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ドジャース、ヤンキース、ブルージェイズ、ツインズなどなどの[ス]と[ズ]・・・英語複数接尾辞-sの発音との違い(1)


はじめに


本稿はTOEFL Web Magazineの連載コラムFor Lifelong Englishに2021年4月に掲載したものです。執筆は2020年12月で、タイトルも含め少々加筆・修正しましたが、サイトなど執筆時のままを(1)~(5)の5回に分けてお届けします。

筆者が教鞭を執った慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでの専門英語科目(Modular English)English Diversityの講義ノートを基にしています。

アメリカ留学の当初筆者が英語の発音で気になった一つに屈折接続詞複数形-sの発音がありました。慣れるのに2年ほど掛かりましたた。英米文学そして言語学の先生方は授業中にとても気をつけて発音され、特にGeorgetown大学博士課程の英語統語論担当Macdonald先生と英語音韻論担当のKreidler先生はゆっくりキッチリ発音されていたのを思い出します。筆者自身も博士論文(英語分析)口頭試問(defense)の質疑応答でそんな先生方を前に意識的に気をつけ発音した項目の一つです。

大好きなMLB2021年11月ポストシーズン中のいくつかの試合を中継する2ヶ国語放送を見ながら、日本語実況と英語実況におけるチーム名の発音の違いに自ずと興味が湧き稿を起こしました。あくまでも英語は英語の音韻体系、日本語は日本語の音韻体系で発音されるのですから違いが生じるのは当然で、正しいとか正しくないという問題ではありません。ただ、日本語に借入さたカタカナ表記の日本語には英語の元の語彙し発音できれば使えるものが多くあります。途端に語彙が増えます。趣味を中心に英語借入語をチェックしてみてください。今回はMLBチーム名の発音の仕方を通して複数形の発音を開設します。細かい分析が続きますが、TOEIC, 英検,TOEFL iBT, GRE, GMAT, LSAT, MCATなどの受験者に役立つ基礎情報です。

音声学から音韻論そして形態論に関わる問題

「その先の英文法:Loud Talking(大声)…」では、大声発話によるCOVID−19感染拡大リスクに関し、phonetics(音声学)とphonology(音韻論)から一考しました。今回も英語の発音、即ち、音声(phones)と音韻(phonology)に関するもので、日頃筆者が興味深く感じている英語のinflectional suffix(屈折接尾辞)-sの日本語のカタカナ表記に焦点を当てます。このinflectional suffix(屈折接尾辞)-sは、phonetics(音声学)とphonology(音韻論)の次のステップのmorphology(形態論)にかかわる事象です。専門用語を使うとこの-sはmorpheme (形態素=意味ある最小単位)でその発音ルールはmorphophonemic rule (形態・音韻ルール)と称される事象です。ちなみに「その先の英文法:英語の語彙を増やそう。語形成について(その1)接尾辞Suffixesではinflectional suffixes (屈折接尾辞)ではなくderivational suffixes(派生接尾辞)を扱いました。参考までにお読みください。英語の用語についてですが、今回のmorphology(形態論)については「アメリカ留学を振り返って-Memorable Teachers (その6) Georgetown University Ph.D. Program in Linguisti」紹介したRoss Macdonald先生のMorphology and Syntaxの授業ノートを参照しており、用語の使い方が異なる場合もあります。また、今回も言語学関係の専門用語のみ英語(日本語訳)で表記します。

2020のCOVID-19無観客でも白熱したMLB Postseason放送を見ながら職業柄つい引かれてしまったチーム名-sのカタカナ表記


長年MLBファンの筆者は、昨年COVID-19 Pandemicの影響下で行われたMLB 2020のRegular SeasonとPostseasonの熱戦の模様を堪能しました。Regular Seasonは7月から9月まで各チーム60試合、Postseasonは10月、Wild Card Series→Division Series→League Champion Series→World Seriesという順で進み、ほぼ無観客でしたが、どれも白熱した素晴らしい試合でした。ただ、試合を満喫しながらも、職業柄つい、MLBチーム名の最後にある-sの日本語標記に関心が向いてしまいました。NHK BS Channel1 MLB Postseason 2020の試合中継で提示された組み合わせ表には、Postseason参加チーム名が次のように標記されていました。(*1)


(NHK BS Channe1 MLB「ポストシーズン組み合わせ」より)


American Leagueレイズ(Rays)ブルージェイ ズ(Blue Jays)インディアンズ(Indians)ヤンキース(Yankees)ツインズ(Twins)アストロズ(Astros)アスレティックス(Athletics)ホワイトソックス(White Socks)National Leagueドジャース(Dodgers)、ブルワーズ(Brewers)、パドレス(Padres)、カーディナルス(Cardinals)、カブス(Cubs)、マーリンズ(Marlins)、ブレーブス(Braves)、レッズ(Reds)

()内の英語表記ですが、正式のMLBチーム名には本拠地都市名が明記され、 例えば、RaysはTampa Bay Raysになります。MLBチーム一覧(*2)に、MLB全チームの英語表記とカタカナ表記があるので参照してください。(*3)

「ドジャース、ヤンキース、ブルージェイズ、ツインズなどなどの[ス]と[ズ]・・・英語複数接尾辞-sの発音との違い」(2)に続く


本記事に関連し拙稿「なぜDodgersっていうの?英語一口メモ」もお読みください。


(*1)いかなる言語でも借入語の発音、表記は、その言語の発音と表記の体系に基づきます。日本語からの英語への借入語、例えば、karateの発音は、Merrium-Websterで聞いて見ると、/kə-ˈrätē/「クウァラティ-」ですね。1968年に“Are you good at karate?”と質問され、筆者は戸惑いました。これらはみな言語構造の違いによるもので、後述しますが、言語学の観点からは、発音、表記を改める必要はありません。
(*2)Selectionより。
(*3)関連して、日本のプロ野球チーム名もチェックしてみてください。[CL]ジャイアンツ(Giants)、ドラゴンズ(Dragons)、タイガース(Tigers)、ベイスターズ(Bay Stars)、カープ(Carp)、スワローズ(Swallows)、[PL]ホークス(Hawks)、ライオンズ(Lions)、マリーンズ(Marines)、ファイターズ(Fighters)、ブレ―ブス(Braves)、ゴールデン・イーグルス(Golden Eagles)。また、 アメリカン・フットボールは、NFL Japanで、バスケットボールはNBA Japanでそれぞれのチームのカタカナ表記を検索できます。

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