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High Jumpの読書記録~medium(再読)~(ネタバレあり)

High Jumpの読書記録のコーナー!
今回読了した本はこちら!!

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相沢沙呼先生の「medium」です!!

2019年9月の発売以来、
「このミステリーがすごい!」2020年版国内編 第1位、
「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング 第1位、
「2019年ベストブック」(Apple Books) 2019年ベストミステリー、
「第20回本格ミステリ大賞」小説部門受賞、
「SRの会ミステリベスト10」第1位、
の合計5冠を達成している、素晴らしい作品です。
(画像の帯は、5冠達成前に購入したため、
上3つの賞しか書かれていません(笑))

内容は、もちろんのこと、この装丁が素晴らしく、
ジャケ買いをして、1年以上前に読了しました。
この遠田志帆さんのイラスト好きな方います?
僕は大好きです(笑)

そして、今回続編となる「invert」を購入したので、
「invert」を一番楽しめる状態で読みたいと思い、
普段は再読はあまりしないタイプなのですが、再読をしました。

話の概要です。

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなければならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。(単行本表紙裏より引用)

殺人事件に遭遇した際に、霊媒師である翡翠は死者の言葉を伝えることができ、そのおかげで犯人が分かるのだが、当然、「私は死者の言葉を伝えることができるので犯人が分かります。」などと言ったところで、警察に信じてもらえるわけがない。そこで推理作家である香月史郎が、翡翠からヒントをもらい、警察が納得できる論理を構築して、事件を解決する。という構成になっている。

主人公である城塚翡翠は、話の中で、おとなしく、少し抜けているところがあり、読者にかわいいと思わせるように描写されているが、話の終盤で、それらはすべて演技であり、目的遂行のためであれば、どんなものにでも化ける、そんな人物であることが判明する。その前の時点で読者は城塚翡翠のことを好きになってしまっているので(少なくとも自分は好きになっていました(笑))、そのときには自分も騙されたような感覚に陥ります(笑)しかし最後のエピローグでは、もしかしたら今までのすべての振る舞いが、演技ではなかったのかもしれない、と思わせる場面があり、城塚翡翠の人間味が垣間見え、さらに好きになってしまいました。(完全に踊らされてます(笑))

再読であるため、ミステリーの醍醐味である、どんでん返しなどの話のオチについては知ってしまっているので、退屈にならないだろうか、と心配しながら読み始めましたが、読み進めるうちに、「あぁ、ここが伏線だったのか」、「ここもじゃん!」、「え、まって、ここも伏線じゃん!」と話の中に散りばめられた1回では気づかなかった伏線を新たに沢山発見し、退屈どころか、査読のように熟読ができ、とても面白く、改めてこの作品の凄さを体験できました。また、ミステリー小説の再読はこんな風に楽しめるのか、と他の作品も時間があれば、再読してみたいと思いました。

自分は、読んでいる中で、印象に残ったセリフ、場面があるとそのページに付箋を貼って、読み進めているんですが、今回付箋を貼ろうとした部分に1回目に読んだときの付箋が貼ってあり、「やっぱりここは、印象に残るよなぁ」と改めて思った場面があるので、その部分を紹介しようと思います。
(以下本文より抜粋)

たった一言で、己の人生が反転してしまう瞬間というのは、誰にでも等しく訪れるものなのかもしれない。香月にも、経験があった。瞼を閉ざせば、その言葉を告げた相手の表情を鮮明に思い浮かべることができる。たった一言で、自分という人間が作り替えられてしまう瞬間は、きっと存在するのだ。
「人を殺さずにいられる人間というのは、ただその不運が訪れていないだけで、そこに特別な差はないのかもしれません」
香月は深く息を吐きながら言った。
「誰だって、ちょっとしたことで、人を殺してしまう。それを経験しないでいられるのは、ただ幸運なだけなのでしょう。僕たちは、ただそんな違いだけで、生きているのかもしれない。」

もちろん、自分は人を殺めたことがないので、実際に人を殺してしまう人が、その瞬間に何を考えているのかどうかは分かりません。ただ、ニュースなどを見ていると「頭にカッときて、衝動的にやってしまった」的な供述を度々見ることがあります。その人自身が、自分は人を殺す人間である。と自覚しているのであれば、人を殺してしまうのかなあと思いますが、たいていの人は、自分は人を殺すはずがない。と思っているはずです。そんな人であるのにもかかわらず、衝動的に人を殺してしまうことがあるのだとしたら、香月の言うとおり、自分たちはまだ、その不運が訪れていない、ただ幸運なだけであり、衝動的になってしまうことが起きれば、同じようになってしまうのではないか、と考えると少し怖くなります。またこのセリフを香月が言っているところにも、重みがあるように感じます。

作品としても面白く、考えさせられるところも存在し、再読しても伏線に気づかされ楽しめる。そんな最高な作品です。
まだ未読の方は是非!
これを超えてくるなんて想像がつかないのですが、
超えられるんでしょうか(笑)
というわけでこのまま「invert」を読んでみようと思います。
翡翠ちゃんに、また会えると思うとうれしいですね(笑)
ではまた次回、バイバーイ

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