【誰かの独り言】 夢の国

もしも、ぼくが王様だったとして、
ゼロから国を、無限の資源をつかえるとして、
理想の王国をつくるとしたら、何をつくるだろう。

理想の街、
たぶんそれは、四方に自分好みの四様な景観が広がる。

北にはヨーロッパのような街並みで、
石造の厳かな建物が並ぶ。
時折、寺院のような人々が集まる場所もあり、
夜になるとライトアップされ、高台から見ると、雰囲気の良い景色が広がる。

南にはアジアの市場のような雰囲気で、
活気があって、野菜や果物、お肉やお魚が露店で売り買いされている。
背の高い建物はなく、陽の光を通り全体に取り込んでおり、
とはいえ街並みは綺麗に清潔さを保った明るい街並みが広がる。

東には和風な建物が並ぶ。
焦茶色の木の壁が、建物の間を抜ける道の雰囲気を演出する。
料亭のような建物が並び、通りと並行するように川が流れ、
川沿いには、その川の流れを眺めながら食事ができる場所が連なっている。

西には公園や緑道が広がる。
大きな湖もあり、湖畔には時々、ロッジのような木造りの休憩所があり、
歩くだけで自然からの空気を胸いっぱいに取り込めるような憩いの場になっている。

そして、そんな四方の素晴らしい景色に囲まれたその中央に鎮座する理想の城、つまり自分自身の家、
王国全体を見渡せるだけの高さがあり、
その頂上には、その景色をひとりで独占し、
お茶を飲みながら休憩ができる豪華な天守閣がある。

さらに城は高さだけじゃなく、
地下にも深く建設される。
階段はなく、さながら忍者屋敷のように、さまざまなカラクリで地下へと下ることができる。
それを知っているのは君主である自分ひとりだけだ。

どうだろうか。

とにかく理想をつめこんでみたこの王国、
もしこれが現実になるとしたらいつ引っ越したいだろうか。明日にでも行きたいだろうか。

いや、結局、それらが欲しいのではなく、見たいだけなのかもしれない。
毎日この環境があったら疲れてしまうんじゃないか?

そもそも孤独である。理想が広がっているが、理想の中にいる自分は楽しそうではない。
理想を見せる相手がいない。理想を楽しむ相手がいない。

いや、理想を誰かに見せたり誰かと楽しんだりするのはナンセンスだ。
だってそれは自分の理想であり、誰かのためのものじゃないからだ。

理想というのは普段生きている現実とは別でなければならない。
現実は「現実的」にしか動いていかない。理想のようにならないのが現実。
けれど、そんな現実には、その現実を楽しむ相手がいる。

だから、理想というのは、息抜きのためにふらっと見たいだけ、くらいの感覚、
1年に1回の旅行でいいのかもしれない、いや、旅行に行く移動時間も面倒なので理想じゃない、
たぶん、夜寝ている間に少しだけ見せてくれれば大満足できるのかもしれない。

つまり、理想とは夢を見ることなのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?