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コペンハーゲンにある水族館、ブループラネット

約2年年半振りに、車でコペンハーゲンに遊びに行く。自宅からコペンハーゲンまではたったの30分程度で行けるのだが、近年のパンデミックの影響でスウェーデンとデンマーク間の道(車か電車)は特別な理由がない限り通ることが出来なくなり、以前のように気軽に出かけることがとても難しくなってしまっていた。だけれども、先々週辺りからデンマークのパンデミックによるあらゆる規定が取り払われたということで、久しぶりに車でコペンハーゲンに行こうということになった。というのも、日曜日が私の誕生日なので、私がデンマークに行きたいと言ったのだけど。

スウェーデンとデンマーク間の海上には、オーレスン橋が架かっている。その橋の上部を車が、下部を電車が通る。晴れた日にこの橋を渡ったならば左右にオースレン海峡を見渡すことができるし、海峡を行き来する小船や海上にたくさん並んだ風力発電やコペンハーゲン空港を発着する飛行機を見ることができる。車で通ったならば、海を眺めながら前方に迫り来るデンマークの地を眺めるのもいい。スウェーデン側を走り始めて橋の真ん中を過ぎてからしばらくすると、デンマークの表示が見えてくる。青地に白くDanmarkと書かれた文字の周りには黄色の12個の星が描かれており、ここがEU域内であることを証明する。何度も行き来している通り慣れた道とはいえども、久しぶりの陸路での国境通過は嬉しいものだ。すっかり遠のいてしまっていた旅をするという感覚が、少しずつ体の中に戻っていくのが確かに感じられるのだった。

デンマーク国立水族館ブループラネット(こちらの発音ではブロープラネットという)は、オーレスン橋から続く20号線を挟んでコペンハーゲン空港の反対側に位置する。橋を渡り切って普通道路に出た後、すぐに右に曲がって少し直進するとブロープラネットの看板が見えるのでそこを右に曲がってしまえば、あっという間に水族館に着いてしまう。海に面した巨大な丸みを帯びた銀色の建物は、どこか日本の郊外にある近代美術館のように見えなくもない。スタイリッシュでスマートで、一見しただけではまさかこれが水族館だとは思わない、きれいで瀟洒な建物なのだ。国立とはいえども、その規模はさほど大きくはない。さっと一周した所で、2時間はかからないだろう。水族館のいわゆる目玉的なペンギンもいなければアザラシもおらず、もちろんイルカもシャチもいない。クラゲもいない。しかしラッコはいる。アマゾン川に棲む淡水のエイ、ポルカドット・スティングレイもいる。

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ここは展示された生物についての説明を、展示の横に設置されたタッチパネルを使って三ヶ国語で見ることができる。展示は『北部の湖と海』と『熱帯の川と湖』と『海(ザ・オーシャン)』の三つのゾーンで展開されている。シンプルだ。ザ・オーシャンの大きな一面ガラス展示の前で優雅に泳ぐシュモクザメやウミガメを眺めながら、何時間でも寝そべっていられる。ガラス張りのレストランでは、カールスバーグの生ビールを飲みながら、着陸する直前の飛行機を眺めることもできる。そういった具合で、非常にコンパクトに作られた水族館なのだ。私はこの場所を、とても気に入っている。毎月だってここに来て、いつもの生活とは全く関係のない海の生き物たちについて、見たり考えたりしたいと思う。しかし子どもと一緒に行けば、結局のところは子どもに振り回されることになるのだけど。

エントランスで水族館のウェブサイトから購入した年間パスポートのバーコードをスマホ画面から読み取ってもらい、中に入る。まずはクロークルームに行き、観覧の邪魔になるコートをハンガーに掛ける。狭い室内にはたくさんの人が行き来しているので、今までのパンデミックのありとあらゆる規制は一体何だったのかと思わざるをえない。とはいえ私はスウェーデンに住んでいるから、マスク着用のない生活を送っていたのだが。まずはザ・オーシャンから見る。通路では、古代の海の生物展をしていた。恐竜マニアの上の子どもは、見つけると即座にそのコーナーに張り付いた。私たちがよく見知ったアーケロンやエラスモサウルスの実物大のレプリカが、天井から吊り下げられている。どれもなかなかの迫力ものだ。作りもしっかりしているし、細部もちゃんと手入れがされている。恐竜ではなく古代の海の生物展なので、初めて知る生き物もたくさんあった。恐竜も古代の生き物も、私には読みかたが難しいものが多くて困る。今日ここで初めて知った古代魚のシファクティヌスなんて、ちょっとそのアルファベット(Xiphactinus)を見ただけではすらりと読めたものではないし、覚えられやしない。子どもと一緒に、古代生物の読み方に奮闘した。下の子どもはというと、こちらはメガロドンに夢中になっている。メガロドンを指差しては「あー」と声を上げて、それがそこにあることを確認するように、こちらをちらりと見る。それを何回も繰り返した。これを見てよすごいよと問いかけてくるその様子が、可笑しくてかわいい。

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エイのタッチプールでエイを触ったり大水槽を見て、レストランに行った。私はオーガニック素材を使ったハンバーガー単品と、カールスバーグビールを注文した。パートナーと子どもが注文したフィッシュアンドチップスに添えられた海藻が、ただただ固かった。ひとつ齧ってみたけれど、海藻のうまみなど少しも感じられず、食べられたものではなかった。フィッシュフライに添えられた自家製ソースも、味がしないただのファットでしかなかったので、海藻は食べることができなかった。フィッシュフライとポテトは、悪くはなかったのけど。海藻は柔らかく味付けした上で食べられるものなのだなということが、よく分かった。貴重な家の中以外で飲むビールの味を、外の景色を見つつ割と楽しむことができたと思う。

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昼食後、下の子どもをベビーカーに乗せてパートナーが、上の子どもを私が連れて、二手に分かれることにした。下の子どもをベビーカーで寝かしつける目的だったのだが下の子どもはかなり興奮していたので、結局は水族館内で寝付くことはなかったけど。パートナーと別れた私は上の子どもと二人で、熱帯雨林の生物の展示に行く。ここの展示が、ちょっと変わっていて面白い。展示が上部と下部との二階構造になっており、上の二階の部分は温室になっていて植物の間に作られた狭い歩道を歩きながら、木の根元などに潜んでいる体調2〜4cm程ヤドクガエル科の小さい蛙や小鳥を見ることができるというものなのである。後で知ったことなのだけど、これらの蛙は本来の生息地では猛毒をその肌に纏っているのに対し、ここの蛙たちは無毒性の昆虫や果実を餌として与えられている為に、無害であるという。この歩道は基本的には柵が設置されていない。なので、蛙たちは本当に無害なんだろうと思う。この歩道では、蛙2匹とトカゲかカメレオンみたいなもの1匹と世界で一番大きいらしい鳩のオウギバトというものを見ることができた。私が見つけられなっただけで、もっとたくさんの生き物がこの室内に身を潜めているのだろう。蛙はとても小さいので、見つけることは本当に難しい。

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そして面白いのが、メキシコから北南米に生息する「セバの短い尾のこうもり(Seba’s short-tailed bat)」と名付けられたこうもりの展示だ。木の芯をくり抜いたように作られた巣の中に、こうもりが住んでいるのだ。これも柵などはないのだけども、こうもりは木の奥の方に身を引っ込めているのでその姿はぼんやりとしか見えないし、その奥の中からは絶対に出て来そうにはない。少なくとも、水族館の営業時間中は出てこないだろう。その木の中はもちろん暗いので、子どもは怖がっていた。一応、こうもりの姿を確認はしていたけれど。

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熱帯雨林の展示を出てからパートナーと合流すると、予想外に下の子どもが寝ていなかった。興奮して目が冴え切った子どもを寝させようと水族館の外エリアに散歩に出るものの、全く寝ない。もう寝かしつけるのは諦めて、帰りの車の中で寝てもらうことにする。この外気スペースには館内とつながったラッコの展示もあるのだけれど、今日はここでラッコの姿を見ることは出来なかった。前回は氷を頬張るとても愛らしいラッコの姿を見ることが出来ただけに残念ではあるけれど、ラッコだって、四六時中氷を食べているわけでもないだろうに。
子どもは寝ないし外の寒さや子どもの相手やらで疲れてしまったので、コーヒーを飲んで休憩を取ることもなく水族館を出た。水族館でゆっくりと1日を過ごすようなことが、今後やって来るだろうか…と思う。スウェーデンに帰る前に今まで行ったことのない地域、空港の南側を車で走ることにした。スウェーデンとデンマークでは、住宅などの街の様子はいくらか違っている。私はこの2国の様子は全然違うように思うのだけど、子どもやパートナーは似ているという。陸続き(ここでは海も同じようなもの)の国の見た目の違いは、どこかが似たり違ったり、複雑で説明しにくいものがある。見た目だけではなく当然民族も混じっているので、ややこしい。その辺に関して適当なことを言ってはいけないし、簡単にあれそれがどうだとか、いえないものだ。帰路に着く前のこの短いドライブ中、飛行機の離陸する姿がよく見れる場所を見つけることができたし、ガソリンの価格がスウェーデンよりも20%程も安かったので給油もした。普通、デンマークの物価はスウェーデンもそれよりも断然に高いのだが。オーレスン橋を渡ってスウェーデンに戻り、家の近くの小さなショッピングセンターで買い物をして帰る。

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