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音楽・ダンス・芝居を誰もが楽しめるように、舞台をつくる人は何をすればいいんだろう?

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書籍の一部の紹介を通して「鑑賞サービスって何」の疑問にこたえます。第1回は、3つに分けられる鑑賞サービスのなかの1つ、情報や場所に人を“つなぐ”サービスの具体例をご紹介。[本書第5章・1節より]

舞台第5章

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1 鑑賞サ ービスの種類

 鑑賞サービスとは、より多くの人が舞台芸術を鑑賞できるようにするための工夫です。鑑賞サービスは、次の3つに分けられます。

  ①「情報や場所に到達するまでの接続/移動」
  ②「鑑賞時の情報」
  ③「意思疎通のためのコミュニケーション」

 この3つのサービスをトータルにデザインして提供することで、だれもが参加できる環境をつくっていきます。

 大切なのは、3 つのサービスを総合的にみることです。

 移動障害のある人のためにスロープを用意したからといって、情報障害のある人たちが公演内容をより理解できるようになるわけではありません。字幕や手話といった情報サービスを充実させても、それを必要とする人が一人も来なかったという結果になることもあります。コミュニケーションのサービスがなかったために、残念な気持ちで帰ってしまう人がいるかもしれません。

 ここでは、3 つの鑑賞サービスの具体的な例をいくつか紹介します。

①「情報や場所に到達するまでの接続・移動」サービス

 公演情報を受け取り、自宅や施設から劇場・ホール、客席に到達するまでのサービスをさします。

■ 情報を届ける―届け方を工夫する

 障害のある人のなかには、劇場や文化施設が一般的に実施している広報手段では情報が届かない人もいます。

 まずは、地域の障害のある人たちが、「どのようにして情報を手に入れているのか」をリサーチする必要があります。そのうえで行政の福祉課や社会福祉協議会、地域の福祉団体などと連携し、直接情報を届ける方法を探すことが必要になってきます。

 一般的なチラシでは、読めなかったり、見られなかったりして情報が届きにくいこともあります。届ける先に応じて、届きやすい形に変える工夫も必要になります。

■ 点字チラシ―情報の掲載順序に気をつける

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 視覚障害のある人に情報を残すために、点字チラシを作成して情報を届けるという方法があります。留意しなければならないことは、視覚障害者だからといって点字を読めるとは限らないということです。(中略)

■ 音声コード付きチラシ―Uni-Voice の活用

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 音声コードは、日本で開発された新しい技術です。印刷物に記載された文字情報を約2㎝四方の高密度二次元コードに変換させたもので、専用の読み取り装置を使用することで、コード内に記録された情報を音声で取得することができます。
 読み取り専用装置で読み取るコードを「SPコード」、スマートフォンなどのアプリを使用して読み取るコードを「Uni–Voice」といいます。(略)

■かんたんチラシ―読める漢字で書かれているか

 発達障害や知的障害のある人のなかには、難しい言葉や表現、漢字が苦手という人もいます。そこで、使用する漢字を小学2年生程度で習う漢字までにしたり、漢字にルビを振ったり、できるだけ簡単な言葉や表現にした「かんたんチラシ」をつくることで情報が届きやすくなることがあります。マークや記号、ピクトグラフ(絵文字、象形文字)を活用するのも有効です。

● 参考リンク →常用漢字チェッカー

■白黒反転―書体にも配慮する

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 ロービジョン(弱視)の人のなかには、白黒が反転している文字のほうが見やすいという人もいます。また、明朝体よりもゴシック体のフォントのほうが読みやすいという人もいます。

 白黒反転のチラシやキャプション、ホームページをつくる場合、単純に白黒を反転するだけでなく、フォントも可読性や視認性の高いものを選び、拡大字を選べるようにすることで、より伝わりやすい情報に変わります。

 情報を届きやすい形に変える工夫を紹介しましたが、ポイントは、必要に応じてそれぞれチラシを別につくることです。一つのチラシに、ルビや点字、白黒反対、拡大字などの要素を盛り込んでしまうと、結局はだれにとってもわかりにくい、情報が伝わりにくいものになってしまいます。

第1回の抜粋はここまでです。第2回は第4章より基本的なスキルをご紹介。

■目次の詳細

『障害者の舞台芸術鑑賞サービス入門―人と社会をデザインでつなぐ』
 南部充央著・A5判ソフトカバー・定価2400円+税・NTT出版

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舞台芸術鑑賞サービスデザインとは


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