見出し画像

セトゲイなんて最高じゃないか:直島

セトゲイというはつまり、瀬戸内国際芸術祭のことであり、あるいは瀬戸内トリエンナーレのことでもあり、香川県を中心とした瀬戸内海の島々で行われている芸術祭だ。ちなみに、よく聞く「ビエンナーレ」と「トリエンナーレ」の違いは、ビエンナーレが2年周期、トリエンナーレが3年周期で行われる芸術祭であるということらしい。4年周期になると「オリンピック」なんて呼んだりするのかなとちらっと思ってみたりする。

草間彌生の『南瓜』があることで有名な直島は、ある種の人にとってはインスタ映えスポットであり、ある種の人にとっては芸術のオアシスである。船を降りれば、草間彌生の赤い『南瓜』や建築家・藤本壮介による『直島パヴィリオン』が僕たちを出迎える。ピーカンで日差しが強く、その日差しを反射する海を背景とした芸術作品は堂々たるものだ。手に負えぬほど大きな自然を利用することで、人工物が本来持っている以上の価値が生まれているようだ。自然災害のニュースを見ると、やはり人間は弱くて、自然の前には力を持たない小さな生き物であると感じるが、直島に降り立つと、人間もなかなかやるじゃん……なんて思える。

草間彌生『南瓜』

電動アシストのついた自転車をレンタルし、車の少ない海沿いの道路のど真ん中をかけ抜ける。よく考えてみれば、海を見ながら自転車を漕ぐなんて人生において初めての体験かもしれない。人生で初めて味わう快感の心地よさに突き動かされ、「海じゃー!」なんてセリフが飛び出たりして、島の坂を登ったり下ったりしていれば、フェリーで眠れなかったことなんてすっかり忘れてしまう。

海じゃ


きちんとたてたスケジュール通り、ベネッセ・ハウス・ミュージアムから李禹煥美術館へと流れる。本当のことをいえば、地中美術館へも行ってみたかったのだけれど、チケットは全て完売しており、そのまえを通るだけで我慢した。地面の中に埋められた美術館。地面へ潜っていく美術館。いつか必ず訪れることを宣言して通り過ぎる。

ベネッセ・ハウス、李禹煥、地中の3つの美術館に共通する点は、安藤忠雄が設計しているという点である。コンクリート打ち放しで有名な安藤建築が、直島のひとつのエリアに3つ並立しているので、安藤忠雄はしごなんて贅沢も可能なわけだ。特にベネッセ・ハウス・ミュージアムでは安藤忠雄の真髄を見ることができる。高さは大体20メートルほどだろうか……それくらいの壁に沿って階段が作られている。何度も曲がりながら階段を上り切った先は、ただの行き止まりなのである。これは、莫大な金がかけられ、不動産に付随されている巨大な無用の長物なのであり、いわゆる「超芸術トマソン」なのだ。もしかすると日本最大の「超芸術トマソン」かもしれない。ということを鑑みると、「超」超芸術トマソンということができよう。

超・超芸術トマソン

ベネッセというと、僕はしまじろうもやっていたし、進研ゼミもやっていた。進研ゼミにおいては、頻繁に届くサクセスストーリーの漫画を読んでいるうちにいつの間にか初めてしまい、赤ペン先生の景品だけを欲し、あとは特に勉強をすることもなく、多くの子供たちと同じように溜めに溜めていたけれど、そんな僕たちのお金が芸術に使われ、数年後に僕をワクワクさせるなんて、これほどまでに素晴らしいことがあるだろうか。あるかもしれないけれど、ないかもしれない。

この記事が参加している募集

夏の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?