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「キッド・ピストルズの慢心 パンク=マザーグースの事件簿」山口雅也

山口雅也は変わった作品が多いと思う。
ミステリーを読み込んで、定番パターンやお約束を理解した状態だとより楽しめる作品が多いという印象。

例えば「日本殺人事件」「続・日本殺人事件」という作品がある。
現在の日本とは似て非なる世界、忍者やくのいちが存在、サラリーマンは失態を犯したらハラキリをしなければならないというどこかおかしい日本が舞台となっている。
そこにやってきた、たぶんアメリカ人の主人公、彼が事件に巻き込まれる。
この世界のロジックはきちんと読者に提示される、その状況下で論理的な推理が繰り広げられるのだ。
変わった作品だった。

本作はキッド・ピストルズシリーズの中の1作、キッド・ピストルズシリーズもまた、一風変わった世界の話。
パラレル英国と呼ばれる、凶悪犯罪の増加と警察の腐敗が進んでいる今とは違う別のイギリスが舞台。
犯罪抑止のために警察採用基準を緩めたら、パンク野郎が集まる混沌とした警察組織に。。
そこでシャーロック・ホームズを生み出したお国柄、私立探偵に探偵士という称号を与え、72時間だけ先行して警察を手足として使って捜査が出来るという法案ができた。
そうなるといろんな探偵士が活躍する作品集なんだろうと思うが、そうではない。
主人公で事件を解決するのは、なんとパンク刑事のキッド・ピストルズなのだ。
キッドと相棒のピンク・ベラドンナは探偵士のサポートとして捜査にあたるのだが、探偵士よりも先に真相にたどり着き事件を解決するのだ。
無教養とされるパンク野郎、ワトソン役が活躍するという逆転が楽しい。

事件もマザーグースを題材にした変わった事件が多く、キッドの所属する課も”そんな馬鹿な?”って事件を扱う課なのだ。
個人的には「執事の血」が一番のおすすめ。
キッド・ピストルズシリーズ全編を通しても最高傑作だと思っている。

本作を楽しく読めたら、山口雅也の奇想天外ミステリーを他にも読んでみて欲しい。
上述した日本殺人事件シリーズの他にも、垂里冴子シリーズや、ノンシリーズの「生ける屍の死」などが代表作かと。
あと推理小説とはちょっと違うが、「ミステリーズ」も面白いのでぜひ。

今回記事を書くにあたって、ちょっと調べてみたのだが、キッド・ピストルズシリーズ自分が知らない続巻が出てた!!
読まねば。。

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古本か。。

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