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連続ブログ小説「南無さん」

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あなたが深淵を覗くとき、深淵もまたあなたを覗いている。
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#健康

連続ブログ小説「南無さん」第十一話

 両の乳首から抜け落ちずに伸び続けた一本ずつの長い長い乳毛を胸骨のあたりで蝶々結びにして愛でていた南無さんが、往来でつまずいた拍子にすべてを無に帰してからすでに一月が経った。南無さんは己が蝶よ花よと育て上げた乳毛が道半ばにして千切れてしまったことでショックのあまりその場に倒れこんだままその月日を過ごしていたのであるが(道半ばとは言うが終にはどこへ向かおうとしていたのかは南無さんのみぞ知ることである

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連続ブログ小説「南無さん」第十話

 陰毛散らしと残尿さらいが犬猿の仲であるのは、この界隈ではもはや語るに及ばざる事実である。とはいえ、いざ目の前で争われると、かくも厄介なものかと南無さんは嘆息した。

 紫陽花がぽんぽんと花開き、南無さん宅の庭を赤紫に彩るころ(南無さんの尿酸をたっぷり吸った土壌で育ったのだ、無理もない)、雨上がりに陰毛散らしが例の回収にやってきた。ごめんください、回収です、と敷居をまたいだときから、南無さんはすで

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