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【コラム】つい手に取りたくなる「自家製」のなぞ

ここ数年の間で、「自家製」が枕詞についた食材を頻繁に見かけるようになりました。たしかに筆者も、自家製と言われるだけでどこか“こだわり”を感じ、手に取ることは何度もありました。しかし、どうしてそれが購入動機の一部となるのでしょう。

NUTSで取り扱う、南イタリアで自家栽培の果物からつくられた“ジャム”をもとに、“自家製”の食材がなぜ魅力的に映るのか再考してみたいと思います。

1800年代から続く農家が「栽培」から「加工」まで

南イタリアの“マテラ”という地で、自家製「アプリコットのジャム」はつくられます。南イタリアらいしい温暖なこの地で、アプリコットの栽培から加工まで行うのは、1800年代から農業を営むベルフィオーレ家。

ここまで長く続く農家ということは、樹齢の高い果樹が多く植わっていることが想像できます。一般的に果樹は、ほどよく年数が経ったものの方が美味しい果実を実らせるそう。それに加えて代々受け継がれる知恵のもとで、質の高いアプリコットが栽培できるのです。

そして、収穫したアプリコットは、畑と隣接する工房で新鮮なままジャムへと加工されます。その原材料はアプリコットと砂糖、そしてレモン果汁のみ。シンプルな材料は、アプリコットそのものの味を引き立たせてくれるのは言うまでもありません。


“自家製”であることで、食べる側に届く物語

作り手がどのような人物なのかどのような環境でその食材は作られてきたのか。

“自家製”であることによって、食材が手元にわたるまでの物語を届けることができます。その物語は、食べる側にとって安心・安全性を証明してくれるとともに、想像力を醸成させてくれます。

いま手元に持つ食パンに乗せられた“ジャム”は、南イタリアの風を浴びて育ったアプリコットがその地で加工されたもの。その“想像”が、モノが溢れる現代で、食を楽しませる“コンテンツ”になっているように思うのです。

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