見出し画像

人工知能プロジェクトマネージャー試験対策 - ⑦:分野F:プロジェクト遂行能力 編 -

こんにちは。
一般社団法人 新技術応用推進基盤 公式note編集局です。
私たちのnoteでは、AI・DX活用や新規事業の創出をテーマとして、技術と市場の両面について情報発信しています。

 今回は、当団体が提供している資格試験「人工知能プロジェクトマネージャー試験」の「分野F:プロジェクト遂行能力」について、解説と対策を行います。


 本試験の中で、分野E~Gはサブテーマととらえられており、配点も高くはありません。しかし、合格を目指すうえで、また基本的な知識を得る上ではこちらもおさらいをして頂ければと思います。

 本有料noteでは、分野Fの解説と対策を掲載しています。合格水準の点を取る為に、また該当分野の学習者への情報提供の為に、また「AI(機械学習)に用いる技術的な知見」について学習する参考に、活用して頂ければ幸いです。

 なお、人工知能プロジェクトマネージャー試験は分野A~Gまでの全7分野で構成されています。各分野に加え、はじめに・参考資料リストなど全体を書籍としてお読みになる場合は、ぜひ公式の電子書籍版のご購入もご検討ください。
 noteから分野別に購入するより、金額的にもお得になっています。

 また、全分野共通の前提理解について確認したい方は、ぜひ無料で公開している下記のnoteもご覧ください。また、他の分野についてもnoteでご覧になることもできます。

【ご注意事項 ※ 必ずご購入の前に確認ください】
本有料noteは、人工知能プロジェクトマネージャー試験 公式テキスト「AIを活用する技術を学ぶ」より、第6章部分を抜粋したものです。
公式テキストをご購入済みの方は、同内容ですのでご注意ください。また、まえがき、試験概要、おわりに、参考文献リストを参照したい場合は、noteからではなく、公式テキストをご購入ください。

本書の著作権等の権利は一般社団法人 新技術応用推進基盤および著者にあります。無断で複製、転載、販売、公開等することは、有償・無償に関わらず一切認めておりません。権利が侵害された場合、法律に基づいて処罰される可能性がございます。






第6章:分野F「プロジェクト遂行能力」

「プロジェクト遂行能力」とはなにか

 分野A-Eで解説したように、「目標を決め」「統計的に適切な手法で」「課題を乗り越えてモデル化し」「システム的に正しく実装」していくことで成果は生まれていきます。この一連の仕事を1人ですべて行うことは現実的ではなく、実際の仕事ではチームを動かし・導いて、様々な困難を乗り越えて職務を全うしていくことになります。

 「組織の中で成果を出す」「チームで仕事を成し遂げる」ことを実現しようとすると、技術的な観点とはまた別次元の様々な問題に直面します。
 本分野では、プロジェクトの組成から進行・完了まで、組織人であるマネージャーがAIを用いて成果をあげようと行動したときに起こりがちな課題とその解決方法について説明していきます。
 一般社団法人新技術応用推進基盤が定義する「プロジェクト遂行能力」とは、「自身がマネジメントするプロジェクトの特性を鑑みて、発生しがちな課題を予測し、可能な限り先回りして解決しつつ、避けられなかった場合も落ち着いて対処できる」ことを指しています。技術的にモノづくりに必要な能力だけではなく、主として人間が集まって仕事をすることによって起きがちな問題について、プロジェクトの進行に応じてどのようなものがあるのか理解し、少なくとも一般論としてはどのように対処すべきかを知っておく必要があります。(≒ ヒューマンスキル)
 このヒューマンスキルの土台の上に、テクニックとしてのマネジメント方法や便利なツールの活用方法についての知識を積み上げましょう。

 プロジェクトには困難がつきものであり、なんの波風もたたずに完成することはありえません。さらにその波風は、ディティールを見ていけば人の数だけ・組織の数だけ存在しています。百戦錬磨のマネージャーであっても、新しいプロジェクトに挑めば、常に新しい困難にも挑戦しなければならないのです。苦労をすることは覚悟の上となりますが、少しでもその困難を抱えるリスクを避けるため、ありがちな課題について知り、自分の中の「引き出し」を増やしておきましょう。

 なお、本章に紹介することは、プロジェクト遂行上ありがちな課題であることから、筆者自身も体験してきたこと、さらに正直に申せば、その当時いま以上に未熟な自分では、適切に対処できなかった失敗と反省の記憶でもあります。
 中間管理職であるマネージャーにとって、本章に紹介するような課題に相対するとどうしても負の感情が巻き起こるのではないかと思います。例えば、「組織に足を引っ張られて、個人で孤軍奮闘している感」を強く覚えてしまう、「自分ばかり仕事をしている不公平感」を感じてしまうなどです。その結果、不満とイライラを抱えて周囲に批判的な態度をとってしまうなどもあるのではないでしょうか。
 少なくとも、私はこのような感情を体験しましたし、これが失敗や不幸につながる感情であることも体験しています。所属組織・先輩・後輩と全方位に不満の感情を抱えては、幸せに仕事などできるはずもありません。ただ内心で孤独感を深めていくだけです。
 本章を読み「引き出し」を増やすことで、少しでも自分の内側にある感情や孤独感の整理に役立てていただければと思います。

 なお、当然のことですが、マネージャー側の主観による感情が上記のようであるからとって、「本当に周囲に問題があるのか?」「本当に本人ばかり仕事をしているのか?」は別問題です。公平に言って、仮にマネージャー側が周囲に負の感情を抱いてしまっているとしても、周囲は周囲で頑張ってくれていて、誤解や誤認による感情であるという状況も多々あるでしょう。あるいは、たしかに周囲に問題があるにしても、その問題以上にマイナスの感情を抱いてしまっているといった状況もありうると思います。
 ありがちな課題をケーススタディとしてみることは、こうした状況を避けるために、客観的に物事をみる力を養うことにもつながってくれるかと思います。


 ちなみに、技術者のバックグラウンドを持つマネージャーの場合、どちらかというとこうしたヒューマンスキルよりも技術的なスキルを重視しがちな方が多い印象です。しかしマネージャー職としてリーダーを務めるなら、人間が行う仕事という側面にもしっかりと意識をむける必要があります。
 筆者の経験からいっても、現実には技術の問題よりも組織的な問題を起因としてプロジェクトが失敗に追い込まれるケースの方が多いように思います。またシンプルに技術上の問題であれば、「経験を積んだデータサイエンティスト」を外注することで、ある程度は解決に向かうことがあります。しかし組織の問題はマネージャーが責任者として解決に動かなければ永久に解決されないものです。
 一般的にいって、スペシャリストとしてデータサイエンスに従事したいエンジニアは組織の問題への関心が薄く、自らが関わることを嫌うケースがありますから、マネージャーが組織問題を放置することは優秀な部下の離反にもつながりかねません。そうなれば技術的にも対応が苦しくなっていき、チームが悪循環に陥ることになります。
 また組織の問題に対処するにはプロジェクト組成前の段階で手を打たなければいけないこともあるため、そもそも後から現場に配属されたエンジニアでは対処不可能なケースもあります。開始時点で「筋悪で負け組」なプロジェクトと思われないよう、アンテナを張ることが求められるのです。

 普遍的なプロジェクトマネジメントに関する知識やツールについては、IT産業の経験をAIプロジェクトでも活かすことができます。本分野をさらに学習したい方は、ITのプロジェクトマネジメントに関する書籍を参考とすることもおすすめいたします。




ヒューマンスキルを高めよう:進行度別にみる「ありがちな課題」への理解

 ここまでの各章で説明したように、AI開発はデータ(業務)の理解→準備→モデル開発→評価・改善→システム化という流れにそって進んでいきますが、これを大きく「企画・要件定義」→「PoC(=Proof of Concept)開発」→「商用化開発」と、プロジェクトの進行度で分けてみます。

図表34:AI開発の進行度別の起きがちな課題(筆者作成)

 筆者の経験からいうと、組織に起因する課題は、多くが「立場の違い」と「人間関係のもつれ」の2つに集約されます。しかし原因としては同じでも、プロジェクトが進行していくにつれ問題の表出の仕方は変化していくものです。例えば最初は同じ方向を向いていた上司と部下でも、「品質にこだわりたい上司」と「もうとりあえず残業をしたくない疲弊した部下」では徐々に意見が食い違っていくのは当然になります。
 したがって、ここではプロジェクトの進行度に応じる形でどのような課題として表出するのか、どのような課題が起きがちなのか整理していくことにしましょう。


「企画・要件定義」で起きがちな課題

 まずプロジェクトの立ち上げともいうべき企画・要件定義のフェーズです。ここではプロジェクトの目標を設定し、どういう状態になればその目標が達成されたといえるのか、そのために必要な要件はなにかを定義していきます。

ここから先は

21,927字

¥ 440

PayPay
PayPayで支払うと抽選でお得