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【批評】シャーロック・ホームズの誤謬『バスカヴィル家の犬』再考 (ピエール・バイヤール)



長編『バスカヴィル家の犬』におけるホームズ推理の疑問点、矛盾点を指摘。
事件の真相に迫るのみならず、探偵と作家の関係を分析した知的スリルに満ちた文学批評...
という内容。

前回『バスカヴィル家の犬』を再読したのは、この本を読む為。

正直前置きが長くそこいら辺の内容については退屈だったな...。
遡る推理、シャーロックホームズの人物解説等々。
この本読む人々は少なくともそんな事は耳タコなんでダルかったなぁ。

問題となる主題については決して全否定される性質のものではない?と思えた。
これはある意味思考実験的なものになるんじゃなかろうか??

一見穴だらけの世界に思える物語でもそこは読者が想像する余地、あるいは錯覚や勘違い?よく言えばミスリードを誘うテクニックと言っても良いのだろう。
そう言った観点から、物語の主成分となるワトスンの視点に対しても疑問と考察を重ねている。
推測や想像力は作品性の補完になり自立性に到達できる要因にもなりうるのだから。

物語の鍵となる犬に対する過大評価的な存在感の言及については私的には概ね同意。
読んだ時は子供ながらに「あ、本当に犬出てくるんだ...」と何か面食らう様な感覚というか感情を覚えた身としてはね。

なんとなくなぁなぁなご都合展開に引っ張られる様なガバガバな犯人の行動。
みすみす見逃しているかの様にあえて言及しないホームズ
それはある意味、コナン・ドイルやその作品を読む我々読者達による妄信あるいは軽信による盲点を産むことに繋がってくる。

作者が提言する本当は裏にフィクサー的な存在がいて実は...という推論はどこか本物の蜘蛛を暴くという私が好きな作品「女郎蜘蛛の理(京極夏彦)」みたいでちょっとワクワクしたのであった。

バスカヴィルに隠れた真相がある、というより、文学テクストは読者の数だけ読み方や解釈がありうる、ということなのだろう。

ちなみに次回読む本でもバスカヴィルネタをこすっていこうと思う次第であります。
さらにもちっとだけ続くんじゃよ。

#読書 #読書記録 #読了 #読書感想文 #読書好きな人と繋がりたい #創元ライブラリ #ピエール・バイヤール

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