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殴られて、考えたこと。

歩道を歩いていたら、向こう側から自転車がやって来た。
けっこうスピードが出ていそうに見えて、私は道の端に寄った。
すれ違いざまに、肩のあたりを思い切り叩かれた。

え、何? いま私、殴られた?!
一瞬なにが起きたかわからなくて、固まってしまった。
慌てて振り向くと、自転車は速度を落とさず走って行き、小さくなっていた。

びっくりして、すぐに怖くなって、そして腹が立ってきた。
なんであんなことするんだろう。
なんで私だったんだろう。
まっすぐ前を見て歩いていただけなのに。


若い男の人だった。
マスクをしていなかったので、白い肌と尖ったあごが近くで見えた。
何か嫌なことがあってイライラしていたのだろうか。
ノソノソ歩いてる私が気に障ったのだろうか。
他の人にもあんなことをしているんだろうか。
私の混乱した頭は答えを出そうと必死で回転したが、
理解不可能な状況は変わらなかった。
ただ、私が女だからというのが今回の理由のひとつだろうということだけは、なんとなくわかっていた。

気持ちが少し落ち着くのを待って、歩き出した。
殴られたほうの肩が少しジンジンしている。
歩きながら、自分がものすごく傷ついていることに気がついた。

殴ってもいい人間だと思われたこと。
下に見られ、ナメられたこと。
他人に粗末に扱われたこと。
その事実がとても悲しくて、落ち込んだ気持ちをなかなか切り替えることができなかった。
私は悪くない。私に落ち度はない。そう何度も心の中で繰り返しながら、沈みそうになる自尊心をなんとか引っぱり上げ続けた。


一番感じたのは、自分で自分を守れなかった悔しさだ。
大声を出すことも、助けを呼ぶことも、ましてや追いかけるなんてことも、何ひとつできなかった。
もし、女だからという理由だけで理不尽な目にあうことが今後もあるのだとしたら、私はどう立ち向かったらいいのだろう。
もっと強くなりたい。筋肉とか腕力という意味ではなく、他人にナメられないようになりたい。心からそう思った。


買い物を済ませ、コンビニで上等なアイスを買い、家に戻った。
家に着いてから、警察に通報するべきだったのではと気がついた。動転していてそこまで気が回らなかった。

アイスのやさしい甘さにほっとする。
ナメられ改善計画、とりあえず髪にメッシュでも入れてみようか。
その前に、キリッとした顔つきの練習をしよう。
鋲の付いた靴とかはやりすぎか。

自分で自分を守れるようになる。
来年の目標が決まった。


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