The Beatles 全曲解説 Vol.44 〜If I Fell
ジョンが初めて挑む「自分流」バラード “If I Fell”
『A Hard Day’s Night』3曲目。
ジョンの作品で、リードボーカルもジョンが務めます。
アルバム3曲目ですが、ここまで3曲連続でジョン単独の作品が続きます。
それほどまでにこのアルバムではジョンの才能が爆発的で、ビートルズ全キャリアの中でも、彼の脂の乗り切った作曲能力とボーカルを堪能することができます。
ジョンがバラードを扱うのは初めてではなく、カバーの “Anna (Go To Him)” や、オリジナルの “Ask Me Why” などがありました。
ただ、こういった初期のものはアーサー・アレキサンダーやスモーキー・ロビンソンなど、彼が憧れていたアメリカンなR&Bの影響も強く現れていました。
そういう意味で、この “If I Fell” は、ジョンがこれまでの知見を活かして、自己流で作った最初期のバラードといえそうです。
曲調は優しいギターの音色をバックに、ジョンとポールの美しいハーモニーによって紡がれる絶品のバラードです。
ただ、イントロのメロディを再度登場させない、サビのメロディの緩急のある複雑さなど、ただでは真似できないようなジョンらしさが随所に現れています。
単なる美しいバラードにはさせないという、ジョンのいい意味でひねくれた視線が窺えます。
ジョンのこういった視線は、後に複雑な構成やメロディを持つ楽曲を多く発表する、いわば「はしり」となっているとも見ることができます。
補足情報: ステレオとモノラル
“If I Fell” のステレオバージョンでは、ジョンのボーカルがダブルトラック処理されていますが、こちらのモノラルバージョンではシングルトラックとなっています。
大きな違いはそれだけなのですが、シングルトラックのモノラルの方がハーモニーに雑味が無く、より美しく聴こえます。
初期のビートルズを楽しむならモノラルで、と言われる所以がここにも現れています。
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