【クリエイティブディレクター 佐藤可士和氏について】#12

今回は、日本を代表する有名クリエイターの佐藤可士和氏について投稿します。個人的にクリエイターの面白いところは会社単位だけではなく、一人称でより活躍できるところ。そして、制作物には、全てロジックが背景にあるところです。

ユニクロやTカード、セブンイレブンなど普段日常で何気なく利用しているものですが、デザインやブランディングに佐藤可士和氏が携わっており、興味をもったので投稿に至りました。

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佐藤可士和について

1965年東京生。クリエイティブディレクター。多摩美術大学グラフィック科卒。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年「SAMURAI」設立。
ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発まで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面により高い評価を得ている。
グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエイター。
主な仕事に国立新美術館、東京都交響楽団の新ボールマークデザイン、ユニクロ、セブンイレブン、楽天グループ、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、ふじようちえん、カップヌードルミュージアムのトータルプロデュースなど。近年は武田グローバル本社、日清食品関西工場など大規模な建築プロジェクトにも従事。文化庁・文化交流使(2016年度)として、日本の優れた商品、文化、技術、コンテンツなどを海外に広く発信することにも注力している。
著書に『佐藤可士和の超整理術』(日経ビジネス文庫)。『聞き上手話し上手』(集英社)、『佐藤可士和の打ち合わせ』(ダイヤモンド社)ほか多数。毎日デザイン賞、東京ADC賞グランプリ、東京TDC賞金賞、朝日広告賞グランプリ亀倉雄策賞、日本パッケージ大賞金賞ほか多数受賞。

https://creatorsmap.jp/creator/design/43.html

佐藤可士和の55年の歩みから見る、ヒットの根幹

クリエイティブの可能性は無限だと感じた、音楽の力
音楽は独学で、楽譜も読めないし書けない。なのに「なんでつくれるんだろう?」と考えた時、絵を描くプロセスとまったく同じ思考回路で曲をつくっていたことに気がついたんです。絵やデザインのことは美大に通っていたのでロジカルに理解していました。テーマを決め、コンセプトを考え、視線誘導によって見せ場を設定する。その考え方で曲もつくっていたのです。このメロディを引き立たせるためには、この音を入れたほうがいいとか、このフレーズの繰り返しの後に転調して世界観を変えることなどが、色や形を操って絵を描くことと同じだと悟った瞬間、クリエイティブの可能性は無限だと感じました。
デザインもグラフィックだけじゃなく、空間、ファッション、立体、何でもできる気がした。それが今の活動のベース。

博報堂時代の最大の収穫
僕が考えたイメージやアイデアを商品や企業に付加して、広告はつくるものだと思っていました。しかし大貫さんは、広告は自己表現じゃないんだと。その後生まれたのがホンダのミニバン「ステップワゴン」(’96〜’04年)の広告。家族のクルマという本質を摑む作業を徹底的に行った。結果、子供とクルマで出かける楽しい世界観を表現した「こどもといっしょにどこいこう。」という広告が誕生。「答えは相手のなかにある」ということに気づけたことが博報堂時代の最大の収穫です。それまではプロジェクトによって上手くいったりいかなかったりと波があった。理由がわからず5年間ほど悩んでいましたが、それに気がついてからすべてが上手く回り始め、仕事の評価もガラリと変わりました。

クリエーティブな仕事とは何か

クリエーティブかどうかは、マインドの問題
クリエーティブのスタイルとして、結局、本質は何なのか、そう見続け、考え続けることで答えが必ず見つかっていくと思っている。枝葉を徹底的にそぎ落とし、真剣に見ようとしないと本質は見えてこない。何が本質かと考え抜かないと、それに突き当たらない。若いうちから、考え続ける習慣をつけるのが大切だ。

言語化できないのは、わかっていないから

言語化は重要で、言語化できないのはきちんとわかっていないからだ。漠然と感じていることと、わかっていることとはずいぶん違う。完全に理解し把握していないと、言語化ができない

デザイン経営

■ユニクロの事例
「ユニクロ」のロゴは、「カタカナ」でなければいけなかった。

佐藤が手がけたアイコニック・ブランディングの代表例が「ユニクロ」だ。2006年のニューヨーク旗艦店オープンに伴い、アルファベットとカタカナの2種類で展開されたロゴの登場は、実にセンセーショナルだった。

「ユニクロの服の本質から導き出した、『美意識ある超合理性』というコンセプト自体がアイコニック。この考え方をベースに、ロゴや店舗を展開していきました」

ニュアンスを排した骨格だけのシンプルなロゴは、まさにコンセプトを具現化したデザイン。ニューヨーク旗艦店のディレクションというグローバル戦略の依頼だったため、“日本発”を強く意識したという佐藤だが、カタカナのロゴに大きな意味があったという。

「アメリカ生まれのカジュアルファッションを、日本で再解釈して世界へ発信するという意図がありました。外国語の変換に使うカタカナでロゴをつくるという、コンセプチュアルな表現が重要だったんです」


■楽天の事例

佐藤が手がけた「デザイン経営」の最初の実例が、楽天のブランディングだ。始まりは2003年というから、18年も前からの取り組みとなる。

「社長の三木谷浩史さんは、当時からブランディングやデザインの力の重要性を実感されていました。ビジョンを実現していくために、一緒に挑戦してほしいと言っていただきました」
そのビジョンとは、グローバルイノベーションカンパニーであり続けるということ。

ロゴは時代に合わせて随時アップデートし、2018年にはグローバル統一ロゴにリニューアル。物事の始まりや「No.1」を意味する漢字の「一」をあしらったデザインには、次のステージに向けた挑戦への決意が込められている。

デザイン経営の一環としてつくられた、「楽天デザインラボ」の果たす役割も大きい。「楽天グループ全体のデザインクオリティを高め、デザインを資産として蓄積していくことで、ブランドの価値最大化を目指したい」という佐藤の提言により、2018年に立ち上げられた社内のデザイン組織だ。楽天のブランディング当初から経営に深く関わってきた佐藤は、企業がデザイナーに発注するという従来の関係性をアップデートした。


■セブンイレブンの事例
セブン-イレブンでは、日常に溶け込むデザインで消費者の心をつかんだ。
既に1700以上あったアイテムは、ロゴもパッケージもさまざまなタイプが混在。そこで、すべてのアイテムを整理し直すことから始め、全体のデザイン戦略を再構築することにした。

佐藤が目指したのは、日常にしっくり馴染むデザイン。一般的なナショナルブランドの商品は、店頭で目立たせるため派手なパッケージが多いが、家庭に持ち帰ると強すぎて浮いてしまいがちだ。一方、価格や流通面で優位なプライベートブランドは他社との差別化を図る必要がないため、家庭の空間に溶け込むシンプルなパッケージにすれば、上質感を求める時代のニーズに合致するのではないか。

さらに、空前のヒットを記録しただけでなく、人々のライフスタイルまでを変える社会現象となったのが「セブンカフェ」だ。同社は過去にも複数回コーヒー販売にトライしていたが、佐藤は「セブンプレミアム」の一環として同じアプローチを導入。シンプルで洗練されたコーヒーマシンやカップをデザインし、街やオフィスで手にしてもしっくり馴染むよう配慮した。味へのこだわりも徹底し、100円でおいしく飲める本格派の提供を目指して2年がかりで開発。淹れ立てのコーヒーをコンビニで気軽に買うという新しいスタイルは瞬く間に浸透し、累計販売数は2019年2月で50億杯を突破した。

これからのデザイナーに必要なこと

成功するまでやる、そうすれば失敗しない
12年ほど取り組み続けている今治タオルは、産地が消滅しそうだった危機的な状況を本当に復活させることができました。最初の3年間は知名度は上がっても、売上は伸びなかった。それだけ見れば失敗に思えるかもしれません。でも、いろんな仕組みやブランドコミュニケーションの戦略を地道に考えて、予算も少ないなか、諦めずにやっていくことで、「タオルといえば今治」というまでになったんです。

これからのデザイナーに必要なこと
よりオープンマインドで領域を横断する、もしくは統合的に取り組むことが大事だと思っていて、全体を俯瞰してデザインという考えができないとダメだと思います。世の中ではもっと、テクノロジー×デザイン×ビジネスみたいに、かけ合わさっていることが求められていて、デザイナーはそういうことで問題を解決して、世の中をさらに良くしていく仕事だと思っています。だから、なるべく多くのことに興味を持っていたほうがいい。僕も経営とか経済は美大生のときにはまるっきり興味なくて、すごいクリエイターになるんだと思っていましたが、いつの間には経営みたいなこともやっています。経営もしているから、ここはもったいないよねとか、ここは予算をかけてドーンといくべきでしょとか、そういう感覚が独立したときに生まれました。

デザインとは、形だけ作る仕事ではないから、経営の感覚も入らないとデザイナーはできないんです。それがないとユニクロや楽天、セブン-イレブンなどのブランドの仕事はできません。だからこそ興味のあることはなんでも視野に入れておいたほうがいいですね。

別の投稿でも記載しましたが、デザイナー(クリエイター)も言語化能力課題解決力が重要です。

また佐藤氏の言葉通り、経営視点もないと”本質的なデザイン”は作り出せないと思います。いろいろなもの興味をもち、自分のフレームワークを作ることができれば様々な領域で代替することができ、よりよいものが創れると感じます。

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