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【現地人に聞くスイス🇨🇭事情】富裕層が集まる理由。平均年収から〜恋愛事情「愛の不時着」の裏話まで

スイスと聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか?

アルプス? ハイジ? スイス銀行? チーズフォンデュ?
はたまた、かの有名な韓国の人気ドラマ「愛の不時着」のリ・ジョンヒョクがピアノを弾いていた「ブリエンツ湖」や、エンディングでドローン撮影されていた「ルンガーン湖」などの壮大で美しい大自然かもしれません。

人それぞれで連想するものは違うと思いますが、思い描く「スイス」と実際の瑞西に結構なギャップがあると長年住んでいる僕は感じます。

文・岩田 康孝(いわた・やすたか a.k.a. Yas)
若くに渡米し、サンディエゴ州立大学で言語学を専攻し首席で卒業。その後、非利益団体や米国海兵隊で通訳など多様な経験を積み、大手企業のグローバルHQが集まるスイスへ移住する。現在はJapan Tobacco Internationalで企業広報に従事し、WebやSNSなどのデジタルコミュニケーションの戦略構想、さらにはコンテンツ制作など幅広く携わる。言葉の伝わりやすさと美しさにこだわり、日本語だけではなく英語でも常に読み手を最優先する編集者。

僕がスイスに15年間住んでいる理由

そんな僕ですが、かれこれスイス在住15年目に突入。パートナーがスイスの会社に合併されたのを機に、米国カリフォルニア州からスイス、ジュネーブに住み移り、アッという間に長い月日が経ってしまいました。

マックの時給は約4,000円超え!? スイスの物価事情や気になる平均年収

世界の物価の高い都市に毎年必ず上位ランクインするスイスのジュネーブでは、マクドナルドのハッピーミールを食べようとすると15スイスフラン(現在の為替だとなんと2,480円!?)の大金を叩かないとありつけないという恐ろしいほど物価が高い国です。

もちろん、それに見合うほど給料も高く、マクドナルドでアルバイトした場合、時給は25フラン(約4,130円)という高給。スイス政府の統計によると現在の平均年収は約8万スイスフラン(2023年9月の為替だと1,300万円)で、スイス自体はヨーロッパの中心部に位置し、フランスやドイツ、オーストリア、イタリア、リヒテンシュタインに囲まれていて、給料の高さから国境を越えて職を求めてくる人が多いのが特徴。

スイスでは、スーパーでレジを打つ仕事でも7万フランの年収と言われ、それに比べて隣国のイタリアでは医師でも2〜3,000ユーロを満たない月収。スイスの医師は、5分毎に課金されるので、なるべく世間話は避け、用件にいかに早く辿り着くかが大事です。また、上をみるときりがなく、トレーダーなどの職業だと収入が数億を超えるのは当たり前。それ故に、どんな仕事も倍率が高く就職難が続きますが、機会があり某日経企業で働くことになり、その後転職をして現在に至ります。

空き物件率は1%未満。住めば都だが住むまでが荒波。

住めば都といったもので、15年経った今は慣れましたが、移住したばかりの当時は非常に大変な経験ばかり。ジュネーブやチューリッヒで賃貸物件を借りるにはコネや仲介業者を入れないと中々空き物件を見つけるのが困難で、空き物件率は1%未満。何件も見比べて決める、など贅沢なことはできず、空いてる物件があれば入居希望を出すというのが基本です。生活の面では、日本やアメリカだと毎日24時間営業しているスーパーや飲食店を見つけるのは比較的簡単ですが、スイスだと日曜日は休息日として基本的にはスーパーも多くの飲食店も閉店している。

「一体いつ稼いでいるんだ?」「経営する気があるのか?」などと他人事ながら心配してしまいます(苦笑)。

4つの共通語を中心に「+X」。バイリンガルが平凡な多言語国

僕が住んでいるジュネーブはフランス語圏で、文化もどちらかというとフランス文化寄り。しかしスイスのもう一つの都市、チューリッヒはドイツ語圏で、スイスドイツ語を話し、同じ国なのに人柄も建築物も違ってきます。この二つの言語に加え、スイスではイタリア語、そしてロマンシュ語の4つが正式な共通語で、外国から移民が多い地域では英語も日常会話で使われている多言語国です。そんな国柄から、現に何ヶ国語を堪能に操る人が多く、バイリンガルというのは何も特別感がないほどです。

富裕層を始め、世界中からスイスに人が集まる理由

「空気がキレイ!」と思われがちで、もちろん山に行けばキレイですが、街中だとそんな事はなく、やはりスイス観光での醍醐味はスキーやハイキングだと思います。スイスのシンボル的なユングフラウヨッホや美しい景色が望めるグリンデルワルト、そして山と湖が望めるルツェルンは常に観光客で賑わっています。ジュネーブに関しては、1日あれば十分すぎるほどで、旧市街地、湖、時間が余れば国連総本部の見学などがオススメです。個人的にはジュネーブは「都市」ではなく、あくまで「国際村」と呼んでいるくらいなので、人口もわずか20万人ほどと小さめ。

では「なぜ世界中から人が集まるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

スイス連邦国は「中立国」という立場を長年保ってきたため、国連を始めとする様々な国際機関があるまり、さらには企業税が低いので、多くの大企業が減税対策のために本社機能をスイスに移したあとに急激な経済発達と成し遂げました。個人で支払う税金も、平均的には収入の20%程度と、ヨーロッパ隣国に比べても低いほうです。中立国、そして金融機関が発達しているため、「スイス銀行」といえば映画の悪者が資産を隠す場所、というイメージも定着してますね。

現に、著名人や大資産家が税金の低さからスイスに移住することは稀ではありません。手頃で有名な家具のチェーンのオーナーや日本の元カリスマアイドルがジュネーブに住んでいるというのは現地民の間ではよく知られていること。夏になると、資金運営の目的をかねて、中近東諸国からアラブの富豪がジュネーブに避暑しに訪れます。ジャンボジェットにマイカーを積み込んでくるため、アラブプレートの高級車が見れるのも夏のジュネーブの風物詩かもしれません。

しかし常に豊かな国ではありませんでした。八方とも山に囲まれ、隣国から領土を守り、限られた資源で生活してきた歴史のため、文化、人柄の面でも素朴な印象を受けます。現に、スイスを代表するチーズフォンデュやラクレットは、溶かしたチーズをポテトや古いパンにつけて、ピクルスや乾燥肉と一緒に食べるというあまりインスタ映えしない乏しい食べ物です。

年収数億円超の高給取りはスイスでどう遊ぶのか

ではどうやって銀行家やトレーダーのような高給取りがスイスで遊ぶのか? ジュネーブやチューリッヒだと日本のバブル時代なようなイケイケなクラブなどがあるのです。スイスの水質検査の結果によると、ジュネーブとチューリッヒでは非常に某ドラッグの使用率が高いと明らかになっています(下水経由の排尿から使用量が分かるため)。

高給取りで高級時計を腕に光らせる男性に群がる美しい東欧女性、そんな光景が繰り広げられるナイトライフ。実際、ジュネーブの独身男性は独身でいる期間が非常に短く、独身女性の比率が非常に高い印象を受けます。家族持ちの落ち着いた世代にはハイキングやスキーなど健全な遊び方が最適ですが、独身の遊びたい世代にとってはスイスは退屈してしまうかもしれませんね。現に若い世代の友達、同僚は、週末になるとロンドンやパリ、イビサ、ミコノスなどとヨーロッパの近隣諸国に遊びに行ったりします。

好イメージばかりを創出。スイスはマーケティングが上手い!

スイスの凄いと思うところは、マーケティングの上手さです。キレイな山、ハイジ、チョコレート、スイス時計などなど最初に連想するものは好イメージの物ばかり。実際に、豊かな土地柄から治安も比較的安定していて、現在のインフレーション高騰の影響からも他国に比べると遮断されているかもしれません。

そんな好印象を利用して利益をあげるのが非常に上手なのがスイス。なんと言っても安楽死を売りに観光を開拓したり、犯罪者などからも金を受け入れて運営するなど、少しモラルを疑ってしまう面も。

なんでもかんでも金稼ぎの機会に変えてしまうので、例えば「愛の不時着」で有名なイゼルトヴァルトの船乗り場の桟橋、今ではアジアからの観光客が訪れる観光スポットとなったために桟橋で写真を撮るのに5フランの通行料を徴収されるようです。

そうは言っても15年も住んでいるにはそれなりにいいところもあり、
「日本のような残業がない」
「義務で年に一回は2週間連続の休暇を取らなければならない」
「解雇保険があるため、職を無くした場合は収入の70-80%が約18ヶ月間がでる」
などと労働条件の水準が高いのも特徴です。大金を稼ぎたい、ヨーロッパの新地を開拓したいベテラン観光通の方には、ぜひスイスを開拓していただきたいです!

写真・文:岩田康孝(Yas)
編集:ヤスダツバサ(Number X)

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