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配信のドキュメント映画を観てもう一度政治に興味を持ってみようかと思った休日の夜

朝一に散髪に行くと決めて予約していた三連休初日。

台風はまだ遠いと高を括っていたら、関東も十分激しい雨模様。
天気図に出ている予報円の東側は、円の外でも雨風が強いとモネで言っていた。
「こういうことか...」と合点する。

カットも終わり、「何か(整髪料)付けます?」と美容師さんが聞いてくれる。
でも午後は何も予定がないので、珍しくセットを断った。

午後だけではない。シルバーウィークの予定が何もない。
最低限度の身嗜みのための散髪のみ。
外出を自粛するよう再三言われており、東京の感染者数は減少傾向にある。
「三連休でぶり返した」なんて、緑の都知事に嘲られたくはない。

近くのお肉屋さんで牛タンを買って帰り、午後は妻と飲むことにする。

余談だが、夫婦二人暮らしの焼肉はいつからかキッチンでの立ち飲みになった。
換気扇をつけ、コンロにフライパンを置いて、そこで焼く。
リビングにホットプレートを出す焼肉は来客時のみ。
我が家はキッチンが奥まっており、臭いも煙もそこだけに留められるからだ。
広めで明るいキッチンもこの家を気に入った理由なので楽しくもあり、定着した。

残り1/4くらいのボトルワインと各々のグラスを持って食後はソファーに移動。
妻が最近Snow Manに激ハマりしているので、そのDVDを観させられる。
それにしてもこれだけのものをいつの間に収集したのかと思うほど、
ディスク類や雑誌類が高く積まれている。何事もやるなら徹底的にやるタイプ。

…首が痛くて意識を取り戻す。
やってしまったw、DVDの再生時間+1時間ほど寝てしまったらしい。
妻はお風呂に入っているみたいだ。水音が聞こえてくる。

珈琲を1杯ハンドドリップして、夜をやり直すことにした。

手始めに『硝子の塔の殺人』の続きを開くが、いまいち気持ちがノッてこない。
テレビをつけるも地上波にはピンと来ず、Netflixに切り替える。

“あなたにオススメ”タブで1つのタイトルに目が留まった。

『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)


2003年に32歳で民主党から衆議院選に初出馬した小川淳也という政治家。
この映画はその人の17年間を追ったドキュメントだ。

監督の大島新さんと腰低くニコニコ顔で握手をする小川さんの冒頭シーンは、
一瞬僕を「やっぱり政治家って表裏を使い分けてる(裏多め)」と警戒させる。

停止ボタンを押そうかと迷うが、もう少し観てみるかと留まる。
やけに高い評価の不思議さと、自虐のようなタイトルを許した人柄が理由だった。
上手く言えないが“国民側の人”かもしれないと期待したかったのだと思う。

これは僕の話だが、正直次の選挙はとうとう投票もやめようかと考え始めていた。
納得のいかないことがあっても希望もあった政治が、ここ数年嫌で仕方ないのだ。
いつ見るニュースもその内容が保身の塊として目に映るようになってしまった。
コロナ禍での舵取りや振る舞いが不信の決定打となったのは否めない。
白票を入れたとてそれすら権力の前には結局無力と感じるようになってしまった。

映画の序盤早々に「党利党益」という単語を出し、
それと自身の政策推進のバランス取りに苦悩する様を語り始める小川議員。

政治家は当選して議員にならなくては議決権もなく、発言力も乏しい。
考えを広めるためには発言力はあるに越したことはなく、
大きな党や与党であるほど、さらに主要な役割の人ほど、影響力が強いのは明白。

誰しもが理想を掲げ奮起するも、通すには“力”が必要で、
力とはどこまで行っても指示や賛同の“人数”が着いてまわることであり、
数集めと理想構築の間に生まれる矛盾を丁寧に描いていく。

32歳の香川1区初出馬時から49歳まで、実現したいことは変わらないと訴える。
その異様とも言えるピュアさは彼への興味を抱かせ、一縷の光を想起させるが、
一方で総理までの道はその人柄では難しかろうと、夢や理想の儚さも連想させる。

映画評を書くつもりはないが、
高い総合評価点の割に酷評コメントもそれなりに見受けられる理由は、
小川議員や僅かにもそんな人がいる政治に期待値を込めて加点する人と、
理想主義にうんざりし、現実や結果を重視する人の減点が混在しているようだ。

理想主義と現実主義の間で揺れ動く小川議員と、シナリオ展開と、視聴者評。

そういう意味では、見せたかったことを意図通りに伝えられている映画であり、
小川議員への賛否が分かれても、“映画として”は両者が受け取れる作りのようだ。

じゃあ“政治として”は?と聞かれると、僕はさらに答えがわからなくなった。

理想は大事だけど、その理想の実現には数の力も大事で、
比例代表制は議員の世代交代を妨げ続ける最悪の制度だと思ってきたけれど、
今回の小川さんのように議員でいてほしい側の立場になるとありがたくもあり、
ピュアじゃ不安だけど、だからと言ってズル賢さを是とは認めたくなくて…。

わからないのでちゃんと考え、少なくともちゃんと投票には行こうと思い直した。

うんざりしていて「政治家なんて…」と罵る方に一度この映画を観てほしく、
さらには自分が住む国の政治を見限るなんてやっぱりダメなんだと伝えたくて、
今日の僕はnoteを書きました。

補足情報:
・この映画はNetflixだけでなく色々なメディアで配信されているようです。
・2021年秋の衆院選の香川1区に焦点を当てた続編『香川1区』も出るようです。


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