った方を世継ぎとすると、しかも武家の血が流れるのはもったいないので、忍を使おうと。
こうして不戦の約定は解かれ、二人の将来を誓い合った若者二人が殺し合うことになる。

まぁ家康ひどい、これこそ社畜だ!!

忍者たちの壮絶で奇想天外な忍術合戦も面白いが、組織の為に個を捨て殺し合う二人の悲哀が読み所なのだ。
日本版、風太郎版、ロミオとジュリエットや!!

漫画化、アニメ化もされており風太郎の不朽の名作の1つなことは間違いない。

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