見出し画像

「ブレイクアウト 行き止まりの挽歌」 映画感想

公開 1988年
監督 村川透
原作 栗本薫
出演 藤 竜也
   村上弘明
   石野陽子
   成田三樹夫

我が青春の80年代作品です。レンタル新作のぐらいのタイミング(もちろんVHSテープの時代)で観て、すごく良かった印象が残っていて。
3年ぐらい前に、もう一度観たいと思って、近所のツタヤの旧作コーナーを探すも見つからず、ゲオに行ってもなく、隣町のレンタルビデオ店など数件回っても、どこにもなくて、こうなったらアマゾンで買ってやろうじゃねえのと思うも、いつも在庫切れで。
ずっと1つだけ残っているのは6万円の中古DVDでさすがに買えず。
3年越しに、ようやく4千円程度のやつが出てきたから、即買いしちゃいました。
しかし冷静になれば・・・10代の頃に観て良かった印象といって、今観て4千円の価値があるだろうか・・・・。

正義の為にはヤバイ事もする男─

人はそいつの事を暴力刑事と呼ぶ。男が男として全てを投げ打ち一途に自分自身の正義を貫いていく・・・。原作は、様々なジャンルの小説を手掛ける栗本薫。主演は後半の日活アクション路線の中核として活躍した藤竜也。監督は、アクション映画の旗手・村川透。
(アマゾン作品解説より)

暴力刑事、藤竜也は、のっけからヤクザの事務所に乗り込んで、下っ端チンピラを次々にぶん殴り、組長の中条きよしに正面切って揺さぶりをかけます。
おっさん!ちょっとやりすぎだよと、その後をついていく若手刑事役に村上弘明。

犯人は最初からわかってるパターン。われわれ観客も。作中の刑事たちも。背後にいる大物政治家。ヤクザと政治家の癒着。権力の悪用。
ただ決定的な証拠がない。だから揺さぶってボロを出させようということか?
しかし、家に帰ると何者かに荒らされていて・・・、
今度はヤクザ側からの脅し、さらには上司の成田三樹夫からも手を引けと、上からの圧力・・・。
と、この時代の刑事もの鉄板お約束の展開。もはや桃太郎です。(単純明快なストーリーという意味)桃太郎だってディスってるわけじゃありませんよ。むしろ、桃太郎的な単純明快な話は好きな方です。
ストーリーが単純なぶん、いろんな味付けで料理できるわけですから。
例えば、桃太郎なら、勧善懲悪の復讐アクションとも描けるし。犬や猿らとの友情ロードムービーにもできるし。おじいさんおばあさんとの家族愛の話にもできるし。鬼側を主観に描いて、既存の善悪に疑問を投じる話にもできるわけですから。
その単純なストーリの中で、監督や出演者が何を描きたいのか、そこを読み解くのが面白いんですよ。
さて、そこで本作の村川監督や藤竜也は、この80年代刑事ものお約束桃太郎ストーリーにどんな味付けをしているのでしょうか?

冒頭にコピーした、アマゾンの解説にある、「正義」なんてものは微塵も感じません。
藤竜也扮する暴力刑事、梶は、上司のいうことも一切聞かない独断専行不良刑事で、とにかく異常なほどに暴れん坊です。しかしそんなに強くないんです。そこがまた泥臭くてリアルでイイんですが・・・。
藤竜也のアクションは他の作品でも印象的なの数々ありますが・・
最近の華麗なCGアクションと比較すると、余計にやっぱりいいな~と思います。
ヤクザ側からの刺客は、ブラックレインの松田優作もどきみたいな謎の中国拳法使い。
昭和感否めませんが・・そいつとの格闘では、耳は切られるし、顔はボコボコに殴られるわ、服はヨレヨレの、ぼろ雑巾のようになりながらも果敢に向かっていくという。
もうね、感じられるのは正義というより、阿呆な意地。エゴ。おっさんの頑固さ。です。
そしてついに中条きよし撃ち殺しちやって・・。
後半は殺人犯として、かつての相棒、村上弘明に追われる身に・・・
流れで別件の殺人犯、沢野未来(石野陽子)を連れて、
少女とおっさんの逃避行です。

石野陽子扮する未来はまだ10代の家出少女という風情で、自分の事をボクと呼ぶという、またまた不思議な設定なんだけど・・・。

身の上話などほとんどなく、この石野陽子の存在がいまいちよく分からないんだけど・・
単に、少女とおっさんの逃避行を描きたかったようにも思えるし・・・
はたまた、汲み取れきれていない何が深い意味があるようでもあるし・・
なんでしょねえ・・・。
この辺を冗長と評する意見も見かけたけど、私は嫌いじゃないです。
若い頃の石野陽子。なかなかのべっぴんさんだし。

そしてラストは追いつめられ、村上弘明との対峙シーン。
ここが昔観た時の印象強く残っていて、今回観てもやっぱりよかったですね。
ネタバレしても問題ないような話ですが、一応言わないでおきましょう。
まあ、過剰に感情をぶつけ合うこともなく、サラっとした幕切れがイイです。

余談ですが
私は、時代劇でいうところの‟必殺、仕事人“的な話、嫌いなんです。
法で裁けぬ悪を、仕事人の個人的価値基準に基づいて、勝手に裁いて、即死刑にする。
仕事人たちはなんのお咎めも無しで。いつもの日常に戻って、冗談言ってハッピーエンド。
なんてものを見て、スッキリ爽快カタルシス。なんて気にはなれないのです。
私は。あくまでも私はですよ。
その点、本作は、個人的な価値基準で勝手に悪を裁くところまでは一緒だけど。
その成れ果ては破滅でしかない。
と、描いているとことが特にいいと思うのです。
で・・・
結局4千円の価値はあったかって?
十分ありましたよ。いい買い物しました。大満足です。
私はですよ。あくまで・・・。


この記事が参加している募集

映画感想文