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日経NEEDSの日本経済予想モデルアップデート

2024年度、2025年度ともに低インフレ・低成長にとどまるのか


日経NEEDS予想モデルアップデート

 日本経済新聞が運営するNEEDS予想モデルが、最新の経済統計データを織り込んで、アップデートされた。
 今回の予想では、2023年度の名目GDP成長率4.9%、実質GDP成長率1.2%となっている。足元は、物価上昇が響いて実質GDP成長率が抑え込まれていることになる。GDPデフレータが3.7%ということで、近年にはない高い物価上昇ということにはなっている。
 しかしながら、2024年度には早くも物価上昇が収まり、名目GDP成長率2.5%に対して、実質GDP成長率1.2%、GDPデフレータ1.3%という予想になっている。また、今回から2025年度の予想も発表されているが、こちらも、実質GDP成長率1.0%ということで、経済規模の拡大は限定的ということになる。
 2024年度からインフレ率が落ち着くとしたら、金融政策を引き締め転換する必要性が低いということになるが、日経新聞などの最近の論調では、引き締め転換を推奨しているように感じる。この点に関して、私は非常に強い違和感を持っている。

足元の経済は拡大基調

 足元の状況については、経済の拡大基調が確認されている。個人消費は、2023年度1.2%増加し、コロナ禍からの立ち直りが続くものと予想されている。コロナによる消費抑制の反動という面もあるが、個人所得の伸びが本格化していることも見逃せない。連合の集計によれば、2023年の賃上げ率は平均3.58%に達し、1993年以来30年振りの高水準となっているとされる。物価上昇に完全には追いついていないが、企業側にも賃上げマインドが浸透しつつあることは、前向きに評価される。
 また、設備投資も積極化している。2023年度の設備投資は、前年比1.5%の伸びが予想されている。2022年度の伸び率2.4%からすれば多少低くはなるが、経済全体の成長を牽引する要因ではある。また、2023年度は、公共投資も前年比2.7%増が見込まれることも、成長要因の一つとなっている。
 さらに、円安の好影響がはっきりと見えている。インバウンド需要も含めて輸出の伸びが鮮明になっている。2023年度の実質輸出の伸びは、2.1%増と予想されている。海外景気の落ち込みがあるものの、円安効果とインバウンド効果が上回るものと見られる。
 インバウンドについては、中国からの観光客がほとんど期待できないものの、欧米も含めた他地域からの訪日客が急増しており、コロナ前の水準の7割程度まで戻っている。このまま順調に進むと、2024年度には史上最高の訪日客数を記録する可能性も出てきた。むしろ、受け入れ態勢の整備が追い付かないことが、インバウンド需要取りこぼしを招くリスク要因として意識されている。
 海外経済の景気後退は、2023年末がボトムとなって、回復傾向に入るものと見られている。インバウンド需要の拡大も貢献して、実質輸出については、2024年度は2.8%増を見込んでいる。
 海外経済については、ヨーロッパと中国の不振は続くものの、インドなどのグローバルサウスの成長は顕著である上に、アメリカの景気が底堅い動きを示していることもあり、世界同時不況といったような、急激かつ大幅な景気後退の可能性は限定的と考えられる。

2024年度以降の経済展望

 2023年度は、インフレの高進があり、日経NEEDSの予想モデルにおいても、GDPデフレータが3.7%になるものと想定している。しかしながら、2024年度はGDPデフレータが1.3%となり、ディスインフレの状況に移行するものと見込まれている。物価の定義次第ではあるが、このデフレータの予想値は、政府・日銀の掲げる物価上昇率2%程度を下回る水準である。
 物価は落ち着く一方、経済の拡大は続くものと見られる。NEEDSのモデルでは、2024年度の実質GDP成長率について、2023年度と同水準の前年比1.2%の伸びを予想している。
 その予想モデルで注目されるのは、公共投資の伸び率が、年率1.0%のマイナスとなっている点である。早くも緊縮型の財政政策に転換するものと見込まれているためであろうか、公共投資の抑制を織り込んだ形になっている。

今はむしろ積極財政を進めるべき時期

 日本の社会インフラは、老朽化、経年劣化が目立つものも多く、積極的な公共投資によって、さらなる充実を図ることが求められていると、私は考えている。また、せっかく好循環に入りつつある日本経済の足取りを、さらに確かなものとするためにも、積極的な財政政策を実行することが望ましいと見られる。
 現状の財務省の主張や岸田政権の振る舞いを見ていると、緊縮型財政志向が明らかではあるが、今はそのタイミングではないであろう。財務省は、隙あらば増税という姿勢を崩していないが、日本経済の勢いを削ぐような政策を許すべきではないと、私は主張するものである。

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