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【舞台挨拶と感想】長編ドキュメンタリー映画『杜人(もりびと) ~環境再生医 矢野智徳の挑戦』

今日、ナレーションを担当させていただいた長編ドキュメンタリー映画
『杜人(もりびと) ~環境再生医 矢野智徳の挑戦』
映画館で観させていただきました。

東京では4月末まで、全国の映画館で上映しているドキュメンタリー映画です。今週末、幕開けでした。ぜひ映画館で観ていただきたい作品です。映画の感想をこちらに記します。

人間よりも自然に従う風変わりな造園家に3年間密着。
全国で頻発する豪雨災害は本当に「天災」なのか?
環境問題の根幹に風穴をあける奇跡のドキュメンタリー。


「虫たちは葉っぱを食べて空気の通りをよくしてくれている」
「草は根こそぎ刈ると反発していっそう暴れる」
「大地も人間と同じように呼吸しているから、空気を通してやることが大事」
「人間はコンクリートにどっかりと乗っかって、最後にデコレーションとして植物を植える」
「毎年、悲鳴を上げた自然に巻き込まれ、何人もの方が亡くなっているのに、人々はそれを忘れ、素通りするように過ごしてしまう」

この春は、桜がとてもきれいな季節でした。

わたしたちは皆、春に桜を待ちわびていて、
でもその桜の足元の根、土に想いを馳せることはない。

それが矢野さんの言う、という言葉にあった人間の業なのだと思います。

自然と寄り添いながら、自然のものを使い、対話しながら環境再生に取り組む矢野さんの姿勢に対し、多くの人が「矢野くん、その活動では業は成り立たないよ」と言ったと、矢野さんは寂しく語ります。それでも、

「どうしたら自然が息を取り戻せるか、自分はそれと向き合うと決めた。
それは仕事ではできない。
だから自分でやると決めた。
もちろん自分だけではできない。簡単なことではないけれど。
できなくなるまでやると決めた。」

そんな風に自分の人生の命題と向き合う矢野さんの姿は、わたしにはこの映画を撮影し、監督をされた前田せつ子さんにも重なりました。

前田せつ子さんとの出会いは、東京都国立市。出身団体である一橋大学の劇団コギトに関連する朗読劇「戦没オリンピアンの日記」の上映会でお声かけいただいたのでした。
そして、前田さんご自身の矢野智徳さんとの出会いも、国立の桜並木を守る取り組みであったということに、人のご縁が繋がる運命を感じざるを得ません。

前田せつ子さんは、約3年半にもわたる膨大な撮影量と、それからの編集・監督、さらに劇場公開に向けた宣伝活動、すべてお一人が手掛けています。
約5年間、収入はただただ出ていく一方だったと語ります。
並大抵の気持ちでできることではありません。

これも、「仕事」ではない。
誰かに言われて取り組んでいることではない。

けれども人には、何かしら、自分がやらなければならないと突き動かされる命題があり、それに真摯に向き合って取り組んできたその道が、人生の軌跡になるのだと思いました。

前田さんの取り組みが花開き、現在、全国で上映をしています。これはすごいことです。矢野智徳さんが全国の環境を再生する活動に取り組んできていて、地方の方にも届くようにという前田さんの強い信念を感じます。

有難いことに、矢野さんをご支援くださる方々のおかげで、開幕は満員御礼とのこと。
でも、本当は矢野智徳さんの取り組みを知らない方や、
普段環境について考えていない人に観てほしいと、前田さんは語ります。
わたしも同じ思いです。

ぜひ鑑賞いただき、ご感想を発信して、多くの方に矢野さんの活動を広げていただけると嬉しいです!

・東京 アップリンク吉祥寺 2022年4月15日(金)〜28日(木)
・大阪 第七藝術劇場 4月16日(土)〜29日(金)
・京都 アップリンク京都 4月22日(金)〜28日(木)
・横浜 シネマ・ジャック&ベティ 4月23日(土)〜
・川崎 川崎市アートセンター 5月14日(土)〜27日(金)
・逗子 シネマアミーゴ 5月15日(日)〜6月4日(土)
・仙台 フォーラム仙台 5月20日(金)〜6月2日(木)
・名古屋 シネマスコーレ 5月28日(土)〜6月10日(金)
・厚木 あつぎのえいがかん kiki 6月4日(土)〜6月17日(金)
・苫小牧 シネマ・トーラス 6月予定
・広島 シネマ尾道 6月予定
・福島 フォーラム福島 7月22日(金)〜28日(木)
・栃木 宇都宮ヒカリ座 8月19日(金)〜9月1日(木)

撮影期間
2018年5月~2021年10月

撮影場所
鹿児島県屋久島町
福岡県北九州市
東京都小金井市、日野市
神奈川県三浦郡葉山町
埼玉県大里郡寄居町
山梨県上野原市
長野県安曇野市
宮城県伊具郡丸森町、気仙沼市、仙台市
千葉県市原市
鳥取県米子市
福島県田村郡三春町
広島県呉市
岡山県倉敷市、総社市

矢野智徳
1956年福岡県北九州市生まれ。造園家。環境再生医。父親の矢野徳助氏が私財を投じて始めた花木植物園「四季の丘」で10人兄弟とともに植物の世話をして育つ。東京都立大学で理学部地理学科・自然地理を専攻。在学中に1年休学をして日本一周を敢行。各地の自然環境を見聞し、1984年、矢野園芸を始める。1995年の阪神淡路大震災によって被害を受けた庭園の樹勢回復作業を行う中で、環境改善施工の新たな手法に取り組み始める。1999年、元日本地理学会会長中村和郎教授らと共に、環境NPO 杜の会を設立。2017~2020年、一般社団法人「大地の再生 結の杜づくり」顧問。足元の住環境から奥山の自然環境の改善までを、作業を通して学ぶ「大地の再生講座」を各地で開催しながら、現代土木建築工法の裏に潜む環境問題に言及、その改善予防を提案し続けている。

前田せつ子 監督・撮影・編集
山口県生まれ。東京外国語大学卒業。1984年(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント入社。音楽雑誌、映画雑誌の編集を手がけたのち、1999年よりフリーランス。雑誌『Lingkaran』ほか環境・料理系の記事の編集/執筆に携わる。手がけた書籍に『辰巳芳子の展開料理』(ソニー・マガジンズ)、辰巳芳子『いのちと味覚』(NHK出版)、『フジコ・ヘミング 14歳の夏休み絵日記』(暮しの手帖社)等。2011年5月~2015年4月、国立市議会議員。在任期間中、国立市の街路樹伐採計画が浮上したのをきっかけに、矢野智徳氏と出会う。2018年3月~アップリンク主催ムービー制作ワークショップを受講。同年5月、「杜人 環境再生医・矢野智徳の挑戦」撮影開始。本作が初の長編ドキュメンタリーとなる。


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