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Dragon's Back Race 3/3 ・・・各日の記録など(n=1)

#ドラゴンズバックレース #ドラゴンズ・バック・レース #DragonsBackRace

標題は英国ウェールズでの全長380 kmを6日で踏破するステージ・レースです。概要、食事と水分摂取について前回に記事にしました。その記事と同様、このNoteも標題のレースの参加を検討しそうな方、ただ数日にわたるような長距離レースに好奇心のある方を想定しています。今回は書き残した事柄とも言える、宿泊と睡眠、各日の記録、イベントの運営について記載したいと思います。

トップ画像は完走後のセレモニーの様子。Cardiff城にレースのロゴが映写されています。筆者も完走者の1人としてステージに呼ばれ記念品を受け取りました。


睡眠時間は6時間前後?・テントでの宿泊

睡眠

朝6時にスタートして夜10時のタイムリミットまでにゴールして、食事や睡眠を済ませて次の日に臨むという日程について、食事する時間、睡眠をとる時間など考えてみてください。人によってはかなりタイトになり得るとわかるかと思います。

私はギリギリ余裕が持てる程度だったように思います。夜8時前後にゴールすることで食事から就寝まで2、3時間程度としてスムーズにいって6時間強の睡眠を取ることができました。そして朝5時前後に起きてできるだけ早くスタートをする用意(朝食を含む)をしてスタートしました。

ルール上は朝6時~9時のいつでもスタートできるのですが、中間地点のタイムリミットもあって早い方がよいという仕様です。私は2日目以降は6時半頃にスタートしていました。それでも中間のタイムリミットの1時間前にチェックポイントに着く様子で、心模様としては焦りは避けられませんでした。少しでも気を緩めたらリタイアとなるので。

人によっては睡眠時間が5時間ほどで頑張るという方もいたかと思います。自分の走力を考慮してどれほどの睡眠時間がとれるのか考えてそれも覚悟する必要があるということでしょう。私は睡眠時間としては常に5時間以上は確保できいましたが、日を追うごとに身体の筋肉疲労が酷くなり、特に4日目、5日目は身体に痛みを感じない姿勢を保てず眠りの質も低かったように思います。

テントでの宿泊

またテントでの宿泊に慣れておかなくてはいけません。寝袋用のマットを敷いて、寝袋を広げてという作業ももたもたしては睡眠時間が削られるので経験が必要です。それに加えてランニング後のシャツや靴下などの処理等、人によって異なると思いますがそれも考えて効率よく行うことが求められます。

テント、歯磨きや食器を洗う場所、トイレ、食事する所は数十メートル離れています。そこを行き来するのは楽なようですが、50,60 km走った後では人によっては数分と掛かってしまうことでしょう。ですので行き来する、往復する回数も最小限におさえる手荷物の工夫も考えなくてはいけません。たとえば食事する容器(要持参)をテントから持って出る際、歯ブラシや歯磨き粉も持っておくといった具合いです。徒歩での移動を最小限にすることで5分、10分の睡眠時間が確保できるのでやはり大きな違いのように再考しています。

各日のゴール地点・テントの設営される場所は、小川の近くとなります。脚の泥をおとしたり身体を洗ったりするのはその小川で行うことになります。夜遅くになるとさすがに冷えるので注意が必要です。当然、温かいシャワーなどは6日間ありません。しかし、運がよければレース中の暑い中、きれいな小川でバシャバシャと身を清められることもあります。それを含め衛生的には数日のキャンプ生活というような認識をしておくのがよいのでしょう。

パフォーマンスの変移(n=1)

先日のNoteの通り、以下が私の6日間の記録です。Strava(スポーツに興じる人の集まるSNS)のリンクも貼りました。

1日目 49 km, 3800 m→13:14:46
2日目 59 km, 3400 m→12:39:47
3日目 70 km, 3400 m→13:48:20
4日目 69 km, 2300 m→12:02:49
5日目 70 km, 3200 m→14:17:33
6日目 63 km, 1300 m→11:33:11

さらに6日間それぞれの平均心拍数が、142、129、125、119、121、109bpmでした。次第に次第にプッシュする気力が出てこなくなったのは実感があって、その感覚にこれらの数値は相関していて考えさせられます(13、4時間を超えるレースでもいつも同様の感覚があってよくぐだぐだになるので課題)。

各ルート・雑感

公式のルートはこちらです。
https://www.dragonsbackrace.com/the-route
https://www.outdooractive.com/en/member/the-dragon/233018123/

1日目:Conwy to Nant Gwynant(49 km,3800 m)

初日は最初の矢印が自分の荷物(ドロップバッグ)にアクセスできる給水所、2つ目が水のみの給水所です。ペース(水色のライン)が落ちている箇所は給水所で止まっているタイミングになります。

参加登録はオンラインで一年ほど前に実施、そして参加手続きはスタートの前日でした。宿泊は登録・スタート地点から600 mほどのBed &Breakfast(B&B)という類の簡易宿でした。スタート地点に近いB&Bを押さえられたのはとても幸運でした。レース会場に5時半には着いておかねばならず近ければ近いほどよいので。

早朝5時~5時半に預ける荷物の重量を測定し無事パスし、3つの荷物を預けました(レース概要のNote参照)。

そして朝6時一律スタート。ウェールズを代表する山々が待ち構えるルートです。特にCrib Gochという険しい崖と稜線は有名でそこは象徴的な山場と言えるでしょう。安全のためボランティアも多く控えており写真や動画だと危険なように思えますが、実際にはそれほど危険とは思わなかったです。時に両腕をしっかり使って体重を安定させれば問題無しでした。

Crib Gochを進む様子。象徴的な箇所なので写真家が構えています。筆者はこうしたルートは不慣れで非常に遅く、両腕を使う登り坂、この稜線を含む1 kmを進むのに40分を要しました。

ただCrib GochのみならずTryfan という山やその他も同レベルの標高で、特に登り下りが多くルートとしてはかなりきつかったです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Crib_Goch
https://en.wikipedia.org/wiki/Tryfan 

50 kmのルートで登りの総計が3,900 mということでその登り坂の密度としては日本のウルトラマラソンレースで有名なMt. Fuji 100(100マイル、161キロ強のレース)と同等だったのかなと思います。

去年は2日目にリタイアしたのですが当時の初日は12時間ちょいでゴールできました。しかし、今年は13時間かかってしまいました。翌日も見越してのセーブする意識と暑さのためと再考しています。脚への負担は今思えばそれほどでもなかったように思います。初日だったことと、脚のみならず両腕を使って登る箇所が多かったからでしょう。

6日間の完走者87名のうち45位でした。 

2日目:Nant Gwynant to Dolgellau(59 km,3400 m)

2日目は2つめの矢印の給水所(37 km地点)でドロップバッグにアクセス可能。

前夜は効率よく過ごすことができ睡眠は7時間ほど取れたのと、去年のリベンジを果たそうとやる気に満ちていました。中盤のタイムカットオフより1時間半ほど余裕を持って、去年、DNFを決めた地点を超えられてよかったです。

(私は試走はしなかったので)それからは未知の道のり、終盤の40-50 km付近は険しい山の登り下りの連続でかなりきついものでした。その山々を超えた最後の10キロはロードの下りor平坦で走りやすく、<7min/kmで走れてよい感触でした。

比較的に結果もよく6日間完走者87名のうち31位。

トレイルランニング用のポール・・初日と2日目の途中まで活躍しました。

この日、前半の岩が不規則にそびえる場所で、Black Diamondのポール(https://www.blackdiamondequipment.com/)を岩に挟んで折ってしまいました。その20kmあたりから最終日のゴールまでポール無し。腕を大きく上げてバランスを取るモーションが生きるときはよかったですが、やはり沼や険しい登り坂はポールがあった方が安定性が高まってよかったろうと思います。  

3日目:Dolgellau to Ceredigion(70km,3400 m)

3日目は2つ目の給水所でドロップバッグにアクセス可能でした。

私にとっては苦手な徒歩を余儀なくされる箇所が長くて、中盤のチェックポイントの通過はタイムカットオフぎりぎりでした。歩く場面が長くて、走る余力が溜まっていた分、走りやすい下りで大分、挽回できた箇所もありましたが、不得手の箇所が響いてか午後8時過ぎ、暗い中でのゴールとなりました。

またこの日はとても暑く、序盤は非常にきついコンディションでした。最初の給水所では嘔吐しているランナーもいたほどです。私はそれほどプッシュしていなかったからか、暑熱順化がOKだったのか結果的に大丈夫でしたが恐怖を与える陽気でした。

この日のルートの2つ目の給水所の前のコンビニでは雑品の購入が可能でした(https://goo.gl/maps/nZsw7omUndVLBSsk7)。この日は距離と標高から時間的な不安があり時間節約のため、およびそこでのショッピングは必須とは感じずスキップ。問題無かったと思います。しかし、とあるランナーがそこで購入した葡萄を分けてくださいました。本当に美味しかったです。 

このレースには、Mandatory Route(必ず通らなくてはならないルート)とRecommended Route(推奨されるルート)という2種類があり、Recommended Routeは必ずしも通らなくてもよいというルールでした(当然チェックポイント通過は必須)。
この日のゴールから10kmほどの小さな湖 https://goo.gl/maps/6kbispMk51Y65Caa6 の近くの推奨ルートは避けた方が良かったなと再考しています(前のランナーがそうしていた)。
そういった選択肢も事前調査をするのが理想でしょう。

6日間完走者87名のうち44位。

4日目:Through the Elan Valley(69 km,2300 m)

4日目は最初の給水所でドロップバッグにアクセス。6日のうち「休息日」と言われ、比較的、楽な日。しかしこの日も暑さが酷でした。2つ目の給水所(高い山を下りた後)では横になって休んでいる人が多かったです。

山登りが比較的ゆるいルートで、4日目は非公式でRest Day「休息日」と呼ばれています。しかしそれでも距離と登り坂はあなどれませんが・・。

確かに登り坂が少ない道のりでしたが沼に近かったり凸凹のトレイルが多く、脚に負荷がかかり前にも進みにくくやきもきする場面が多かったです。終盤は幸いにも走りやすいトレイル、ロードが続いて比較的に脚への負担も軽く前に進めました。午後8時前にはゴールできたのは安心できました(翌日がきついのはわかっていたので)。

終盤、推奨されたRecommended routeを避け、走りやすい、あるいはショートカットできる場面がスマートフォンをみて把握できていたのでよりは楽な道を通りました。

6日間完走者87名のうち47位。 

5日目:To and through Brecon Beacons(70 km,3200 m)

5日目は1箇所目の給水所がドロップバッグにアクセス可能。暑い中、山の登り下りが続きます。

この日は後半30 kmにPen y Fan(標高886 m)を含む山の登り降りが連続しかなりきついことが予想されました。4日間の疲労ももちろん蓄積して。
https://en.wikipedia.org/wiki/Pen_y_Fan 

Brecon Beaconsと呼ばれるウェールズ南部の代表するハイキングの山々がそびえます。https://www.breconbeacons.org/


覚悟した通り結果的にゴールしたのは午後9時半と暗い中でした。しかし完走者87名のうち46位と他の日と相対的な順位は変わらず。皆、苦労したのだなと思います。 

買い物ができる箇所として次の二箇所。
15 kmあたりのベーカリー(このレースでは有名のよう):
https://goo.gl/maps/BEbqf4CumC62ksiy5 
55 km あたりの屋外駐車場のデリ:
https://goo.gl/maps/CMtRfVBVWcvqanKZ9  

私はスキップしてしましたが前者のお店は非常に重要だったと思います。このあとから800 m ほどの山(Fan Brycheiniog)を越える35 kmほどまでの約20 km、水へのアクセスはありません(小川もゼロ)。
https://en.wikipedia.org/wiki/Fan_Brycheiniog 

それまでの疲労ももちろん、暑さと水分補給で苦労するランナーも多かったように思います。私は脇道に時折、群生していたブラックベリーを15-35km間でけっこう食べてしのいでいました。

私の住まいの近くで撮影したもの。
8月後半から9月半ばまで英国ではよく採れるものと思います。

55 km付近のお店では私はコーラ350 mlを2缶購入。£3(500円強)でした。幸いにも絶対に必要という感じではなかったのですがなんとなく笑顔になれそうだったので。 

一箇所目の給水所(Drop bagあり)は39 km、二箇所目の給水所は55 km地点でした(i.e. ゴールまで15 km)。給水所がかなり後半に設置されたデザインですが、600~890 mクラスの山々を登って降ってと繰り返すルートだったからと思います。4日間の疲労が蓄積しさらにこの日の終盤の山々は身体をボロボロにするようでしたが、「明日は最終日で楽だから焦らずのんびり行こう」という気持ちでした。 ゴールできたのは夜9時半頃で早々に食事を済まし午後11時過ぎにテントで休むことができましたが、前述のように身体中が痛むようでなかなかよい眠りが得られず。

こうした数日に及ぶレースは体力の無い人ほどゴールが遅くなり、身体に負荷が蓄積しすぎて良い眠りができず疲れが抜けず、そのまま翌日のレースに臨むという悪循環もあるかと思います。私はギリギリだったかなと思います。

6日目:To Cardiff Castle(63 km, 1300 m)

最終日・・ドロップバッグは1箇所目の給水所でアクセスできます。

けっきょく5時間ほどの睡眠でしたがその質は酷かったです(どんな体勢でもよく眠れず)。しかし、161 km(100マイル)のレースでは基本的に眠らずにゴールするというのが定石で、そういったレース(筆者は9度ほど経験)の睡眠不足状態よりははるかに楽なはずだと言い聞かせてとりあえず前進するという意識でした。そのあたり、経験が生きるところと思います。

標高1300 mとかなり楽で脚がとまりそうな登り坂は2度のみでした。やはりルートとしては楽でしたが、身体の疲労でスピードは出せず。上述のように心拍数がまったく上げられず・・もうすでに身体はお休みモードでした。
この日だけの順位は87人中65位と相対的には最もパフォーマンスが低かったです。気にしていませんでしたが。 

買い物は次の箇所で可能:
23.5 km 付近のCoop: https://goo.gl/maps/VMEp19WJ5o6UqnA29
36 km付近の街のいくつかの店舗(Coop、Premierなど):
https://goo.gl/maps/fPNugCPmVULW8U6v9

給水所が33 km地点なので後者の購買は私は必要なかったです。前者のCoopではオレンジジュース1Lを購入しほぼ一気飲み、冷たい水750 mlを購入し所持しまして助かりました。それまでにも少し大きめの街(Merthyr Tydfil https://goo.gl/maps/CizcySnKTiPoZ3yN6)を
通過したので買い物も可能だったかもしれません。 

33 km、49 kmあたりにこのルートでの給水所があり、多くのボランティアが「あと少しだよ!」と激励してくれました。6日間ずっと支えてくれたボランティアともお互いを認識できてとても強く心に残る場面でした。ボランティアの方々の声援は本当に力になりました。 

2箇所目の給水所はWhite Cross Innというパブの駐車場でした。そのパブでもスナックや飲み物(お酒も)購入可能だったかと思います(そういえば)。http://thewhitecrossinn.co.uk/

その駐車場であるランナーを待っている男性と雑談しました。300 km以上を走り続けてきたランナーに対して畏敬の念を抱いているようで「2,3年トレーニングすれば貴方も達成できますよ。」と伝えました。本当にそうだと思っています。

幸いにも夜7時前にカーディフ城でゴールできました。知りませんでしたが、夜の7時半から表彰などのセレモニーがありとても会場は賑わいました。私も含めて完走者1人1人が呼ばれ記念品を受け取りました。

6日の総合で完走者87名のうち、筆者は順位51位でした。全体を通して平均的なパフォーマンスだったようです。ということでNoteを記すこととしました。参考になれば幸いです。

著者のゴール時の写真

ボランティアの役割 +α

このイベント、多くのボランティアが活躍していました。
・テントの設営&サポート
・給水所の設営&サポート
・チェックポイントの設置(トラッカーが渡され、それが検知される)
・比較的標高のある山々の山頂での待機
・早朝と夕方以降の食事時間での給仕
・医療救急

スタート前日の登録日から合わせて7日間の従事により翌年の参加費が免除されるというリターンがあります。そうしたリターンがあるにせよ、皆さん、7日間ずっと献身的に従事してくださって参加した側としては感謝の気持ちでいっぱいです。多くのボランティアの方が他のランナーとともに顔も覚えて激励してくださっていました。そういった人と人とのつながりもまたこうしたイベントの醍醐味です。

そして、このレースはライブトラッキングが可能となっていました。

ランナーが動けなくなった時、遭難してしまった時などへの対応も目的とした安全のためのものもあったのですが、特にランナーの家族などが追跡しテキストメッセージの送信が可能になっています。各日のゴール後にそのテキストメッセージをプリントアウトしてもらってエールをもらえる仕組みになっています。私もランナー仲間などからメッセージをもらってすごく励みになりました。

このレースはRace for your life-long memory(生涯の記憶に残るレース)というような表現がされています。その過酷なチャレンジ、達成感、人と人との交流を含めて素晴らしい機会と思っています。

多くの人がそういった機会を人生のどこかで得られますように。

記念品とお土産各種


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