「ワインの通は【ボージョレ】が好きである」という話
「ボージョレのワインって、実は美味しいよね」
こうお客様の誰かから言われると、
「お!かなりワインにお詳しい方なのだろうな」
と、率直に私は感じます。
ボージョレはいかがですか?と、勧めると大半の方が
「ボジョレーでしょ!無理無理!苦手なんだよねー!」
という答えが返ってきます。
本当は誰もが美味しいと思う特徴を持つ葡萄なだけに、このような発言が多い事には、とても残念に思ってしまいます。
1. 「悪名高き」ボージョレー・ヌーボー
理由はすごく簡単でしょう。
原因は間違いなく、ボージョレー・ヌーボーに対するバッドイメージからくるのだと思います。
確かに、
「今年のボージョレーは史上最高の出来!」とか、
「ボージョレーのイメージが覆されるほどのうまさ!」とか、
毎年毎年来るたびに、最高の出来なんて言われても、
最高ってじゃあ何なの?となってしまうのは当然で、
もはや信憑性の余地すらなくなる程、やかましく宣伝されています。
その上、じゃ飲んでみるとそこまで美味いか?となってしまいます。
そんなに値段も安いわけじゃないですしね。
純粋に美味しいワインが飲みたかった人達はみんな、なんか裏切られたような経験を持たれたのではないでしょうか。
2. ボージョレワインはヌーボーだけではない、ガメイ=ヌーボーにするのは「早とちり」
確かにそういうボージョレ・ヌーボーはあります。
それこそ、大半がそういったものではないかと私も思います。
ただ今回ここで弁解させていただきたいのは、そういう品質の悪いものも含めた、全てのボージョレー・ヌーボーのイメージを覆したいというわけではありません。
まず、そもそも「ヌーボー」とは何なのか。
これは、その年の最初に作られた新酒、新ワインというものです。
今年の11月には、
「2020年に収穫した葡萄で作ったワイン」が初めてリリースされ、
それを盛大に祝うという、いわばフェスティバル的用途のワインなんです。
その初年度のワインをみんなで飲んで、
今年はこんな年だった、あんな年だったと話して祝いながら飲む為のワインなんです。
なのでヌーボーは、ボージョレでは決して普段からいつも作っているワインでは無く、そのお祭りのために特別に作られたワイン、という事です。
その事をぜひ念頭に、改めてボージョレのワインを飲んでみていただければ嬉しいですね。
3. ブルゴーニュのピノノワールは価格が急高騰中、今はガメイが狙い目!
ブルゴーニュのピノノワールは本当に美味しいものに当たると、めちゃくちゃ美味しいですよね。
ブルゴーニュのワインのファンは大変多いと思いますが、
ファンの頭を悩ませるのが、ここのところ長く続くブルゴーニュのピノノワールの価格高騰です。
きちんと手間暇かけて、丁寧に作った健康なピノノワールは、
一時期前に比べてかなり価格が上がりました。
増税など様々な問題が複合してこの様な状況になったといわれています。
そんな状況の中で、私たちレストランのソムリエは、
常にブルゴーニュの品質の良いピノノワールに代わる、コストパフォーマンスのよいワインを探しています。
アメリカのオレゴンやニュージランド、ドイツなど色々と選択肢はあるのですが、それでもそれらはフランスのワインではありません。
ボージョレは、ブルゴーニュのピノノワールの最も有名な産地であるコートドールの、もう少し南下した位置にあります。
大きいくくりで言えば、実はボージョレはブルゴーニュのワインなんです。
ヌーボーではない、ボージョレで生産している健康的で高品質なガメイは、
ポピュラーなピノノワールに負けないくらいの、豊かな果実味と軽やかさを持っています。
同じ値段で美味しいピノノワール系を飲みたいとなった時は、今はまさに間違いの無いガメイをセレクトするのも、ありじゃないでしょうか。
4. 今年のボージョレー・ヌーボーに期待しよう!
一度またヌーボーの話に戻り、
日本は、ボージョレー・ヌーボーの輸出量世界一の国だという事を、みなさまご存知でしょうか?
それがではどういう事になるのかというと、
市場のありとあらゆるところに、ボジョレー・ヌーボーが溢れかえり、
近所のスーパーマーケットや、はたまたすぐそこのコンビニエンスストアまでもが、
今までそんなにワイン販売には力をいれてなかったはずなのに(それにワインに対する扱いも酷いもの😢)、どこもかしこも一斉に売り出しはじめます。
そんな玉石混交のようになってしまった状態で、
はっきり言って美味しいものを確実にピックアップするというのは、誰だって難しいに決まっています。
そこで大事になるのは、信頼できる確かな情報。その上で、手に入れた上質なヌーボーを改めて、ぜひぜひ一度飲んでみていただきたいです。
とびきりフレッシュで生き生きとした葡萄のみずみずしい美味しさは、これに代わるものはない、と言って良いでしょう。
日本の市場にメタメタにされてしまった悲劇の葡萄、「ガメイ」のイメージが少しでもよくなってくれる事を、願ってやみません😢
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