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永遠にプロローグ

出会ったときのこと。
始めて声を聴いたときのこと。
大きな瞳でみつめられて
そのときにはもう、後戻りできなくなっていたこと。

この気持ちを説明するとき、
私はいつも物語の最初のページで立ち尽くす。

これが恋であるとか、そんなことはどうでもよくて
ただ彼を好きだというう気持ちだけで成り立つ想い。

いやいや、それが恋なんでしょうよ、と人は言うけど
もし、もしよ?これを恋だと認めてしまったら
私はきっとその先を望んでしまうし、それが叶わなかったら一丁前に傷ついて、悲しみに暮れるんだろう。

彼を思い出して泣くんだろう。
自分は不幸だと呪うんだろう。
もう恋なんてしないと誓うんだろう。

自分で勝手に悲しい思い出にして
脳内のクローゼット押し込んで
なかったことにするのかも。

え、こんなに好きなのに?
優しくてあったかくて笑顔が素敵で、
でも傷つきやすくて壊れそうに繊細な大好きな彼を?
なかったことにできるわけなくない?

私の中の彼にはいつでも笑っていてほしい。
たくさんの荷物を抱えているその肩を
ときどき休めに来てくれるだけでいい。
私は全力で、でも何食わぬ顔で、それを受け入れる。
それ以上を望むことは私にはできない。
彼もおそらくそれを望んではいないから。

最初のページを開くドキドキと
これから始まる物語へののワクワクと
だけど一向に読み進めることができないその先と。

今日も私は、左側にある白紙のページを眺めながら
静かにそっと彼の寝顔を思い出し、眠るんだろう。


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