「革新的な顧客価値を経験するのは自分自身が最初であるべきだ」顧客経験価値のための商品企画開発の実践 第41回
顧客経験価値、商品企画、ビジネスモデルの各仮説をマーケティングリサーチとPoCで検証し、いよいよ商品企画も含めた事業戦略を企画構想する段階に入ります。商品開発も事業戦略企画も、社内でも頻繁に発生する業務ではありませんので、沢山の経験を持つ人はそう多くありません。そこで重要なのは事業戦略構想を企画する基本的な考え方を理解することと、フレームワークを習得し、実践で使ってみることです。ここではまず事業戦略構想を企画する基本的な考え方に関して述べます。
①商品開発も事業戦略も、どこまでも革新的な顧客経験価値を見つけ出し広める仕事であること
商品開発、事業戦略となると、提供者側の視点での構想になるのが一般的かと思います。提供者側の視点とは、すでに存在する市場への参入戦略であり、先が読める計画であり、正確な答えが存在することが前提と考えがちです。しかしネットの普及、市場の超成熟化などで、そういった発想がまったく通用しない今だからこそ必要なのが、革新的顧客経験価値という発想なのです。革新的顧客経験価値とは、今まで顧客が経験したことがない感覚、感動、驚き、思考と行動の変化、つまり行動変容が発生するものです。その行動、実現は簡単ではありません。ですから戦略構想の段階でこそ、その革新的な顧客経験価値は一体何か?それは本当に今までなかったものなのか?どの部分をどのようなタイミングで顧客に訴求すればそれはヒットするのかなど、可能性を徹底して追求しづけることが必須なのです。「難しく、困難だ」というネガティブな発想、できない理由を考えることではないのです。
②自分自身の経験価値を原動力に組織内、そして顧客に共感を広げていく活動である認識をもつこと
繰り返しになりますが、革新的な顧客経験価値の発見、開発の視点は、自分自身や家族、友人などの身近な人です。顧客として商品を使い続ける自分の経験の中から革新的な顧客経験価値を発見、開発しその共感のネットワークをいかに周りに広げていけるかが大事です。その自分が感じた確かなことと、その共感を周りに広げるプロセスの中に、戦略構想のタネがあるのです。新たな顧客経験価値の創造に一般的なマーケティングの分析手法や戦略企画のフレームワークだけを当てはめてみても成功しないと思います。それらの多くは提供者側の理論だからです。革新的な顧客経験価値は、自分自身の革新的経験価値の体験とその共有でつくられるのです。
③フレームワークを活用した発想だけでなく、現実の問題・課題を解決し続けること
顧客経験価値の革新性が高ければ高いほど、共感し普及させる過程には多くの困難さや壁が存在します。その困難さや壁をつくる問題・課題を具体的に解決し続けることが、競合が真似できない独自の仕事の仕方になり、ビジネスモデルに発展していきます。その意味で、困難さや壁は、競合との差別化を創り出す源です。前向きに、そしてクリエイティブに問題・課題解決を進めていくべきです。
④新たな顧客経験価値を開拓する世界観を持ち、その行動力を持つこと
上記①から③はすべて、商品企画を担当する自分自身と組織が持つ世界観からくるものです。世界観とは価値観、フィロソフィーです。譲れないなにかです。その世界観が他にはなく、独自で回りの人や組織に対し魅力的な強いものでなければいけません。またその世界観は、自社独自の技術や商品、ビジネスモデルに裏付けられたものであるべきです。世界観は、革新的顧客経験価値を共有する過程で発生する困難さや壁を突破するパワーの源泉です。
ニューチャーネットワークス
代表取締役 高橋透
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