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【逆光記】〜岐阜に行くわよ②〜

柳ヶ瀬商店街の中のとあるビルの4階まで階段を上がった場所に柳ヶ瀬夏まつりボランティアの拠点があり、これはつまり『逆光』チームのアジトでもあるのだけれど、そこからさらに1フロア階段を上がった場所に寝泊りをする部屋がある。ちょっと小汚いおばあちゃんのうちのようで、シャワーヘッドからは4本しか水が出てこず、シンクはいろんなものが詰まっていて気味が悪い。少しでも油断をすると部屋の中が猛暑になってしまうため、常にエアコンをフル稼働している。そのせいで夜も寒さで目を覚まし、毛布にくるまって寝るという変な環境だ。この場所を家主(?)の方の好意で無料でシェアハウスをしてもらっており、僕は無料で寝泊りができるから文句をいう権利はないのだけれど、この場所で寝泊りするには相当な我慢が強いられる。

そんな部屋の床で8時に目を覚まし、1人先にアジトのあるビルを出て柳ヶ瀬商店街を散歩する。僕はヘンテコな看板を見るのが好きなので、見慣れたチェーン店の看板がひしめく京都の河原町なんかよりも、柳ヶ瀬商店街はよっぽど歩いていてワクワクする。昭和の遺構のような商店街を右を見て左を見て上を見て歩きながら、頃合いのよい喫茶店に入る。おばあちゃんと40歳に満たないほどの女性が店を切り盛りしており、「メニューをください」といってもホットかアイスかを聞かれるだけだった。例えば、かもカフェでランチを食べようとすれば、まずAかBかCのどれにするかを聞かれ、セットの中国茶は3種類の中からどれにするかを聞かれ、ホットかアイスかを聞かれる。喫茶ゴゴにてモーニングを頼めば、コーヒーをドリンクを聞かれ、セットはバナナとゆで卵どちらにするかを聞かれる。そんなスタンダードで暮らしている僕にとって、質問の数が極端に少ない注文というのは、生まれてすぐに親がどこかへ行ってしまう動物のような心持ちである。

しかし、そんな僕の不安は他所に、アイスコーヒーとモリモリのサラダ、ジャムトースト、さらにはチーズトーストまで出てくる。値段は何と450円。岐阜のモーニングはサービス精神が旺盛だ。ちなみに翌日に食べたモーニングは、コーヒーとトーストだけでなく5種類くらいの小さなおかずが付いて500円。小さなおかずがいくつか付いてくることで有名な京都のおばんざい定食もそれを知ると万歳三唱をするだろう。名古屋にはコーヒーを頼めばパンが食べ放題になる店があるらしい。京都と東海でのモーニング文化の違いに(ギリギリ喰らいはしない程度に)驚いた。

柳ヶ瀬商店街の中にある味噌カツ屋は三和と言って、岐阜ではまぁ有名なお店らしい。みんなは何回か来たことがあるらしく、メニューの真ん中らへんにあったヒレカツを頼んでいたが、僕はよくわからないので、いちばん上にあるものがお店のおすすめなのだろうと推察し、ロースカツを頼んだ。それから夜は焼きチーズオムライスという、オムライスとドリアを合体したような、いかにも僕が好きそうなものを食る。翌日の昼には更科という冷やしたぬきそばが有名というお店に行き、冷やしたぬきが有名な場所で冷やしたぬきを食べると、冷やしたぬきの思う壺だと思った僕は暖かいたぬきそばを食べることにして、蕎麦はもちろんのこと、出汁のよく染みた天かすは、天かすのくせにおばあちゃんの作る煮物くらい上品な味がした。おやつに食べようと思っていた五平餅は買いに行った時にはお店が閉まっており、悔しくもチャレンジ失敗であった。

こう書いていると、食べるために岐阜へ行ったようだけれど、朝から晩までパソコンに向き合って10以上のイベントビジュアルを作ったし、柳ヶ瀬商店街でロケハンもしたし、誰が何と言おうと、オオナリはちゃんと働いていた!と須藤蓮がきっと言ってくれると思う。



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