ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
血みどろ!
不謹慎!!
KAIJYU(怪獣)!!!
もう、「とにかく観ろっ!」で済ませて良いくらい最高に面白かった今回の『スーサイド・スクワッド』なのですが、
「この前の続編?」
と思われる方も多いんじゃないでしょうか?
ウィル・スミスが主人公のデッドショットを演じた前作の『スーサイド・スクワッド』
監督はデヴィッド・エアーでブラッド・ピット主演の「フューリー」では、ナチス・ドイツが開発した実物のティーガー戦車を登場させた事が話題になりました。
男くさい硬派なアクション映画を手掛ける印象があったので、本作のようなバカバカしい設定のエンタメには向かない気がしていたのですが、実際観てみると...
「マーゴット・ロビーのハーレイ・クインは良いよね...。」
良い意味での軽さがなく、ポップに仕上げようとしている部分も全然乗りきれませんでした。
デヴィッド・エアーが少し前にTwitterで、本作はスタジオ側の意向により、自分の意図通りにならなかったと暴露していました。
どっちにしろ、デヴィッド・エアーはマーティン・スコセッシの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を見習え!と僕は思っていたのですが、
(↑マーゴット・ロビーの出世作でもあります。)
今回の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』の監督がジェームズ・ガンだとアナウンスされた時は、我が意を得たりと思いました。
ジェームズ・ガンの『スーパー!』は現代の『タクシードライバー』と言うべき、哀しくも切実な狂気のバイオレンス・コメディでした。
・『スーパー!』の最高なオープニング・アニメ
・ジェームズ・ガンが『スーパー!』を作る上で、影響を受けたと述べている本『宗教的経験の諸相』(読んでませんが...)
余談ですが『スーパー!』はいわゆるスーパーヒーロー物なのですが(と言うより、そのジャンルを批評的な視点で描いている。)、同時期に公開された『キック・アス』は似て非なる作品でした。
しかし『キック・アス』の原作は『スーパー!』のトーンに非常に近い、正しく不快なコミックです(褒めてます)。
ジェームズ・ガンはトロマ映画出身の監督です。
トロマ社はカルト映画、『悪魔の毒々モンスター』などで知られるB級ホラーコメディを多数手掛ける会社です。
※『悪魔の毒々モンスター 東京へ行く』には関根勤が出演しています。
ジェームズ・ガンがトロマで作った『トロメオ&ジュリエット』は、タイトルからお分かりの通り、シェイクスピアのパロディです。
内容はセックス&バイオレンス、ぐっちゃんぐっちゃん、ゲロゲロで不謹慎極まりない内容に仕上がっています。(オナニーシーン(男の)もあります。)
ちなみに本作は、少し前の韓流ドラマにありがちな、「血が繋がっていたなんて!」的な展開が待ち受けています。
但し、韓流ドラマには絶対に起こり得ないであろう、ある踏み込んだ結末が用意されており、涙無しには観れませんでした。
そんな、ロサンゼルスオリンピックの演出担当だけはやめておいた方が良いジェームズ・ガンですが、(『トロメオ&ジュリエット』、気になる方はU-NEXTにて観れます(その他のトロマ作品も充実しています))
彼は、お分かりの通りブラックジョークが大好きで、Twitterにも昔、よく不謹慎なギャグをツイートしていたそうです。
トランプが大統領だった頃、アンチトランプのツイートをジェームズ・ガンがしていたところ、トランプ支持者に過去の不謹慎なツイートをほじくり返され、炎上。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでノリに乗っていたジェームズ・ガンでしたが、その一件で3作目の監督を降ろされてしまいます。
(マーベルはディズニーの傘下ですから....)
そこにマーベルのライバルであるDCコミックスからお声がかかり、今回の『スーサイド・スクワッド』が作られるに至るわけです。
※後に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』3作目の監督にジェームズ・ガンが復帰します。
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』は前作のデヴィッド・エアー版とは全くの別物と考えて良いでしょう。
ジェームズ・ガンの作家性がもりもりの二郎系ラーメンのような作品で、人によっては胸焼けを起こしかねない代物です。
本作で僕が一番好きなキャラクターはシルヴェスタ・スタローン演じるキングシャークです。
・つぶらな瞳で人肉を頬張るキングシャーク。
・読書家だが本は常に逆さまに持っているキングシャーク。
・人間を丸呑みにして吐き出したらポコチンが出てきて、しかもペニスリング付きだったキングシャーク。
・魚類の友達が出来て無邪気にはしゃぐキングシャーク。
スタローンの名演も相まって、とにかく可愛すぎました。
デッドプールも嫉妬するくらいの不謹慎なバイオレンスコメディから一転、クライマックスは大怪獣映画に展開していくのですが、
大映の『宇宙人東京に現る』に登場する岡本太郎がデザインした宇宙人そっくりな宇宙生物スターロが大暴れします。
その母体から小さなスターロが沢山出てきて、人間の顔に張りつき、肉体と精神を乗っ取ります。
この部分はジェームズ・ガンの過去作『スリザー』を彷彿とさせます。
『スリザー』は『遊星からの物体X』や『SF/ボディ・スナッチャー』などの侵略SFホラー作品の遺伝子を受け継ぐ知られざる傑作ですが、興行的にコケてしまい『スーパー!』までの間、長編からは遠ざかっていました。
『スーパー!』の宇多丸さんの映画評で知ったのですが、その間インターネットで、ポルノの導入部をパロディにした短編を発表したりしていたそうです。
観たかったのですが、探しても見つからなかったので、その昔、自分なりに、こんな感じかなと妄想を膨らませて作った短編がありますので是非ご覧ください。
※BLにアレンジしています。
※痴女背後霊というAVのパロディのはずが、流れ流れて筒井康隆の『笑うな』が原作になりました。
普段意識してなかったのですが、よくよく考えたら、俺、ジェームズ・ガンに割と思い入れあるなぁと、この文章を書きながら記憶の蓋が解き放たれて思い出しました。
『スーサイド・スクワッド』の話に戻りますと、ポルカドットマンというキャラも好きでしたねぇ。
簡単に説明するとマザコン自殺願望サイコパスで、特にクラブでママに囲まれて踊るシーンは目が完全にイっちゃってて最高に笑います。
話が逸れますが、ちょっと前に著名人の優生思想的な人命を軽視する発言が問題になりました。
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』は人がバンバン死に、しかもコメディとして演出し終始ふざけています。
ジェームズ・ガンもインタビューで、
最初に決めたのは、「キャラクターを殺したあとの影響は考えない」ということ
と述べています。
しかし、本作のクライマックスでとる主人公たちの決断が、大変感動的でした。
つまり、人の命は平等に軽くて、平等に尊いという事です。
○その他ジェームズ・ガン関連のオススメ作品
・『ドーン・オブ・ザ・デッド』
ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』のリメイク。
旧作と異なり走るゾンビ映画。
ジェームズ・ガンは脚本を手掛けています。
・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
ジェームズ・ガン監督による人気シリーズ第二弾。
タランティーノもそうですが、オタクはみんなカート・ラッセルを出したがる事がよくわかる作品。
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