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結果オーライも実力のうち【寿退社コンプレックス】

私は、26歳になる直前の春に寿退社した。
結婚相手は、同じ会社で働く後輩。
在職期間は丸3年だった。

当時、私はノルマの厳しい営業の仕事をしていて、とにかく毎日仕事のことしか考えていなかった。

成績がいいときは、何もかもキラキラして見えたし、街に流れる音楽もすべて素敵に聞こえた。化粧したり髪を巻いたりするのが楽しくて、欲しい服もたくさん頭に浮かんだ。

逆に成績が悪いときは、常に頭の中が「未達」という言葉であふれていて、朝起きるのが心底辛く、大好きなごはんさえ美味しいと思えなかった。

そんなときの、緊張と絶望が入り混じったような空気の匂いは今でも忘れられない。

正直、営業なんてみんな同じようなもので、多かれ少なかれ同じ経験をしていると思う。

でも、その頃の私はメンタルバランスがガタガタで

成績が悪いことで「上司から叱責される恐怖」と「自分の居場所がなくなる恐怖」で心が恐怖に支配されてしまった。

メンタル疾患にこそならなかったけれど、しだいに「なんだかこのままだと私やばいかもしれない」と毎日お風呂の中で考えるようになった。

そんなとき、別の支社でたまたま知り合った今の旦那と付き合い始めた。

直接一緒に仕事をすることがなかったから、良い距離感を保って、甘く楽しい時間を過ごすことができた。とてもとても幸せだった。

そして1年後、私は寿退社した。

会社を辞めるときはみんなに「おめでとう」と声をかけられ、私も笑顔で「ありがとうございます」と返していた。

でも、真実に向き合うことになったのは、結婚の数ヶ月後に実父と話したときだ。

「お前は寿退社じゃなくて、仕事から逃げたんだろ?」

そう言われたとき、心の奥底にしまってあった気持ちを言い当てられて泣きそうだった。というかちょっと泣いた。

父の言う通り、私が仕事を辞めた本当の理由は「仕事を辞めたかったから」だ。

それを、結婚のタイミングとうまいこと合わせて「結婚するから」にすり替えた。

今の時代、結婚は退職の理由にならないかもしれない。
ただ、私たちは遠距離恋愛だったこともあって

往復の新幹線代がもったいない…
遠距離を続けても生産性がない…
異動できるポジションがないらしいし…

などとあらゆる言い訳を引っ張ってきて、なんとか周りから「それは結婚した方がいいね」と同意してもらえるような状況を作り出していた。

旦那と良好な恋人関係を築けていたのも幸いして、すべて計画通りに進んだだけだった。

私は仕事から逃げた。

それが、誰にも言えないコンプレックスとしてずっと心のわだかまりになっていた。

今でも、成績を伸ばして昇進した同期を見たり、違う業界ですごい賞をとった学生時代の友達を見たり、起業してイキイキとSNSで宣伝している若い人を見たりすると、心の奥が少しだけ苦しくなる。

素直に「おめでとう」「立派だなぁ」と思う気持ちはあるのだけれど、そのあと少しだけボーっとしてしまうのだ。

このもやっとした感じは、専業主婦として充実した日々を送ることでは解消できない。

あの時みたいに、スーツを着て、誰よりも早く会社に行って、達成できたら仲間と飲みに行って、数字で怒られたらトイレでひっそり泣いた…

そんな、私なりの ”全力の日々” をやり直さないと、完璧には消えないのだろう。

だから、このたまーに頭をもたげるやっかいな「寿退社コンプレックス」と上手く付き合っていくしかないのだ。


でも最近、そのコンプレックスが少しだけ軽くなった言葉がある。

それは

"結果オーライにできるのも才能"

という言葉。

確固たる目標を持って、一度自分が選んだ道をまっすぐ突き進むことだけが正義じゃない。

トラブルや予想外のことが起きて、道をそれたり脱落してしまったとしても、そのあと結果オーライだったのは、

「新しい選択を自分が正解にしていく!」という強い気持ちを無意識でも持っていたから。そして、その気持ちが持てるのだって立派な才能だ。

私にはその発想がなかったから、スッと心に入ってきてちょっと救われた。

人生は選択の連続で、本当はこうしたかったのに…こうなりたかったのに…と後悔することも多い。でも、道をそれたから見えたものもたくさんあるはずで、それに向き合って感謝することができれば、時間をかけて今の自分が "正解" になっていくのかもしれないな、

と思った。

今は、こんな可愛くて愛おしい娘と出会えたんだから、それだけで私の選択は大正解だったんだ、と心から思えている。


※まだnoteはじめたばかりだから、自己紹介も兼ねた内容を書いています。こんな始めたばかりの素人の私の記事を、読んで、しかもスキつけてくれる人がいるなんて、昨日からすごく嬉しい。本当にありがとうございます。


おわり。




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