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出産における日本とドバイの医療のしくみの違い

先の記事でも書いた通り、この夏わたしはドバイで第2子を出産しました。

出産方法は帝王切開で、これは第1子である娘の場合と同じ手法です。違いは、1人目は日本で、2人目はドバイで出産したという、ただそれだけの違いです。


本来であれば、前回の出産から4年経過しているし、VBAC(いわゆる経腟分娩)も可能ではあったのだと思いますが、今回わたしは高齢出産の影響もあってか妊娠糖尿病になり、身長も小さいことから無理はしないほうがいいね、という結論に至り、主治医と夫と相談した結果、37週で計画帝王切開という選択をしました。


ところでわたしは前述のとおり、娘を日本で出産し、今回はドバイで出産をするに至ったわけなのですが、出産を行うならば果たしてどちらが良いかと言われると、おそらくこのように答えると思います。


どっちもどっち


ただ、やはり医療行為についてはそれ自体が大がかりなものであればあるほど自分やまわりの人間が常に平常心を保てる可能性は著しく低くなりがちなので、そんなときにさらっと英語でリアクションができるかどうか、英語の理解ができるかどうかでそのメリットやデメリットの感じ方というのは大きく変わってくるのではないかなと思います。

特に、医療言語についてはただでさえ日本であっても日常でそこまで頻繁に出てくるわけではないので、普段聞かないような単語が英語で飛び交う状況になるとメンタルにはかなりダイレクトに響いてきます。当然の如く、出産前後のわたしのメンタルは内心ガクブルの状況でした。そしてそれはおそらく夫も同じであったのではないかと思います。それはただただ恐怖の経験でした…。


それでは、そんなこんなのドバイでの出産について、日本との違いで感じたことを淡々と書いていきたいと思います。

ドバイと日本の出産に関する医療の違いについて


▼産科医のしくみ
【日本】特定の病院を見つけて出産後まで通う
【ドバイ】多くの場合、独立している開業医を見つけてその医者が経営するクリニックへ出産直前まで通い、出産は設備が整った大きな総合病院で行う。(出産のときはその開業医がメインを担当する)
産後は母親はクリニック、子供は総合病院で諸々のアフターチェックを行う。


▼診療の頻度
【日本】出産が近づくにつれて産院を訪れる回数が増えてゆく
【ドバイ】臨月まで月1回の診療。最後の診療は出産の1週間前。


▼出産時の入院(計画帝王切開の場合)
【日本】前日から入院。夜早い時間から絶食。当日は朝から剃毛、浣腸、心音モニター計測長時間
【ドバイ】当日に病院。オペの6時間前から絶飲絶食。浣腸なし。心音モニター1時間程度。紙が切れてエラー音鳴っても無問題。


▼部屋のしくみ
【日本】相部屋以外は差額費用を支払って個室滞在
【ドバイ】おそらく病室は全部個室が提供される。豪華な部屋はキッチンルーム付きでビジターベッドも完備


▼手術について(計画帝王切開の場合)
【日本】急患がない限り定刻通りのオペ開始。約1時間程度の手術
【ドバイ】前日にオペ時間変更の電話連絡あり。当日も時間が早まったり遅くなったり予測不可能。約30分程度の手術


▼術後について(帝王切開の場合)
【日本】術後当日はゆっくり寝る。足にはエアプレッシャーが装着される。脊髄麻酔はつけたまま。痛み止めの点滴が腕に。
【ドバイ】産後すぐからカンガルーケア開始。母子同室開始。母乳提供開始。足にはむくみ防止の医療靴下のみ。脊髄麻酔は術後に外されている。痛み止めの点滴が手の甲に。夜にスープ。深夜食にまさかのサンドイッチが運ばれてきて思わず二度見。


▼術後翌日について(帝王切開の場合)
【日本】歩行訓練開始。10倍粥など流動食の開始。ガスが出たら尿管が外れる。
【ドバイ】歩行訓練開始。有無を言わさず尿管を外す。全身を看護師さんが洗ってくれる。昼食は3人ぶんはあろうかというスパイスの効いた大量のビリヤニ。


▼出生証明書
【日本】出産と同時にちゃちゃっと病院で作成してくれる。
【ドバイ】産科医のサイン→病院の事務所のサイン(病院によってプロセスが異なる)から1週間程度で作成が完了する。


▼保険
【日本】国民健康保険や医療控除などいろいろお得。
【ドバイ】民間の健康保険に入っておかないと100%自腹。

参考:ドバイの病院の主な医療施設の分娩内容およびその予算(英語)


▼入院期間
【日本】経腟分娩:5泊6日 帝王切開:8泊9日
【ドバイ】経腟分娩:1泊および2泊 帝王切開:4泊 


▼サポート体制
【日本】授乳から沐浴から赤ちゃんに対するあらゆることを産前と産後にこまかくレクチャーしてくれる。父母教室などもあるので産後のイメージがしやすい。
【ドバイ】聞かないと教えてくれない。基本的に誰か身内や家政婦、ベビーシッターが入院中と産後は常についてくれている前提のマインド。ナースの手伝いが欲しいときはひたすらナースコールを連打。しかし基本的には放置プレイ。産後のことについてのレクチャーはなし。さらっとした説明が退院時にあるのみ。


▼緊迫感
【日本】あり
【ドバイ】なし


あとで追記するかもしれませんが、ふと思い出しただけでも上記のような違いがあります。そして、特に今回わたしが産前産後にドバイの医療に関して一貫してしんどいなぁと思ったことは、



受け身ではなく攻め



の姿勢で常にいなくてはならなかったことで、それはつまりどういうことかと言いますと「してほしいことがあれば自分から動いてコンタクトを取り、具体的に言語化して要求を伝える」という作業が発生することで、これは体調がしんどければしんどいほど地味に辛いところでした。

ちなみに、ここまで読んで「じゃあ実際のところ、ドバイと日本だったら産むのはどちらがいいの?」という疑問を持たれる方がいらっしゃるかと思いますが、わたしはそれについては「健康体で、第2子目以降で、英語がある程度話せるならドバイで産んだほうが後が楽」とだけ、答えたいと思います。

なぜなら、事前にある程度のノウハウがわかっていれば、必要最低限のコミュニケーションだけで出産に臨めるし、体調によって入院日数を早めたり遅くしたりすることも可能なので(もちろん保険の適用範疇となると話は別ですが)、上のお子さんが気になって早く退院したい場合にはすぐ家に戻れるというメリットがあるし、

何よりドバイ自体が家事に関してアウトソースすることが日本に比べて格段に敷居が低いというか、もはやそれがあって当たり前とも言われる文化なので、自分が動けない間はメイドさんやベビーシッターさん、クリーニングサービスなどをフルに活用して育児に専念する環境が作れることは、わたし自身睡眠時間を確保できるし必要最小限の労力で済んでいるので、かなり実際、今現在とても助かっています。

ですが、初めての妊娠だとたぶん不安しかないだろうな…というのは容易に想像がつきます。そして初めての妊娠でなくとも、体調に何等かの問題が生じた場合だと本当になにかあったら命取りと言っても過言ではないし、彼ら(ドバイの医療従事者)はそのような責任からは距離を置くスタイルなので、それらのどれかにひとつでも該当する、もしくは少しでも不安があるならば、日本で手厚いケアを受けたほうがまず何より精神的に安心できるはずなので、可能な限り日本で出産をしたほうが絶対に良いかと思います。

あ、そうそう、あと言い忘れていましたが「ドバイで最上級の医療を受けて出産したい」というご相談を以前いただいたことがあったんですが、そのようなセレブリティの方にも日本での出産をおススメしたいです。なぜなら彼ら(ドバイの医療従事者)にとってのホスピタリティはあくまで「彼らの満足する結果」を出すことであって、我々のような顧客を満足させることは彼らの念頭にはおかれていないので、上記に挙げたような「してほしいことがあれば自分から動く」ができなければ、やってほしかったことがただただ何もしてもらえないという不満しか残らないだろうなと思うからです。


人生の一大イベントである妊娠および出産。
いざスタートするとノンストップですべてが進んでいくので考える暇もないようなときもありますが、できれば早い段階で一旦お話合いをする時間を作って、どのような方法が自分にとって一番フィットするかご主人やご家族と話し合うことをおススメしたいと思います。

そして、上記の内容が少しでも考慮のときの参考といただけましたら幸いです。

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