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美容医療の物理⑤ 「熱緩和時間」🔥

みなさんこんにちは🐼
今回は「熱緩和時間」についてまとめてみました✍🏻📋 

美容ナースの勉強ノートを見る感覚で見て頂けると嬉しいです🙇🏼間違いがありましたらご指摘頂けると幸いです🙇🏼
 




レーザーの説明でたびたび登場する「熱緩和時間」について。熱緩和時間を理解しておかないと、文献の本題が分からないこともあるのでしっかり理解したいポイントですよね📝

熱緩和時間を理解するにはパルス幅(=光の照射時間)を理解しておく必要があります。 

パルス幅についてはこちらをcheck🐼⬇️



熱緩和時間とは

熱緩和時間とはレーザーを照射した際に
"ターゲットにしている組織の温度がピークより半分になる時間"のこと。

なぜ「熱緩和時間」と名が付くほど、組織の温度が半分になることが大事なのでしょうか。熱緩和時間を勉強していくとその理由が分かってきました…!

レーザーを照射したら、狙ったターゲットだけに熱は留まらず拡散(放熱)していきます。


シミ治療で例えると…

①レーザーはメラニンに選択的に吸収される
②レーザーは熱エネルギーに変わる
③熱はメラニンにとどまらず周囲に拡散していく

この標的(メラニン)の熱がピーク時より半分(50%)になるまでの時間が熱緩和時間になります。

この熱緩和時間は標的器官により異なります

↑資料によって微妙に時間が違いましたが主な熱緩和時間です😭


☑️熱緩和時間が短ければ、熱が逃げていく時間が早い
       ▶︎冷めやすい
☑️熱緩和時間が長ければ熱がこもりやすい
       ▶︎冷めにくい
という特徴になります。

標的器官の表を見てみると
メラノソームやタトゥーは比較的冷めやすく
毛包や血管は比較的冷めにくい
ということになります。

なぜこの熱緩和時間が大事なのでしょうか…

それは、この標的器官の熱のこもりやすさ(もしくは冷めやすさ)の指標を知ってレーザーの照射時間を調節することで周囲組織のダメージが少なく選択的にターゲットを破壊しやすくなるからです。

熱緩和時間より長い時間レーザーを照射したら
熱が逃げて周辺組織にダメージが加わるだけでなくターゲットが破壊される前に熱が逃げていく可能性があります。

熱緩和時間内、つまり熱が半分になる時間より前に充分なエネルギーを与えることでターゲットの組織のみ破壊できるという理論になります。

熱が冷める前に破壊しないと!ということですね。



シミ治療の場合の熱緩和時間

シミ治療の場合は標的になるのがメラノソームになります。

メラノソームの熱緩和時間は50ナノ秒です。
50ナノ秒より短い時間でメラノソームを破壊できるエネルギーを与えることができたら、周囲へのダメージは少くメラノソームだけ選択的に破壊できます。

実際にシミ治療にはパルス幅が短いナノ秒やピコ秒レーザーを使用します。いわゆるショートパルスレーザーです。より短い時間で照射可能になったピコレーザーはシミ周辺組織のダメージが少ないことからシミ治療で有名になりました。



脱毛の場合の熱緩和時間


熱緩和時間はどのレーザーでも知っておくべきことですが、ナースが特に関わるのは「脱毛」かなぁとも思います。脱毛機によってはパルス幅の設定を行う機械もあります。

ということで脱毛の熱緩和時間についてはちょっと詳しく書きます️📝

毛根周辺組織の熱緩和時間約10~50ミリ秒とされています。

ここで脱毛の機序を思い出しましょう。

脱毛のターゲットはレーザー光が吸収されるメラニンですが破壊するのは発毛組織です。発毛組織である「毛乳頭」「バルジ領域」「毛母細胞」を熱変性させなければいけません。先程のシミ治療を例にした場合だと、熱緩和時間より短い時間で照射する!という理論でしたね。

脱毛の場合は逆に熱を吸収したメラニンからの放熱により、周辺組織の発毛組織に熱を伝えなければなりません。


また、表皮の熱緩和時間は3~10ミリ秒です。

3ミリ秒以内に照射してしまうと熱が逃げきれずに表皮が破壊され火傷になってしまうリスクがあります。
▶︎3ミリ秒以上のパルス幅が必要

毛根周辺の熱緩和時間は10~50ミリ秒でしたね。
この時間内に照射が終わらなければ放熱がはじまり組織を破壊できません。
▶︎50ミリ秒以内のパルス幅

まとめると、表皮が放熱される3ミリ秒以上、毛根周辺組織の熱緩和時間の50ミリ秒以内に脱毛すると良いということになりますよね。理論上だと。
実際には脱毛レーザーは3~30ミリ秒のレーザーが多い気がします。

機械の種類によってもパルス幅が結構違っていて
ジェントルマックスプロプラス(名前すごいなw)のパルス幅は2ミリ秒です。
2ミリ秒だと表皮の熱緩和時間(3ミリ秒)より短いので火傷のリスクが上がってしまう!?と思いますが、レーザーと同時に冷却ガスが出して表皮は保護され火傷を予防する仕組みになっています。

ほとんどの機械にこの冷却機能が付いています。
冷却ガスはキャンデラ社が特許を取っているので、冷却ガスが付いているのはジェントルシリーズのみ。
その他の機械は冷風機がついていたり、照射口自体に冷却機能が付いています。冷却機能は火傷予防だけでなく痛みも軽減してくれますよね。

脱毛のパルス幅は様々で、よく問われているのは
パルス幅は短い方が効果が高いのか?!
パルス幅が短い機械で脱毛した方が良いのか?!
という所ですよね。
あと、うぶ毛には効くのか?!とかですね…

これは私の意見ですが

脱毛は効果だけでなくリスクについても充分考慮しなければなりません。

脱毛はパルス幅だけでなくフルエンス・波長・毛周期・皮毛角・毛の密集度・肌状態など色んなことが複雑に絡んでいるな~と思います。
機械の特徴だけでなく、クリニックの方針や施術者の技術に患者さんのアフターケアなど更に色んなことが絡んできますよね。

私が今まで取り扱ってきた脱毛機の種類は6種類です。それぞれの機械の特徴があり業者の企業努力があるな~と思います。

なのでパルス幅が短いこの機械が良い!などとは思わず
パルス幅を短くしたからピークパワーも上がる…フルエンス少し調節しよう…などなど、看護師はパルス幅(熱緩和時間)についてしっかり理解を深めておく事で、より安全・効果的に脱毛をすることが出来る。というスタンスでいます。

なので現段階では「パルス幅が短い方が効果高い!」という機械のみでの判断は安直じゃないかな~と思っちゃいます。

といっても私もまだまだ分からないことも多くて奥深くて難しいな〜と思っています。アドバイスあったら是非コメントください🥺


照射時間の目安の指標となる「熱緩和時間」はレーザー治療において大事になりますね✍︎

熱緩和時間が理解できたら
次は「選択的光熱分解理論」(SP理論)をChack🐼

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