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ノスタルジックとエスニック

ラジオの天気予報が、今日は初夏の陽気になると告げている。
ほんとに? まだ桜もだいぶ残っているのに?
冬のコートをクリーニングに出しに行くために、用心して日焼け止めを塗る。
季節感がごちゃごちゃだなと思いながら外に出た。

吹いてくる風はさわやかだが、下からの照り返しはすでにけっこう強い。
歩いていると、肩や背中にじりっとした陽射しの暑さを感じる。
帽子をかぶってきてよかった。
このままだと、本当に春と秋がなくなってしまうかもしれないな、スプリングコートとか死語になっちゃうのかな、などと考えながら、かさばる冬物を運んだ。

散りはじめた桜の下に、ツツジが色濃く咲いている。
幼かった頃、祖母がこの花の蜜を吸わせてくれたのを思い出す。甘い甘いと喜んで、そのへんに咲いているのをきょうだいでよく吸っていたっけ。
今のこどもたちは、そういうことをしないんだろうな。花の蜜を吸う、という行為自体を、知らないかもしれないな。

来月、祖母に会いに行くことになっているから、そんな昔話もしてみようかな。
百寿を超えている祖母は、あの頃のことを覚えているだろうか。今年の桜を、今年のツツジを、見ているだろうか。

ウールのコートとダウンジャケットを預けたら、身軽になってすっきりした。
予報通り気温が上がってきて、うっすら汗ばむくらいに暑い。まさに初夏だ。青空が気持ちいい。喉も渇いてきた。
駅の向こう側のタイ料理屋に、ひさしぶりに行ってみることにした。パッタイがおいしいんだよな。パクチー餃子もいいな。歩きながらメニューを考える。シンハーとバーバーバー、ビールが2種類あるのもいいんだよな。

自由で気ままなひとりの休日。
ツツジの思い出。
エスニックの香り。

グラスもキンキンに冷えて出てくるのがうれしい。こういうとこ、大事。


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