度重なる性犯罪規定の改正とSNS界隈のトラブルについて
1 はじめに
ジャニー喜多川さん、伊東純也さん、松本人志さんを始め、多くの性加害報道がマスコミや世間を賑わせています。
ネット界隈も同様に、違法と強く疑われるような炎上事案を見かけることは少なくありません。
以下では、性犯罪規定の改正の流れを押さえつつ、個々の事例について述べたいと思います。
2 具体例
後でも、関連する規定のところで照会しますが、以下のような事例が確認されています。
(1)未熟な相手を狙う下劣な犯行
スマホゲームが気軽に出来る時代で、老若男女を問わず交流できるようになりました。その状況を利用して、心身共に未熟な相手に手を出してしまった事案です。
(2)上下関係を利用した下劣な犯行
元プロゲーマーであり元警察官の方で、現役講師が、生徒に手を出したとされる事案。
最近はeスポーツの専門学校が多くありますが、同様の事例は隠れて起きていると思います。
(3)配信者と視聴者の関係を利用する下劣な犯行
有名なユーチューバーだった方が、視聴者にわいせつな画像を送らせた事案。
こちらも配信者と視聴者との関係(しかも金銭の貸し借りがある)で行われた犯行です。
3 法改正の経緯と施行時期
刑法典は1908年に施行され、基本的にそのままが維持されてきましたが、昨今、大きな改正が重なりました。
(1)2017年改正(2017年7月13日施行)
これまで、女性のみを被害者に想定して規定された強姦罪が強制性交罪に改正され、被害者が男性場合であっても罰せられるようになりました。
また、親告罪とされていたのが非親告罪とされ、被害届なくとも捜査ができるようになりました。
肛門性交等も犯罪の実行行為に含まれる、法定刑が厳罰化、監護者性交・わいせつ罪の規定なども重要なポイントです。
(2)2023年改正(2023年7月13日施行)
強制性交罪等が更に改正され、不同意性交罪等に変わりました。強制したかではなく同意していない状態(不同意を形成することが困難な状態)にさせて(その状態に乗じることも含む)性交等をした場合は犯罪が成立します。
物を挿入する行為であってもそれがわいせつな行為であれば犯罪が成立します。
これまで通り13歳未満に対する行為は同意があろうと例外なく犯罪の構成要件を充足します。
13歳以上16歳未満に対する行為については、その行為者が被害者より5歳以上年長である場合はやはり犯罪の構成要件を充足します。(結局、18歳未満がした同意のある行為は犯罪に問われません。18歳以上21歳未満の行為については相手によっては同意があろうと犯罪が成立し得るということになるでしょう)
まだ十分に認知されてないように思われるのは、わいせつ目的で16歳未満に面会を要求したり性的な画像を送るよう要求する行為は、その時点で犯罪です。SNSではよく見られる行為だと思います。
また公訴時効の延長もされました。
4 違法になる行為
(1)その規定で何を守りたいのか(保護法益)
性的自由や性的な自己決定権が、その犯罪規定で守ろうとする保護法益とされています。性的な行為を行うかどうかに加え、誰を相手として行うか、ということについても自分で決めることができる(他人から強制されない)ことが大事な保護法益とされています。
また、その行為に一定の同意があろうとも、相手の年齢が低い場合はその判断自体が未熟ですから、同意があろうと無かろうと、犯罪を構成する場合が法定されています。
※拘禁刑とありますが、将来的には懲役刑と禁固刑とが一体化される予定です(未施行)
(2)不同意わいせつ罪 6月以上10年以下の拘禁刑
前述の通り、所定の行為や事由により同意しない意思等を形成させる等してわいせつな行為をした場合は犯罪を構成します。
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