アメリカでの暮らし 何かと真逆な文化〜通用しない受験英語
私は2013年30代後半に渡米し東部3都市にて7年間を過ごした。英語は中学生の時から勉強はしていたし、学生の時の得意科目は英語と国語だったので日常会話はなんとかなると思っていた。ところが実践となると殆ど役に立たない。住んでいればネイティブ並みに話せるようになるんでしょ?なんてよく言われたが、それは住んだことのない人の妄想だ。歳を取ってからの学習能力はなおさら落ちる。スポンジのようになんでも吸収する子どもとは違うのだ。
そんな中、なにかと真逆な文化には困らされた。英会話初心者だったのでお恥ずかしい内容もあるが、そこは目を瞑っていただければと思う。
文のSVOC
やはり真逆といえばまずSVOCの順番が思い浮かぶ。主語、述語、目的語、補語だ。
日本に住んでいると英会話の機会は殆どない。日本人だらけだし、文法重視で筆記が多い。筆記だと考えてから書けるから楽だった。
ところが英会話となると動詞は2語目に来る。現在形、過去形、現在進行形、過去分詞などが瞬時に出てこず数秒かかってしまう。会話が滞ってしまい相手も自分にもフラストレーションが溜まってくる。私はセンター試験(今でいう大学入試共通テスト)では9割以上取ったことがあるのだが現実はこんなもんだ。役に立たない。大学にさえ受かればいいと思って英会話はしてこなかった。
以来、独り言のようにまずは口から英語を出すようにした。口を慣れさせねば。
Comingと「行く(going)」
今度は街中で
“ I’m coming !(今行くよ!)”
という言葉を耳にするようになった。日本語だったら
「今行くよ!(I’m going!)”
になる。真逆だ。
まあでもこれは割とすぐ慣れた。苦労したのは否定形で訊かれた時の返しだ。
否定文で訊かれた場合、日本語だと”Yes, I don’t “
これがまた苦労した。
“ Don’t you ~?”
と訊かれた時、日本語だと
「はい、しません(Yes, I don’t )」
となるのだ。
わかっている。英語ではYes, I doかNo, I don’t でなくてはならない。何年も勉強してきたのだからわかっている。それでも英会話となるととっさに出てこない。
思わずそのまま
“ Yes, I don’t.”
と答えてしまい、相手を困惑させたことが何度もある。
そしてようやくすぐ答えられるようになったところで本帰国したので、今度は日本語に困惑している。
はい、しません? Yes, I don’t…?
今では否定形で訊かれた時に、はい(しません)。なのか、いいえ(しません)。なのか分からなくなってしまった。
○は、間違い(✖️)の意味
在米当時のある日、娘が小学校から帰宅してテストの答案を見せてくれた。✔︎と◯がある。どういうことだ?
すると娘が教えてくれた。なんと、○は間違いの意味。✔︎が正解だそう。
なんと、そんなところまで逆なのか。唖然とする。ややこしくて仕方がない。但し、日本では下から○を書くのに対してアメリカでは上から○を書く。そこで意味の違いを認識するようになった。
しかし○を書き始める位置まで違うとは…。ますます困惑は深まる。
右側通行と左側通行
緊急時の番号だって、アメリカだと911。日本だと119。
右側通行か左側通行なのかだって大きな違いだ。歩いて道を歩く時、まず左から見てしまう。運転免許を取得する時にはこれが大きな問題となり、運転練習時にまず右から見るよう注意された。じゃないと試験に落ちると。そして左折時に反対車線に侵入してしまう。車両が走っていないと間違えてしまうのだ。危ない。免許取得本番の時はもう無理だと思ったが、必死に自分に右側通行を言い聞かせて乗り切った。
そして今度は年に一度の日本への一時帰国時に、日本で右折時に反対車線に侵入してしまいそうになるのだ。もちろん侵入はしていないし無事故なのだが、車が走っていないと車線方向が難しい。
男女比率逆転の職業
他にも、日本だと学校の先生は男性が多い印象だがアメリカは女性ばかり。男性教師は7年間の在米期間中、片手で数えられるほどの人数しか見かけなかった。娘の担任は全て女性だった。
在米当時のママ友が小学校の教師をしていたが、2ヶ月半ある夏休みのうち2週間ほど会議に出るだけで良いらしく、後は我が子達と過ごせるそう。そういえば娘の担任で、学校が終わると同時に娘より早く娘を追い抜かしていつも帰宅する先生も居たし、子育てする母親には良い職業なのだろうと思う。そういった背景もあるのだろう。他の職業でも女性は復帰しやすい環境が整っているように思う。少し羨ましく思えた。
レディーファースト or 亭主関白
あと、感じたのは、日本はやはり根強い亭主関白主義があるように思う。男性優先。女性は一歩引いてというのが自然な日本に住んでいるとそれが当たり前だと思って何も感じていなかったのだが、アメリカでは逆。レディーファーストなのだ。住んでみるとアメリカ人男性は自然と女性を対等、もしくは優先してくれることを実感する。この実際の体験談は当著書「誰かの役に立てたこと 歩道橋でのベビーカー」も参考にして頂ければと思うのだが、
日本は今でも亭主関白主義だったのか、ということを痛烈に感じたのだ。 きっとアメリカ人男性は家庭でも家事や子育てを「手伝う」のではなく、「当然の権利」としてこなしているのではないか。日々の振る舞いからそう感じるのだ。これはアメリカにおける女性の離職率の低さにも繋がっているのではないだろうか。女性である私にとって、アメリカはことさら住みやすかった。
また、子どもは日本では「お父さん、お母さん」という順番で呼ぶのが一般的だと思うのだが、アメリカだと「ママ、パパ」の順番だ。色々な考えがあるとは思うが、私は考えさせられて心に残った。
最後に
とまあ、逆が多くて慣れるのに一苦労したこともあったが、海外生活を経験することで視野が開けたことは自分の狭い殻を打ち破ってくれてとてもいい経験だった。海外から見る日本という国を俯瞰的に見ることが出来、おかげで日本について考えさせられたことも多々あった。
Take it easy! なんとかなるさ。
日々勉強の毎日はとても楽しかった。
本帰国をしてしまったが、要は両国の良いところは取り入れて、より良い未来のためにみんなが気持ちよく暮らせればいいと思う。私はアメリカの見習いたい慣習や考えを胸に前を向いて歩んでいきたい。
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