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中華屋省の陰謀(熊本県水俣市 湯の児温泉)

 十五時前に湯の児に到着、本日の宿「昇陽館」にチェックイン。
 事前の天気予報に反し、外は清々しく晴れ渡っていて、ベランダから外に出ると、すぐ目の前に青く凪いだ不知火海を見渡す事ができた。

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 入り江になっている関係で、目の前いっぱいに海が見えているのに、潮騒は聞こえない。太平洋側で生まれ育った身としては、それは実に不思議な感覚だった。蝉の音だけが、真夏の海に響き渡っていた。

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 早速風呂に行った。当宿には「空いていれば使って良い」貸切風呂が二つあって、上記掲載の写真はそのうちの一つ「洞窟風呂」である。炭酸水素塩泉の掛け流し、泉温は50.4度。夏に入るにはちと熱いが、あっさり系の良い湯だった。

 風呂上り、夕食まで随分時間があったので街中を散策。宿や共同駐車場のある堤防側は釣り人の姿がちらほら見えるだけだったが、宿場町を抜け奥に進むと、そちらは波もなく水深も浅い砂浜になっていて、地元の人が集まる海水浴場になっていた。客用の売店も出ており、そこで今夏初めてのかき氷を買い求める。250円也。

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 夕焼け時は、水俣市街地と湯の児とを繋ぐチェリーラインの展望所に行こうと思っていたが、夏の為日の入りが遅く、先に夕食の時間が来てしまったので諦めた。空は然程赤くなる事なく、夜に変わった。
 夕食に併せてビールを一本と隣町・津奈木の地酒「亀萬」の二合瓶を飲んだ。海が見晴らせる宿を取っておきながら、実は生魚があまり食えないのだというと、刺身を焼肉に替えてくれた。この計らい、全国の宿で流行って欲しい。

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 陽が暮れると、ベランダから見える湯の児島に明かりが灯された。明かりは深夜まで灯されていて、寝る前に入った露天風呂からもその姿を見る事が出来た。風呂上り、酒を飲みながら見たテレビジョンでは、次の首相がどうなるか、偉い人がああだこうだと意見を言い合っていた。外国の子どもたちが深夜の博物館を歩き回る番組をやっていた。


 明くる日。午前十時にチェックアウト。寝酒を買って帰宅の為に鹿児島方面へ車を出す。正午前に伊佐市・大口に到着。市街地からわずかに離れた住宅街にある「五十嵐食堂」で昼食とする。

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 ネットで好評そうだったので来てみたが正解だった。
 ラーメンはあっさりとした豚骨で、塩味も丁度良いのでスイスイと食べられる。餃子も美味い。近所にあったら絶対通いつめることだろう。食べている最中にも地元客とおぼしき人々が、ひっきりなしに出入りしていた。

 ラーメン並と餃子1皿、併せて950円也。
 ラーメン屋はこうでなくてはならない。ラーメン屋に来れば餃子は必ず頼まなければならないので、この2つを注文して両方とも美味く、それでいて合計金額が1,000円以内に抑えられる店は一流である。

 昨夜のテレビジョンでは次の首相が誰かという話題で盛り上がっていたが、もし俺が総理大臣になったら、新しく「中華屋省」を立ち上げて、ラーメン並と餃子を1,000円以内で供する小規模ラーメン店には、一定の給付金を交付する。多くの国民が喜ぶ顔が目に浮かぶ。

 一人でも、家族とでも良いのだ。
 たまの休みに温泉に行き、車を止めて、町の中華屋で餃子を頼み、それをアテにビールを飲むのだ。旅館に戻って昼寝して、またぞろ温泉につかった後に、夕陽を眺めて、その地で作られた酒を飲む。
 それが、地方創生の絶対にして唯一の鍵だと言うのに、本質を分かっていない政治家が多すぎるがゆえに、桜がどうたらマスクがなんだと騒いでいる。嘆かわしいことである。

 食後、妙見でもう一軒ひとっ風呂浴びて、自宅に帰りつき、今この記事を、酒を飲みながら書いている。

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 今朝がた買った、亀萬酒造の梅酒を飲みながら書いている。
 水俣市街地から車で十分程度で行ける酒蔵で、売店が隣接しているので、芦北を訪れた折にはつい車を止め、何かしら買い求めてしまう。
 梅酒は以前飲んで美味かったので再購入。甘さは控え目で、華やかで独特なコクがある。その風味が日本酒ベースの梅酒だからか、芦北の黒砂によるものか、人吉の梅によるものかは知らん。多分全部良いんだろう。分からん。

 この酒瓶からアマビヱが去るのはいつか。
 そういえば、俺は昨夜、熊本の海が光るのを見たが、アマビヱの姿は結局お目にかかれなんだ。亀萬の酒を供えれば、かの賢者は我々人類に、何か良い感じのアドバイスをくれたかも知らん。今度やってみようか。

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