【テキスト版】 自然栽培で農業維新
NPO法人岡山県木村式自然栽培実行委員会 理事長の髙橋啓一さんとのご縁をいただき、今夏7月に開催しましたNSPフォーラム2022 − 空ばかり宇宙でない、人の身体も土も宇宙だ −にたくさんのあたたかい反響をいただきました。当日ご参加くださった皆さん、アーカイブをご覧くださった皆さん、ありがとうございます!
当日の健康立国対談 −自然栽培で農業維新−を髙橋さんのご友人が文字起こしてくださいました。
上記のnoteページと合わせて、ご活用いただけましたら幸いです。
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藤原 皆さんこんにちは、この番組は認定NPO日本再生プログラム推進フォーラムの健康立国対談です。きょうは「自然栽培で農業維新」と題しまして、NPO法人岡山県木村式自然栽培実行委員会理事長の高橋啓一さんに、いつものように当NPO理事長の藤原直哉がお話を伺います。
高橋さんおはようございます。どうぞ一つ今日はよろしくお願いします。まずはじめに高橋さんがやっておられます、自然栽培ということでありますけれども、自然栽培とは何かについて簡単にご説明していただけますでしょうか。
高橋 青森県弘前市の木村秋則さんが、自分がリンゴを作る過程で奥様が農薬でアレルギーになって、もう本当に厳しい状態になったので、何とかして農薬を使わない栽培方法を探していて巡り会ったのが、肥料・農薬を使わずに育てる栽培方法だったのです。最初は「自然農法」と言っていたのですけれども、「自然農法」というのは商標登録を取った方がいらっしゃって、「自然農法」は使わないでほしい、ということだったので、木村さんが「自然」と「栽培」をミックスして「自然栽培」という言葉を作られて、木村さんがされているので私たちは「木村式自然栽培」という名前をつけました。それは肥料・農薬・除草剤を使わずに育てるという栽培方法です。
木村さんはリンゴを育てるのに11年かかりました。11年の間にいろんな作物を育てたのですけれども育たないのは韓国産アザミだけだった。あとは全ての作物は全部育ったということで、木村さんによると、全ての作物を育ててみて、全部の作物を育てることができるようになったから、リンゴも実らしてやるぞと、神様がおっしゃったとしか思えないほど、木村さんは自然栽培に自分の人生をかけてこられたわけです。
ご存じの方もいらっしゃると思いますけど、自然栽培で、リンゴがどうしても実らない、生活もできない、親戚からも、さんざんいろんなことを言われて、途方に暮れて、岩木山に登って首をつろうとしたとき、縄をかけた木がドングリの木だった。そのドングリの木が肥料・農薬・除草剤を使わないのに茂っていることに気づいて、土にヒントがあることから、土づくりをして自然栽培でリンゴを実らせることができたのです。自然栽培は木村さんが作られた農法です。それをわれわれは木村さんからご指導を仰いで、肥料・農薬・除草剤を全く使わずにおコメを作って、今年で13年目になります。以上です。
藤原 すごいお話でございますね。木村秋則さんについては多くの方がご存じと思うんですけども、普通ですね、特に果物は肥料や農薬をちゃんとかけなきゃだめですと、農協の方は指導していると思うんですけども、それが農薬・肥料・除草剤なしで育てるというのは凄いことだと思いますが、もともと高橋さんは農家でいらっしゃったのですか。
高橋 私の家は代々農業でおコメを作っておりまして、私が4代目で100年くらいずっとコメ作りをしてきました。私の代になって学校に入ってから商売を始めようということで、私の兄と一緒に「すし遊館」という回転ずしをスタートして、いま46年目になります。気がついたら回転ずしの中で、現役の経営者では最古参になりました。いま71歳になりますけれども。私どものお店でその自然栽培のおコメを使わせていただいております。以上です。
藤原 この100年間、岡山で農業を営んでいらっしゃったということですが、この100年間の農業を振り返って、いろんな変遷があって、今日の自然栽培に至っていると思うのですけども、そのあたりの推移をちょっと簡単にご紹介いただけますでしょうか。
高橋 はい。私は幼稚園の頃からずうっと田植えを手伝っておりまして、当時はもう全部手作業でしたよね。手で植えて、手で刈って、脱穀をして、と。それがどんどんどんどん機械化が進んでいって、今の肥料や農薬、除草剤が出来て、コンバインも大型になって、もう私たちの身近にあるコンバインを見ると、あれは戦車ですよね。ところが実際に私のところで収穫しているところは1反、2反ですから、機械が運べないくらい不釣り合いのものになっているんです。
今、本当に機械化が進んで、ただそのためにものすごい投資をしなければいけない。その割におコメの価格が下がるということで、もうおコメは全く袋小路に入っていて、あともう全然作らなくなるのが時間の問題になるぐらいまで、おコメの問題といいますか、日本の農政はいびつな状態になってきています。そういうことで、もっと付加価値の高いおコメを作ろうということで始めました。
藤原 しかし、ずうっと従来の農業でやって来られた高橋さんにとって、まったく新しい農法を試すというのは、いろんな意味で勇気と覚悟がいったんじゃないかと思うのですが、その辺はいかがでしたでしょうか。
高橋 私、最初に回転ずしをスタートした時には何も知りませんので薄利多売だったわけですね。安く買って、安く売るということで、100円均一で始めたんです。けれどもご存じの通り100円均一回転ずしは、大きな企業4社に集約をされています。われわれ地方の回転ずしは、それに差別化をはかっていかなければならないということで、高く買って高く売る、高品質のお寿司を提供しようとしているわけです。そしてご存じの方もいらっしゃると思いますが、すきやばし次郎という方が「お寿司はタネ4分にシャリ6分だ」ということをおっしゃって、シャリつまりご飯の方の力が6割だとおっしゃっているということで、付加価値の高いおコメを使っていこうとしたときに、たまたま木村さんとのご縁があったので、木村さんのご指導をいただいて自然栽培を始めたということです。
一般的に低価格の回転ずしは、客単価が1,000円前後だと思うんですけど、私どものすし遊館では、今2,600円近いんです。日本でも一番高い部類のグルメの回転ずしになると思います。それでもずいぶん繁盛させていただいています。お客様から見ると「そんなに高くない」というイメージの評価をいただいているんです。
藤原 そういたしますと、ご自身で回転ずしのお仕事をするなかで、それにふさわしいおコメをお作りになりたいというモチベーションがあったということでよろしいでしょうか。
高橋 はい、そうです。
藤原 すごいですね。しかし実際、例えば「今日からもう肥料を買いません。農薬は買いません」といったときに、いろんな軋轢もあったかと思いますが、それはいかがでしたでしょうか。
高橋 私たちはいま、岡山県の全農・JA・パールライスさんと一緒になって取り組んでいるんですけど、いま全農さんが肥料・農薬・除草剤を売られているわけですけど、私が全農の方に困るんじゃないのと言ったら、私たちの仲間が増えていくスピードよりも減っていくスピードの方がはるかに大きいというんです。つまり今のところまったく問題ありませんというのですね。
藤原 すごい話ですね。それでも初め、例えば無肥料・無農薬に切り替えて1年目なんていうのは田んぼの様子はどうでしたか。切り替えて、すぐ収穫はしっかりできましたか。
高橋 最初に木村さんの話を聞いて、本を読んで、自然栽培で肥料を使わずにスタートしたんですね。6月の10日ぐらいに田植えをするんですけど、8月になっても苗が大きくならないんです。それで私は、これやっぱり肥料をやらないから大きくならないなと思って、隣の方がちょうどJAさんのOBの方だったので、相談するとそりゃ肥料やらんとダメだろうと言われて、穂肥といって穂が出る前に蒔く肥料があったので、それを蒔いたらびっくりするくらい大きくなりましてね、収穫時になったら、その方が「啓ちゃん、今年は豊作だなぁ」と言われて、私もやっぱり肥料の力はすごいなあと思ったんです。
ちょうどその年の11月に木村さんが書いた本が出ているということで、その本を読んだら、田植えをして50日間は大きくならないというんですね。根が張るまで、根が張って大きくなるチャンスが来た時、ちょうど50日間くらい経って一気に大きくなるんだというのです。
その50日間は胃が痛くなるぐらいまで待たなくてはいけないということが本に書かれてあったんです。なんだこれは肥料のせいで大きくなったんじゃなく、根が大きくなったから、それで成長したのだということを知って、私は自然栽培でやれるという確信を持つことができたんです。
たまたまご縁があって、その年の11月に福山で木村さんの講演があり、お話を聞きに行ってからのご縁です。
藤原 そうですか。無農薬ですけどね。虫とか病気とかは出なかったですか。
高橋 今12年になりますけど、一回も出ていません。皆さん、イモチ病というのはご存じだと思いますけど、窒素過多で出るんですね。
藤原 なるほどね。
高橋 だから窒素肥料をやらなければ出ないんですよ。農業試験場の方が私たちの圃場に来て網ですくうんですね。するとクモがたくさん取れるわけです。これだけクモがいると害虫は大丈夫です、というんですよね。だから逆に農薬をやるとまずクモが死ぬのです。それで害虫が増えていくわけですよね。だからわれわれの圃場は、今までいわゆるイネにつく病気というのは一切ないのです。
藤原 驚くべきことですね。クモが繁殖して害虫を排除してしまう。
高橋 それで木村さんもおっしゃっていますが、われわれの圃場は、中に入るときは長袖を着て入らないといけない。木村さんのリンゴの葉もそうですけど、すごく硬いんです。われわれのイネの葉も硬いですから皮膚が傷ついてしまう。それほど作物っていうのは自分の力を出すと、ものすごく硬く、力強くなるわけですよね。
藤原 イネって柔らかいイメージがありますけど、硬いんですね。
高橋 皆さんご存知でしょうか、ホウレンソウは真っ青ですよね。
藤原 そうですね。
高橋 自然栽培でつくる肥料をやらないホウレンソウは薄緑なんです。本来、ホウレンソウは薄緑だけど、薄緑というのは、周りにクチクラといって薄い保護膜を作るんです。ロウのようなものなんですけれども。今のホウレンソウは肥料をやってますから、クチクラの生産が間に合わないんです。間に合わないから真っ青になるんです。自然栽培のホウレンソウは80度以上のお湯につけると、そのクチクラが溶けて、薄緑から真っ青になるわけです。
藤原 なるほどね。
高橋 だから今のホウレンソウは真っ青だからすぐわかるんです。自然栽培でないというのは一目で分かります。木村さんもおっしゃっていましたけど色で分かるんです。
藤原 今われわれ一般の消費者がスーパーその他で食糧・食品買うときですね、自然栽培の比率っていうのはほんのわずかですよね。
高橋 もうほとんどないと思います。
藤原 ないですよね。
高橋 流通してないですから。1950年から比べるとミネラル分が10分の1になってるんです。
藤原 そうですか。
高橋 特に鉄分なんかもうひどいもんですよね。だからミネラルを取ろうと思って皆さん方が近所のスーパーとかに行っても一切売ってないです。だから今ミネラル不足なんですよね。それで今子どもたちにいろんな病気が出ているんだと思います。ほんとにひどいものだと思います。
藤原 先ほどその木村さんの話の中で土づくりというのが大事だというお話があったのですが、具体的に自然栽培における土づくりというのはどういうことをやるんですか。
高橋 草を生やすというイメージでしょうかね。
藤原 草を生やす、雑草を生やすというイメージでしょうか。
高橋 そうです。そうです。「草はかさぶた」というふうに言われているんです。片野学先生(故東海大学名誉教授)がおっしゃっているんですけど、1年ずつ、草の種類が変わっていくんです。最初はセイタカアワダチソウといって背の高いものが生えてきます。背の高い分だけ下に伸びるわけです。それで土を耕すわけです。それから順番に草が生えてきて10年経つと草が落ち着いてきて、木村さんの畑のように、普通の青い草になりますね。だからあの運動場のような所をみていると草がほとんど生えてないですよね。ところが河川敷のところは草がいっぱい生えていますよね。刈っても刈っても草が生えてくるわけです。だから草を生やすことによって土の中が耕されて、多様性が生まれ、バクテリアが繁茂して、その中で窒素肥料などなまざまなものが生成される、とそのような感じですよね。
藤原 草は逆に生やして枯らし、枯らして刈る、これを繰り返したほうがよろしいということでしょうか。
高橋 そういうことです。そういうことなんです。
藤原 今までの発想と逆ですね。草なんかない方がいいと。
高橋 ああ、まったく逆です。だから昭和天皇もおっしゃっています「雑草という名の草はない。草にはすべて名前が付いている」と。草にはすべて効用があるわけですよね。
山形県の酒田市というところに佐藤秀雄さんという有機栽培を18年、EM菌までしてもうまくいかずに、そして自然栽培を18年取り組まれている方がいらっしゃるんです。15年目から1反当たり10俵取れるようになったというお話を聞いたので、昨年9月に、佐藤さんのところの田んぼに行かしていただいて、お話を聞きしたんです。その下の田んぼを見たら草がものすごいんです。私がざっと見ただけでも40種類ぐらいの草が生えているんじゃないかと思うぐらい、それが花盛りなんですね。その草たちが多様性を発揮して、要するにイネを守っているようなイメージですよね。
藤原 草はイネの敵ではないのですね。
高橋 雑草がないとイネは育ちません。
藤原 えーそうなんですか。なんかむしろわれわれは普通は逆に考えますよね。雑草がいるからイネが育たないんだ、と。
高橋 雑草も根の長さが違うわけですよね。田の草はあんまり背の高いものは生えませんから、だいたい10センチから15センチくらいまででしょうかね。イネは30センチ40センチ伸びるわけです。だからあのお互いに領分が違うんですね。だからもう全く問題ないですよ。
藤原 なるほどねえ。あと先ほどおっしゃったクモが出てくるということですけれども、これはどの時期に出てくるのですか。
高橋 いろんな時期ですよね。トラクターで田を耕した後に出てきたり、田植えをした後に出てきたり、田植えをした後に出てくることが多いです。露がクモの巣にかかると太陽が出てきたときにきらきら輝くんですよね。写真にありますけどそれは見事です。
それが一般の田んぼに行ってみて下さい、クモがいませんから、こういう光景は見られません。みんな農薬を蒔くからね。それは見事ですよ。クモの巣が太陽に反射してきらきら輝いているのは。
藤原 クモの巣の張った田んぼは始めてみました。あの自然栽培は放置農法と間違われることが多いんですけど、全然違いますよね。放置するわけではないので。
高橋 まったく違います。「イネは足音を聞いて育つ」といいます。農家の方の足音を聞いて育つというんです。放置をすると草が勝ってイネが負けてしまいますから、草だらけの田んぼになります。夫婦の仲がよくて、和気あいあいの家庭の田んぼは実りが多いんです。
藤原 ええっそうなんですか。
高橋 だから木村さんは、収穫が終わった後、みんなでわいわい宴会していると「皆さんは田んぼに感謝しましたか?収穫してすぐにお酒を飲むんじゃなくって、今年の収穫を感謝して、それから宴会をしましょうよ」って言うんです。
だから気持ちが通じるわけですね。私の倉吉の友人が自然栽培をしているのですが、2年目に倉吉に行ったときに「田んぼを見に行こうよ」と言ったら「え、田んぼに行くの」というのです。「行ったらいけんの」といったら、そんなことはないというので一緒に行ったところ、草ぼうぼうなんです。「あなた田んぼに来てないね」と言ったら、「何で分かる」という。「だって草がはえてるじゃないの」と言ったんです。だから要するに見回ってイネを元気づけやるとイネはよく育つということなんです。
藤原 それはすごいお話だ。
高橋 よく実験がありますよね。お花なんかでも声をかけると元気になる。
藤原 あります。
高橋 全く一緒です。
藤原 農作業は具体的に慣行農業とどういうところが違うのでしょうか。
高橋 JAさんの営農部長といって、JAさんで作物分野のトップの方なんですけど、そのお二人に農業日誌をつけてもらおうと「自然栽培用の農業日誌を考えて下さい」と言って、お二人にお話をしたんです。一晩考えて、なんにも書くことがないというんです。何月何日に田植えをしました。それから水管理をしました。何月何日に収穫しました。しかないわけですね。あとなーんにもすることがない、ただ見回るということなんですよ。だって手をかけてはいけないわけですから。
岡山県の大規模農家の保住さんといわれて、25町歩ほどコメづくりをしている方がいろんな農法を試したんですけどはたと困って、最後に私のところに「高橋さんやらして」といって来られたんです。1年目にジャンボタニシにたくさん食べられて、もうはたと困ったんだけど、収穫してみると1反あたり5俵獲れたそうです。5俵といったらすごいものなんです。開口一番私に、「高橋さん、これまでの私の農業は何だったんだろうか」おっしゃるんです。穂積さんは自然栽培を初めて9年目ぐらいになるんですが、その穂積さんが先だって、「高橋さん、私が何で自然栽培をしているか分かる?」って聞くんです。「何でですか」って聞いたら、「そら、簡単だからですよ」と言うです。
分かってしまえものすごく簡単なんです。あとは気持ちだけです。本当に。
藤原 草とりぐらいはしますでしょ。
高橋 いまジャンボタニシが全部草を食べてくれますので。
藤原 あ、は、は、は、ジャンボタニシが草を食べてしまう。
高橋 畦草だけです。畦草だけ刈るんですね。しかしカメムシが大きくなっている時は畦草は刈らないんです。刈ってしまうとカメムシがイネに移りますから、刈らない間はカメムシは畔に居るわけです。
いまジャンボタニシが茨城県ぐらいまで北上してると思うんですけど、ジャンボタニシがいる圃場といない圃場を比べると、ジャンボタニシのいる圃場の方が収穫が多いんです。おそらくジャンボタニシが草を食べてウンチしますから、そのウンチが窒素肥料になるんだろうなと考えています。だからジャンボタニシと上手に共存できれば農業に対してプラスになると思います。
藤原 いやあでもね、畦にカメムシがいる間は畦草を刈らないって、すごい知恵ですよね。
高橋 それはみんな木村さんが教えてくださるんですよね。
木村さんという方は、税理士免許の4まで取られていて、それからギターも自分で作り、トラクターも自分で直し、大型トラックの免許も持っているし、そういう方が11年もやっていますから、もうやることないんですよね。だから毎日図書館通いです。図書館に通って知識を身につけたんです。だから私が知らなくて木村さんが知ってる事が山ほどあります。いやもうすごい方だと思います。
ある時ね、私の兄が山口医大で医者をしてるんですけど、病理の方の全国大会を山口でするというので3,000人くらい集まった。その分科会で木村さんに講演をして欲しいので頼んでくれと言われて、私が頼んだところ、木村さんが気持ちよく受けていただいて、800人くらいな小さな分科会でお話をされたんですけど、その題目が「医食同源」なんですよ。お医者さんがびっくりするような内容でした。私もびっくりしました。あんな話までできるのかなと思って。それほど木村さんの知識は豊富ですね。ぜひ木村さんの講演を聞いていただくと、本当に感動ものです。
藤原 いま高橋さんは、その木村さんのやり方による自然栽培を広げていらっしゃるということですが、それはプロの農家さんということでしょうか?今何件ぐらいの農家の方が参加していらっしゃるのでしょうか?
高橋 いま13年目になるんですが、今年100戸の農家がおよそ100ヘクタール。イネとして4,000俵ぐらい。圃場の数は500枚くらいで作っています。
藤原 そうですか。それは1軒1軒、ある意味お誘いして加入していただいたのでしょうか。それとも皆さん「自分がやります」と言って参加されたのでしょうか。
高橋 友だちが友だちを誘うというイメージですよね。
藤原 なるほどね。
高橋 実際に、いまおコメが1,000俵足らないので、去年新聞広告で2回、生産者募集をしたんですけど、申し込まれた方は2名でした。だからやっぱり自分の知り合いの方に聞いて、それを通じて入れる方がほとんどですね。
藤原 そうですか。その入られる動機というのは特に何かありますか。
高橋 やっぱり基本的には今の稲作はもう全く赤字なんですね。だから農協に通帳をつくっていて、いつも12月は通帳がみんな赤になっているんです。ですから12月はみんな自分のお金を補填するわけです。でも自然栽培をやって初めて黒字になったというんですよ。皆さんね。
藤原 それって大変なことですよね。
高橋 その上にですね、いま肥料は70パーセント上がるです。5月末に発表して6月10日実施ですから。で肥料・農薬・除草剤代がだいたい1俵あたり3,500円かかるんです。それで私たちの岡山県朝日米が今1俵9,000円、そこから3,500円引かれますから、1俵あたり約6,000円弱ですよね。収穫は1反あたり8俵から9俵ですから、だいたい1反あたり5万円の収入です。いま1反あたり12万円の収入がないと持続できないというのがおコメづくりなんです。今でも赤字なのに、そのうえに3,500円のうちの半分以上は値上がりしますから、もう日本のコメ農家はもう危機的ところまで来ているんです。
それに平均が70歳ですから、70歳ということは65歳の人が半分で75歳の人が半分ということです。75歳の人はあと5年経ったら80です。それに機械の修理代も、この前私と一緒にやってくれている仲間が田植え機が壊れたというので修理に出したら60万かかると言われたというのです。そのうえ「今年から修理代をまた値上げさせてもらいます」と言われたそうで、次に機械が故障したら新しく買うか、修理することはせずに、もうコメ作りを止めるとおしゃるんです。日本の農家の1戸あたりが1.8ヘクタールですから、おコメでは収入が上がってきませんのでも、そういう方々はもうどんどん農業を止めていくと思います。この5年が勝負だと思っています。
藤原 そういう問題について、農水省なり農協はどういうスタンスでいるんでしょうか。
高橋 もう全く歯牙にも掛からないんです。
藤原 歯牙にかからない?!。
高橋 今ね、肥料を50パーセント減らすと補助金が出るという制度があるんです。1反あたり1,2万円でるんです。われわれ自然栽培は肥料ゼロじゃないですか。それで申請に行くとですね。私たちは最初からゼロだから、50パーセント減らしてないというのです。50パーセントにすると補助金が出るということは、50パーセントは中間的な目標で、60,70,80,90パーセントと減らしていって最終的にゼロが完結じゃないのですかというと、申請窓口の人は、私たちは最初からゼロで、今年もゼロだから減らしていないじゃないかというのです。この法律は有機化を目指す法律だから、あんたところはダメです、といってくれないんですよ。
藤原 ひどいもんですね。
高橋 ひどいでしょ、これを農水省の人がやってるんですよ。本当に信じられん私。デタラメですよ。
藤原 そうですね。有機農業というのはどんな感じなのですか。
高橋 自然栽培というのもがここにありますね。ここに一般の栽培があります。有機栽培は自然栽培に近いと皆さん思われると思うんですが、逆なんです。真反対なんです。要するに有機肥料をやっておコメを強制的に育てるんです。だから一般の肥料よりもっときつい肥料をやるわけです。
藤原 有機栽培というのはそういうことなんですか。
高橋 だからもう自然栽培と全く正反対です。こういうことを言ってどうかと思うんですけど、有機栽培のキュウリと自然栽培のキュウリと慣行栽培のキュウリを刻んでビンの中にいれて放置してると、有機栽培のキュウリは溶けます。慣行栽培のほうがまだ溶けない。自然栽培はそのままですから。それほど違うんです。皆さんビックリすると思いますね。
藤原 多くの一般の消費者の方は誤解しているところですよね。
高橋 まったくの誤解だと思いますよ。
藤原 逆に言うと有機栽培の方が慣行栽培よりよくないことが多いわけですね。
高橋 大きな声では言えませんけど、そうだと思います。
藤原 そうしますと、さきほどのコストのこともそうですが、手間がどれだけ掛かるかということも考えますと、これからは自然栽培に行かないとおコメはなかなか採算がとれないということでしょうか。
高橋 そう言っても、まず信じないですね。肥料・農薬・除草剤を使わずにおコメができると言ったら、いまの農家の方々、みんな出来ないと言います。
100年前の農家の方に肥料・農薬・除草剤を使わずにおコメが出来ますよと言ったら、きょとんとしますよ。100年前には肥料も農薬も除草剤もなかったのですから。それがいま農家の方が肥料・農薬・除草剤がないとおコメは出来ないと思っていますから、消費者は推して知るべしです。
藤原 高橋さんの圃場近くに慣行農法で農業をやっている方がいらっしゃると思うんですけど、皆さん自然栽培の農業を見てどう思われているんですか。
高橋 私の圃場を慣行農業の方が散歩コースで来られるんです。ずっと見て回られるんです。粗植で1本しか植えなかった苗がみるみる大きくなるから、みなびっくりしているわけです。それでも5年くらい経っても近所の人が誰も参加してくれませんから、私がおコメを持って行って、「こんなコメができるんです。やりませんか」と7~8軒回ったんですが、それでも誰もしないんです。
藤原 目の前で見てても。どういう感覚で皆さん見ていらっしゃるんですかね。
高橋 70歳の農家の方は、もうやってもあと5~6年で、後継者もいない。だからもう5万円、10万円もらっても、もうしないという、そういうイメージですね、やっぱり農家の方保守的な方が多いと思う。
藤原 ああ、なるほどね。
高橋 肥料をやらずに50日間が待てないですよね。だからコメを作るというよりも、もっと違う新しい環境保全のような高い価値観の方が入ってくるようにならないと農業は新しい方向に行かないんじゃないかなと思い、こうして藤原先生と「農業維新」というお話しさせていただいているわけです。革命になってしまうと命を落されたり、いろんなトラブルが起きますけど、維新というのは、自分たちが刷新していくわけですから、こうイメージだろうと思います。
藤原 若い農家の方や新規就農の方のほうが逆に自然栽培に入りやすいということがありますか?
高橋 いま岡山には県立興陽高校といって農業専門高校があって、そこは圃場も18ヘクタールぐらい持っていて、10年近く私たちの自然栽培の農業もしてくれているんです。でも卒業生は誰もやりません。
藤原 どうしてですか?
高橋 先日、私は農業関係者のところに行って話をしていたら、採算がどうなっているかということをきちっと示さないといけないと思いますということをおっしゃっていて、なるほどなぁと思いました。
いま自然栽培のおコメは農家さんから1俵21,000円で買い取らせていただいています。一般のおコメ、朝日米は9,000円なので、われわれのほうは2.3倍で買わせていただいているんです。その2.3倍のおコメがどういうふうになるのかという損益計算書をきちんと作って、農家の方に分かりやすいように示さないといけないとご指摘いただいたので、農家の方にわかやすく、もっと寄り添っていく方向をとって行こう思います。
藤原 経営者上のアドバイスみたいなことでしょうか。先ほどおっしゃったように既存のやり方ですとおコメは赤字にならざるを得ない状況にありますから、どう考えたって、赤字になるようなことを続けていてもしょうがないと思いますけどね。
高橋 いまおコメを出荷するとき価格を決めるのは、大きさと形と色と品種と産地なんですね。岡山県の朝日米の一等米とだったらいくらというふうになっているんです。でも一般の消費者が求めるているのは、それではなくて、安心と安全と味覚なんですよ。現在、安心・安全・味覚で値段が付いているおコメはないんです。
藤原 ないんですか?
高橋 おコメの価格は大きさと色と品種と産地で、安心・安全・味覚でないということはニーズに反しているわけですから、おコメの価格は絶対に上がらないんですよ。そのうえ国は備蓄米を持っているから、不作になれば備蓄米を放出しますので、お米の値段は上がりません。いまの政府のやり方では農家は絶対立ちゆかないと思いますよ。
藤原 高橋さんはお寿司屋さんを経営しておられて、自然栽培のおコメを提供しようという、同じような考えのレストランや食品関係の方はいらっしゃいますか?
高橋 私はすし屋ですからすし組合に入らせていただいて、いま岡山県すし組合の理事長をさせていただいているんです。全すし連の理事会がありますから東京へよく行くんです。そのとき何回か自然栽培の話をしたのですけど、誰もやらないんですね。要するに自然栽培のおコメを使ったからといって、お客様は来て下さらないんですよ。それに自然栽培のおコメを使うと高くつくということで誰もやらないのです。いま回転ずしもグルメになりましたけど、回転ずしが自然栽培のコメを使っているというので、皆びっくりしますよ。
藤原 採算ということがあって、安心・安全・味覚の、高いおコメはなかなか広がっていかないということなんですか。
高橋 そうですね。これは藤原先生の得意分野だと思うんですけど、今のデフレでは、損から入らないと商売はうまく行かないです。損から入ってプラスに変えていかないと。先にお客様に良いようにしないと商売は絶対だめですね。私は自然栽培のおコメを使い始めて7年目になるんですが、おかげさまですごく繁盛させていただいて、皆さんが自然栽培のおコメは違うねといってくださいます。
藤原 加えて高橋さんは自然栽培のおコメを使ったお酒とか、その他の食品も作っておられますが、どんなものがございますか?
高橋 カルビーの松尾雅彦さんという、もう3年前に亡くなりましたが、その方が私のアドバイザーで、いつも教えていただいていたのですが、付加価値の高いものを作らないといけないとおっしゃるんです。そのもので食べるのは20パーセント。だからおコメでもご飯として食べるのは20パーセントで、残りは付加価値の高い商品を作っていかなければいけないと言われて、お酒だとか、お味噌だとか、甘酒だとか、いろんなものを作っているわけです。要するに高く買って高く売るということなんですね。
藤原 そういうことですか。
高橋 今までは安ければよかった。子どもに100円のおもちゃを100個買って遊ばすか、1万円のおもちゃを1個買って遊ばすかです。安いものを買って食べてメタボになって糖尿病になるか、いいものをすこし食べるか。安いお酒をがぶ飲みしてアル中になるか、良いお酒を少し飲むか。今はいいものを少しの時代になったのですから、高いお酒を少し飲むというふうに変えていかないといけないんですね。
藤原 そうですね。ある意味では価値観の高い食生活。売り方としてはネット販売がよろしいですか?
高橋 いま私たちのところで富士産業さんが通販をやってくださっているのです。ナチュラル朝日と銘打って売ってくださっているんですけど、つい4、5年くらい前にものすごい宣伝をしていただいたんです。年間1億以上かけたでしょうか、それでも思ったほど反応が無かったんです。だからね、やっぱり私たちのような回転ずしのような商売の人が、そのお店で提供することによって、実際にそれを食べていただいて、それを家庭でも食べられられるようにしていかないと、手を出しにくいところがあるんじゃないでしょうかね。
東京で通販の方が木村さんと私に話をしてほしいというので、会員の方が400名ぐらい二人の話を聞かれたんですけど、話を聞いた直後には持って行った商品は全部売り切れたんですけど、やはり説明を聞かないとね。
自分たちが自然栽培の品物を購入することが、世の中のために役立っているという実感を持たないと、ただいいものだからというだけではあまりパワーがないと思います。
自分が高いものを買うことによって、肥料・農薬・除草剤をつかわない自然栽培農業が地球環境を守る、脱石油社会に貢献するということと、農業所得を上げて農家の方々の所得を引き上げるんだという強い意思で、高いものを買っていただくことによって広がっていくと思います。そういう価値観の高い人が、これからの世の中を動かしていくんじゃないのかなと思います。
ご存知のように大企業が、ここ20年近くで200兆円内部留保を増やしたんですよね。そのほとんどは社員を正規雇用から非正規雇用にして、残りの収益を大企業が内部留保しているわけです。内部留保ということは、石ころになっているということですよ。何の意味もない。
農家の農業所得を増やすと農家の方は家もあるし車もあるわけだから、みんな消費に回りますから、これからは農業所得を上げていかないとだめです。そのためには付加価値の高い作物をつくり、特におコメは主食ですから、このおコメをどんどん磨きをかけていくということです。
もう一つ藤原先生よろしいでしょうか。日本の農家はいま1戸あたりだいたい1.8ヘクタール。アメリカが180ヘクタール。オーストラリアが2,700ヘクタールなんですよね。だからオーストラリアの稲作はセスナ機でやっています。1キロ当たり原価が20円、30円です。日本の普通のおコメでは太刀打ちできないんです。
ところがオーストラリアも中国もアメリカも地下水でやっているので、地下水というのは2つ問題があって、一つは蒸発すると塩害が起こるんです。だから場所を移していかないといけない。もう一つは地下水は枯れるんです。
日本だけが夏に真水を台風が赤道から運んできて、冬は日本海から雪を山に置いていくわけです。この自然栽培というのは水に酸素がはいっていないといけない。掛け流しができないとできないんです。これが出来るのは日本だけです。
魚沼産のコシヒカリがなぜおいしいか、あれは雪解け水を掛け流しているんですよ。だから美味しいんです。私は見回ってきました、ずうっと斜面に植えていますから、掛け流せるんです。水が動くと水は酸素を含みますから根が伸びるわけです。だからこれからも自然栽培はもう日本でしかできないんです。
松尾さんがこうおっしゃるんですよ。「製造業というのは代々賃金の安い国に移っていくんだ。製造業が移った後は農業で生業を立てるんだ」と。一番最初フランスからイギリスに製造業が移って、フランスはパンだとかブドウだとかでワインとか、そういうのを作って生業を立てた。イギリスからアメリカに製造業が移って、イギリスは羊毛で生業を立てた。アメリカから日本に製造業が移ってアメリカはトウモロコシだとか小麦だとか、牛だとかそういうもので生業を立てた。日本から中国に移って、中国から他所に移って、じゃあ日本はこの狭い国土で、農業で生業を立てるといったら、付加価値の高い作物を作るしかないのです。
まず最初に主食のおコメです。それから果物を作っていく。全部できますから。一番難しいのはリンゴです。リンゴができるということはもう全部できるのですから、みんなが自然栽培をやればいいと思います。
岡山県では今、ブドウとモモをつくっています。自然栽培のモモは水の中に入れると沈むんですよ。皆さんが街で買ったモモは、水の中に入れたら全部浮きます。われわれのモモは沈みます。比重が高いんですよ。だからものすごく甘いんです。
桃太郎の話の中で、モモが川をぷかぷか浮いて流れてきたというのが出てきますが、昔のモモは自然栽培だったはずだから沈むはずです。なぜ浮いて流れてきたのか、それはモモの中に桃太郎が入っていて、空気があったからなんです(笑)。
藤原 確かに、面白いですね(笑)。仲間の農家さんと勉強とかなさっていらっしゃると思いますけど、ふだんどんなことを話しながら、自然栽培をなさっていらっしゃいますか。
高橋 チームを作って、チームの中でいろいろ確かめて、そのやったことを持ち寄って共有するようにしています。
藤原 例えばどんな内容でしょうか。
高橋 例えば水の管理をどうするかだとか、土用干というものをした方がいいとか、しないほうがいいとか、代掻きは2回がいいとか、3回がいいとか。いろんなことを皆さんと話し合います。私は農家のプロでないんですが、皆さん農家のプロばかりですから、いろんな植え方もしたりして、それを持ち寄って、じゃあこうしよう、ああしようとやっておられます。われわれはそれを聞いて栽培手引きをつくり、それを皆さんにそのつど示せるようにして、こういうやり方の時が良かったよとかやっています。
ちなみに一般の朝日米は農協に出荷するとき9,000円なんですけど、われわれの自然栽培米は21,000円で2.3倍なんです。反収は去年で1反当たり6.2俵でしたから、農家さんの収入は13万円ぐらいになりました。トップの方は9.2俵まできました。これからどんどんどんどん磨きをかけていきますから、そのうち慣行栽培の一般のコメ作りと変わらないようなコメづくりになると思います。
また肥料をやって大きくなるというのは、窒素肥料は息抜きといって、わざと野菜を大きくさせて息抜きをさせているわけです。例えばキャベツに青虫がいっぱい付きますよね。青虫は外から食べていくわけです。どこまで食べるかというと、根に見合うところまで食べるんです。キャベツが根に見合う以上の大きさになるとキャベツがフェロモンを出してモンシロチョウを呼ぶんです。青虫はその余分な葉を食べてるわけですね。
自然はよくできているんですね。木村さんはそういうことをずっと研究されておられるわけです。
藤原 自然観察力がかなり必要になると思いますが、その辺が最近われわれ現在の生活で一番衰えている部分の一つではないかと思いますがどうでしょうか。
高橋 そうですね。もう一つ、木村さんはテントウムシはアブラムシを食べる益虫だって言われるんです。実際、何匹食べるのかと、木村さんはある時一日中テントウムシを眺めていたそうです。そしたら6匹食べたそうです。ハチの方がアブラムシをたくさん食べるそうです。その観察眼たるやすごいですよ。私は一日中テントウムシを眺めているわけにいきませんから、木村さんはすごいと思います。ぜひ皆さん木村さんのお話をお聞きしてください。涙、涙の物語ですよ。
藤原 今後、農業はこの5年が勝負であるとおっしゃいましたが、この5年のざっくりした方向性というのは、どんなふうになっていくのでしょうかね。
高橋 あのね、シンギュラーポイントというのがありますよね。特異点。それを超えると元に戻らない。そのシンギュラーポイントに達する前に兆候があるんです。それをスタシスと言います。これは例えばヤカンに水を入れ火に掛けてしばらくするとブクブクと白い泡が立ってきます。その時点で火を止めると沸騰しないのですが、放おっておいたら沸騰するわけですね。今のわれわれの自然栽培は、イメージ的にはブツブツと泡が出はじめたころかなあと思います。
そういうことで、こうやって皆さん方と今日お出逢いさせていただいているのです。今までそういう方とのお話がなかったので、これからはそういうふうになっていくと思います。
藤原 なるほど、一方では廃業する農家さんも出てくるということでしょうかね。
高橋 廃業する人が一杯出てくると思います。あれよあれよという間でしょうね、だからシンギュラーポイントを超えたら、もう元へは戻れなくなり、どうにもならないでしょうね。
だからそうなる前に、これから先は消費者の人が世の中を作っていかなきゃならない。インフレーションの時は生産が足らないわけですから製造しなければいけない。消費者にとっては地獄です。ところがデフレーションの時は、経営者が地獄で、消費者は天国です。だからデフレの今は、消費者の力で生産者の方がいくらでも変わりますよ。
藤原 おっしゃるとおりです。
高橋 今スーパーで売られているキュウリはまっすぐでしょ。普通キュウリって曲がるんですよ。でも曲がったキュウリは売られていないですよね。あれは東京の高島平団地の方が曲がったキュウリは買わないと言ったからなんですね。それで真っ直ぐになったんです。農家は消費者のいう通りにやってるだけです。
今ね、白菜の中にナメクジが入ってたら、皆さんどうですか。すぐ電話するんじゃないですか。スーパーの店長に「お前いくらで売ってんだ、バカヤロウ」。ところが消費者がナメクジが入っていないと買わないと言ったら、農家の方は肥料・農薬をやめてナメクジを飼いますよ。穴あけてナメクジ入れますもの。消費者がみんなでこういうものを応援するんだといって、一つのものを作っていく時代なんですよ。
藤原 そういうことになりますね。
高橋 その一番は東京です。東京の方々が世界を動かしますから、消費生活を変えていかないといけない。私は今すし遊館という回転ずしを9店舗やっていて、この秋にもう1店舗オープンして10店にしますけど、それができると次は東京にFCを出します。そこで東京でも火をつけて一気に世の中に自然栽培のコメの足らない状態を作るつもりです。
藤原 いいですね。
高橋 何万俵も足らないという状態を作ると、政府もJAさんも、動き出しますよ。そうすると若い人たちもみんな動くと思うので、そこまできて初めて、明治維新のような形になるんじゃないかなと思います。
藤原先生にお聞きしたいのですが、明治維新に携わった方は3,000人ぐらいだったんじゃないでしょうか。残りの人は、あれよあれよという間に世の中が変わっていたということだったんじゃなかったかと思うんです。農業も3,000人ぐらいの方が携わってくれば、世の中を変えていくんじゃないかなと私は思うんです。
藤原先生がこれからは観光と農業だおっしゃっていますが、私もまったくそうだと思います。
しかもこれからの農業は付加価値の高いものを作っていく農業です。日本は瑞穂の国ですから、おコメが主食です。昔から天照大神がこのイネで日本人は食べていきなさいといって、示唆してくださったさったわけですから これを今、われわれは磨きをかけてですね、世界に誇る自然栽培のおコメを提供していくということが、これからの方向性じゃないかと僕は思います。
藤原 先ほど打ち合わせの中で、おしゃっていたご飯の食べ方なんですけども、食事の際、まずご飯を食べて、それからおかずを食べるのが、本来の食べ方だとお聞きしたんですが、もう少し詳しくお話していただきますでしょうか。
高橋 先にご飯を食べてから自分の好きなおかずを食べて味わう。口の中で味を作ることを口中調味と言います。今、皆さんはおかずを食べてからご飯を食べてますよね、これ反対なんです。ご飯を食べてからおかずを食べるのが正しいのです。
私は発芽玄米という商品をつくりました。これ180グラム330円です。普通5~60円ですけど。高く買って高く売っています。一切塩味をつけていないんです。柔らかくってどんなおかずにも合うようにしています。
これからは発想を変えて、昔の私たちの先祖がつくりあげてきた良い習慣をきちっと継承していくべきだと思いますね。
藤原 確かにね。食事の作法の中に最初にご飯をいただくというのがありますが意味があることなんですね。
高橋 ぜひご飯を食べてから、おかずを食べてみてください。
藤原 今日は高橋さんからいろんなお話を伺いました。この番組は多くのリスナーの方が聞いておられましたので、改めて高橋さんからリスナーの方に一言メッセージをいただけますでしょうか。
高橋 はい。今、世の中が大転換の時代を迎えています。ウクライナとか大変なことになっていますけど、明治維新の時に、福沢諭吉先生が慶応大学で教鞭をとっていたとき、生徒が「先生、周りでは今、戦さをしています。われわれもこうやって机で勉強しいるときではなくて、一緒に戦う時ではないんでしょうか」と福澤先生にお聞きした。すると福沢先生は「やがて戦いは終わる。戦いが終わった後に、日本の国づくりを私たちが担うんだ。そのために今、勉強するんだ」とおっしゃったそうです。
だから私たちも、欧米での戦争はやがて終わります。終わった後に、じゃあどういう方向で国をつくっていけばいいのだろうか、どういう国に協力を求めたらいいのかという時に、日本があるじゃないか。日本のような国にしていこうと、日本に協力を求めていこうと、そういう国に僕は日本はなるべきだと思います。
やはり日本はまず農業をしっかりして、財政基盤も含めて生命の維持をきちっと確保して、健康を保持する、そういう国になっていかなければならない。それが今はチャンスだと思いますので、一緒にそういう国づくりをしていければと思います。宜しくお願いします。
藤原 ありがとうございました。この番組は認定NPO日本再生プログラム推進フォーラムの健康立国対談です。今日は「自然栽培で農業維新」と題しまして、NPO法人岡山県木村式自然栽培実行委員会理事長の高橋啓一さんにいつものように当NPO理事長の藤原直哉がお話をお伺いました。高橋さん今日は大変すばらしいお話をどうもありがとうございました。
高橋 ありがとうございました。
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【質疑応答】
司会 まず福岡の森田さんからです。肥料を使わないことがすごいと思いますが、一番苦労されたことは何でしたか?
高橋 即効性がないということですよね。肥料を使うとすぐに結果があらわれますが、肥料を使わないと時間がかかります。それは多様性の物事が完結するまで、われわれはそれを見守らないといけないということです。思ったほどの苦労はなかったです。
司会 岡山の伊集院さんからです。大きくなるヒエは抜いておいたほうがよろしいですか?
高橋 私の田んぼは、自然栽培をする前は、ヒエがたくさん生えていたんです。うちの家内と何回かヒエを抜いていたんですよ。ところが自然栽培をしたらほとんどヒエは生えません。だから1回も田んぼに入ったことはないです。自然栽培をやっている500枚のほとんどの農家さんの田んぼにヒエは生えていないです。不思議だと思います。
司会 千葉の石塚さんからです。コメづくりにはコンバインなどの投資ローンが必要で、農家の家計は逼迫しています。自然栽培の農家さんはいかがですか?
高橋 自然栽培の方々は中古で農機具を買われて、自分で修理をして使っています。今の農機具は故障したらまるごと換えなきゃいけないんです。昔の農機具は故障した部品だけを換えればよかったのですけどね。トラクターでも5万円とか10万円で買えるので、思ったほど苦労はないんです。
農家の方も誰かとチームを組んで、同じ農機具をみんなで使うべきだと思います。それから岡山県でも県南と県北では田植えの時期が1ヵ月違うんです。だから当然収穫の時期も違いますから、農機具も使い合いすればいいわけですよね。県北の方で田植え機が使い終わったら県南に持って行くとかですね。もっともっと効率良く使えば生産性がもっと上がると思います。
今、皆さんそういうことしないで、自分が1台買って1回、2回使うだけですからね。われわれ企業経営からするとそんなことは考えられません。もっと仲間意識を持ってチームワークよくやっていけば、全く問題ないと思いますよ。
司会 東京の関さんからです。木村式自然農法は天候については大丈夫ですか。大雨・台風・日照りなど。
高橋 木村さんのリンゴ農園に、今から十何年前に台風が通過したんです。ほとんどのリンゴ農家のリンゴは落ちたんですが、木村さんの圃場は落ちたのは僅かです。ほとんど落ちなかった。
われわれの田んぼのイネは茎が太いんです。茎が大きくならずに横に広がるんです。太さに応じてイネが実るので、普通の慣行栽培のイネが倒れても自然栽培の圃場のイネは倒れないんです。だから自然栽培のコメ作りは簡単なのです。
司会 森田さんからです。ここ数年種子法の廃止、種苗法の改悪などの政策がとられていますが、高橋理事長はどのようにお考えでしょうか。
高橋 私たちのおコメは自家採種です。全部自分ところでモミを取っています。願わくば数年に1度交配すると良いと言われているんですが、おコメに関しては全く問題ないです。種苗法は問題があるだろうなぁと思います。
私、一緒にやっている仲間と枝豆をつくったんです。収穫して次の年も、次の年も収穫したのですが、6年目は蒔いても一つも発芽しなかったんです。最初はホームセンター買ってきたのですけどね。だからF1、F2、F3というのは発芽するんだけれど、ある一定期間が過ぎたらプツンと切れるようになっているのでしょうね。だからおっしゃるように今の種苗法というのは本当に問題があると思います。
山田正彦さん達がよくやってくださっていますけれども、なんとか生き残れるんじゃないかなと思う。おコメは大丈夫だと思います。
司会 海老原さんからです。自然栽培の商品は一般的な商品と比べて糖質・炭水化物などの栄養素の違いはありますか?
高橋 調べたんですけど、そんなに大きな違いはないです。ヌカの部分にほとんどの栄養分が入っているんですけど、大きな違いはないんです。ただお酒を作ったら、自然栽培のお酒は、頭の痛くなる人でも頭が痛くならないのです。今までいろんな方に飲んでもらったんですけど、女の方で一杯飲んだだけで真っ赤になっていた人がならないというんです。だからほんのわずかな微量の農薬でも刺激があるんだろうと思います。ミネラル分は違うかもしれませんが、栄養分はほとんど変わらないと思います。
司会 山口さんから二ついただいています。まず一つ目です。自然栽培を始めるための土づくりというのは、どのような様子だったのでしょうか、期間など。またお話では雑草を生やして土づくりをするとおっしゃっていましたが、具体的な方法などもう少し詳細に伺いたいです。
高橋 はい。最初から自然栽培でスタートですから何もせずに、トラクターも使わずに5月の連休明け、田植えの一か月前に1回浅く10センチ耕起するだけです。それで終わりです。それは嫌気性菌と好気性菌をバランスを取るためにするということです。
普通はですね、イネ刈りをした後やるんです。12月、3月、4月、5月、田植え前に往復で1回やりますから10回やります。われわれは田植えの前に1回浅く耕すだけです。
田んぼの草は全部一年草ですから、草は5月の連休の20日過ぎには岡山県では全部枯れるんです。枯れてから耕すのです。うまいことになっています。だから緑肥にしないということですね。
司会 休閑期に雑草を生やして土づくりをするのかという二つめの質問は、今のお話が回答ですね。
高橋 はい。生やしてというより自然に任すということです。
司会 次は川上さんから。水のやり方は通常のやり方と違うのでしょうか?
高橋 通常のやり方とほとんど一緒です。ただ水をかけながすということ。つまり入れて抜くということ。片一方では水を取り入れて、片一方では水を抜くというようなイメージの田んぼがいいですよね。要するに水を動かすということ。水を動かすと酸素が水の中に入りますから。あとはもう管理はほとんど変わりませんね。ただ深水管理と言います。水が深くなると田の草が生えないんですね。だからちょっと水は深めでしょうか。多分それでヒエも育たないんだと僕は思う。
司会 ムーさんから。今年から実家の畑で自然栽培を始めました。ゆくゆくは残されている田んぼも耕して行きたいと思っています。現在は中間管理機構に委託しています。この地域はドローンで農薬を一斉散布しているようなのですが、高橋さんがおコメを育ててらっしゃるところではどのような農薬散布をされていますか、されていればそのような場合は、どのような対策をとっているのか、お伺いしたいです。
高橋 岡山県でもドローンを使った農薬散布がされています。ドローンで散布されているところでは有機栽培は畦から1メートル空けないといけないということになっています。ですからわれわれは2メートル空けています。念のために。しかし実際は上手に散布されますから隣の圃場にはほとんど農薬はかかりません。だから大丈夫だと思います。
司会 多摩の山本さんからです。小麦は窒素食いだと言われますが、小麦栽培にも自然栽培は応用できますか?
高橋 小麦も大丈夫です ただ岡山県の場合、二毛作で麦を収穫し終えた後では、田植えが少し遅くなるので、昔はやってましたけど、われわれの自然栽培においては、ちょっとできないような感じがしますね。
司会 小川さんからご質問です。農家の人は自分のノウハウを秘密にすることが普通なのですが、高橋さんのグループはいかがですか。
高橋 すべてオープンです。まったくそういうことはありません。前に私の尊敬する方が、この自然栽培の話を聞いて、すなおな方じゃないとできない農業ですねといったことがあります。だから携わっている皆さん、素直で素晴らしい、いい人ばっかりですから、隠すことは一切ありません。全てオープンですから。
司会 はいありがとうございます。
高橋 今、自然栽培センターといって、弘前大学を中心にプラットフォームを作っています。そこでいろいろな方にお入りいただいて、勉強していただくようなイメージをもってやっています。
粕渕辰昭先生という方が書いた『自然との共生をめざすコメ作りー江戸時代に学ぶ新農書』。もう1冊は弘前大学の杉山修一教授が書いた『ここまでわかった自然栽培―農薬と肥料を使わなくとも育つしくみ』。学術的にはこの2冊で大体わかると思いますが、その土地、土地に応じた気候風土がありますから、若干それに合わせていかないといけないと思いますけど、基本的にはそんなに難しい問題でも何でもありません。要するに乾かして、トラクターで浅く耕して植えるということであって、あとはイネは足音を聞いて育つわけですから、田んぼを夫婦で見守っていけばいい。
要するに肥料をやらなかったら育たないというイメージを捨てないといけないですね。窒素・リン酸・カリはいらないということです。それさえ分かって信頼していけば、あとはイネが期待に応えてくれますから。
イネはものすごい強い作物ですから、だから田植えしなくったって昔はパット投げても育つぐらいでした。それほどイネは力強いです。イネに関して言えばやると決めたら、それだけで育つと思います。
他の野菜は水を張らないですから、畑は少し時間がかかると思いますので、畑については、木村さんが本を書かれているので、その本を読んでやられたらいい。
ただ木村さんもおっしゃっているように、例えばトマト、トマトはアンデス地方でできたものなので、基本的に水はなくっていいわけです。トマトは水がなくていいんだけど、みんな水をやりすぎて、根が腐るんです。
そういうふうにその作物、作物の原産地の気候風土を参考にしながら、その原産地の感覚・環境に合わせて育てるといいと木村さんはおっしゃっています。そういう木村さんの本がありますので、それを読まれたらいいんじゃないでしょうか、判らなければわれわれのNPO事務局に聴いていただければ、個別に私たちのわかっている範囲でお話ししますので、遠慮なしに聞いていただいたらいいと思います。
あの木村さんはリンゴを作るのに11年かかったんですけど、売るのにさらに17年かかってるんです。作るのも難しいけど売るのはもっともっと難しいということです。だから私はNPO法人を立ち上げて、先に会員制にしたわけです。入会金5,000円、年会費5,000円。10,000円で会員を募って、消費者を先にチームにして、欲しい方がこれだけいらっしゃいます、だからおコメを作ってくださいとお願いしたわけです。消費者の人が動けば必ず生産者の人は動いてくれますから 作ったものを買うというのではなくて、こういうものが欲しいからつくって欲しいというようにイメージを変えていかなければならない、ということだろうなと僕は思うんですよね。
入会金5,000円、年会費5,000円といったら、私の友人がそれは高いといったんです。そんなに高いと入る人いないよというから、そうかまあ見とれといった。一人も入らなかったら高いけど、一人でも入ってくれたら後はやり方だといったんですが、いま会員1,000人です。1,000人の方が入会しておコメを取っていただいています。年間予約米ですから、先に12月にお金払ってもらう。それで1年間おコメを出すわけですよね。
だからシステムをきちっとさえしていけば、僕は十分やれると思うんです。ただ実際には私の会でおコメが1,000俵足らないんですよね。ネット販売をしている方を切らすわけにいかないので、増え過ぎたら生産が追いついていかないので、一旦会員は締め切らないといけない状況です。今一人3俵までかな、制限をしているんですけど。
そういうふうに生産者と消費者をウインウインにしていかなきゃいけないです。中には生産者が消費者と直取引するひともいるんですけど、ほっとくんです。勝手にしてください、と。いずれうまいこと行かなくなるんです。生産者は高く買って欲しいわけですし、消費者は安く売って欲しいんです。だから二人で話しあうとウインウインにはならないんです。あいだに歯車が必要です。要するに歯車だけが反対に回っているんです。だから両方は同じ方向に回られるんです。NPO法人のわれわれはその歯車です。歯車は消費者の方に寄り添い、生産者の方にも寄り添っています。寄りそうということは反対に回ることなんです。われわれが反対に回っているから、生産者も消費者もウインウインなんです。
われわれが反対に回るという覚悟を持っていないとできません。われわれも同じ方向に回ろうと思ったら、ベルトにしないといけない。ベルトだと距離を離さないといけない。緊張関係にしないとベルトは空回りしますから。
反対に回らないといけないのは夫婦も一緒です。男と女は違いますから、互いに反対に回らないと夫婦はうまいこといかないんです。それをみんな同じように回るから、いつかガリガリッとなる。刃がこぼれるんですよ。男と女はまったく異次元の生物です。宇宙の中で一番異次元ですよ。相反する二つの力ですから。だから子どもが出来るんです。だから理解しようとか、一緒になろうとか、これっぽちも思っちゃだめです。夫婦とは違うもの。だから言われたことは「はい」しかないんです。すみません、いらんことを言いました。
司会 藤原 ありがとうございました。
高橋 前の話で私の信頼している人が言った「すなおな人」ということですが、自然栽培はすなおな人でないとできないと思う。辛抱ができないですよ。私でさえも2年目でも大変だったもの。だから慣れるまで大変ですよ。だって苗が大きくならないんですもの。
私たちは3歳までは、みな自己というものを持っています。だから自分のしたいことするんです。ところが3歳ぐらいから知恵がついてくると、両親がこうしたら喜ぶ、両親が喜んでくれることをすると自分の欲しいものが手に入るということを学習するわけです。だから自分がこうしたいというのではなくて、両親が望むようにしようと自我が芽生えてくるわけです。そうして自己が失われていくわけです。自分のことをさておいてということを学校教育までずうっとやっていくわけです。そうすると自己信頼ができてなくなるんです。今、みんな自分に自信がもてないのです。自分を信頼することができないのです。
自分を信頼できない人を、人が信頼してくれることはないんです。自分が自分を信頼できない、自分で責任を取れない人が、人を信頼することも、人から信頼されることもないから、そこで軋轢をいつも起こすんです。
私たちが自分のしていることに主体性を持って、自分を信頼し、自信が持てるようにれば、みんなと一緒にコミュニケーションができるようになります。自信がないと相手を批判してしまうんです。
今、人の話を批判的に聞く人が多いです。人の話は共感的に聞かないといけない。共感的に聞き始めるとすぐ友達になります。アドバイスができるわけです。批判的に聞くとアドバイスできないから信頼関係ができないのです。共感的に聞くか、批判的に聞くか、一番早くわかるのは講演会等の時に、前から座るか、後ろに座るかです。後ろに座る人は批判的に聞くし、前から座る人は共感的に聞きます。だからできるだけ前から前から座るようにしているとコミュニケーションがとれるようになりますから、是非試してみてください。
成長は、自然栽培も子育てもそれから社員教育もみな一緒です。もう全くいっしょです。それは先ほど言ったように相手の話を共感的に聞くということだと思うんです。みんな批判的に聞くんです。批判的に聞くところからは信頼関係は絶対に生まれませんから、共感的に聞くと言うこと。また成長というのは、何か新しいものを加えないと絶対に成長しませんから、じーっとしていて成長することはないです。ということは新しいものを加えるということは、何かそうでないものを置いておかないといけないですよね。そうじゃないとつじつまが合わないですからね。新しいものばっかり加えていると、何でもそうですけれど消化不良になりますので、だから「得るは捨つるにあり」で、先にいらないものを捨てて新しいものを手に入れるということだろうと思うんです。
えーとね。結構問い合わせがあるんですよね。やっぱり身近な人がやってて 、仲間がいるということがいいですよね。一人だけでやっているとどうしても孤立してしまってね。一旦迷路に入ると出て来れないんですね。仲間づくりが一番大切だと思います。
皆さん何で岡山ですかといって聞くんですよ。だから私も逆に何で岡山になると思いますかって聞くんです。だって青森に近い、岩手とか山形とかがあるじゃないですか。何で岡山かと思ってね、私木村さんに言われたことを信じています。ここまで出来るだろうと。それだけのことです。後はもう一切不安な気持ちを持たない、心配しない。いつもできると確信してやりました。
今の日本国民は、国が私に何をしてくれるのかという人と、私が国に何ができるのかという人の二種類いると思うんですよね。そして今、国が私に何をしてくれるのかという人が過半数を超えたと思う。そういう人が選ぶ、選ばれた政治家ですから、その人たちに合うような政治をしてしまいます。だから私は政治にあんまり期待できないと思う。ここはやはりね、シューペンターの「一人が世の中を変える」という心意気でやるべきだと思うんですね。
だからあのクロネコヤマトの創設者小倉昌男さんが、あれだけ苦労されて宅急便を作られたから、今日の通販があるんであって、あれがなかったら通販なんかできないですよね。そのように政治を相手にするんではなくて、自分からやっていくという時、今になったのだろうと僕は思うんです。だから藤原先生のような方とチームを組んでいくことです。
安岡正篤先生は「悪は党を作る。悪党といって善をやっつける」とおっしゃっている。善は一人でやっていますから、コテンパンにやられるんですね。ショッカーみたいにね。その後に今度はまた善が立ち上がって、善の人たちがネットワークをつくって悪を駆逐するんです。今、善がネットワークをつくって立ち上がる時ですよ。そう思っています。以上です。
藤原 ありがとうございます。
高橋 自然栽培のことについては、岡山県木村式自然栽培実行委員会のHPに出てきますし、私どものすし遊館のホームページでいろいろ載っけていますので、「自然栽培とは」と開いていただければ良くわかると思います。
私たちの田んぼで、蒔きもしないのにレンゲが生えるんです。しかもそのレンゲがものすごく繁茂しているんです。130センチまで伸びるのです。すごく大きくなって、それで蜂蜜が採れるのです。われわれはそれを蜂蜜プロジェクトといって、今年も取れました。蒔きもしないのに生えるんですよ。
木村さんに20年、30年前のレンゲのタネが復活したんでしょうかって聞いたら、レンゲは2~3年経ったらタネは生えなくなるから、そうじゃない。じゃあ何ですかって聞いたら、自然栽培にして窒素肥料が欲しくなった田んぼが、レンゲを呼んだんだ、と。そしてレンゲの中の根粒菌が窒素固定をして、そして田んぼを良くしていくんだというのです。
雨が降って木が育つんではない。樹木が雨を呼ぶというのです。実際にH2OとCO2ですね。2H2OとCO2で二酸化炭素と水を光合成によってCのHの2の炭素と水素の化合物、炭水化物と、酸素O2と、そしてH2Oの水蒸気、それを放出するわけです。放出したその水蒸気を目当てに低気圧が寄ってくるんです。そして雨が降るんです。上空に水蒸気があると雨が降ります。だから飛行機雲が15分くらいで消えたら水蒸気がないんです。だから飛行機雲が1時間2時間残っていたら、次の日は雨になります。だから私たちは雨が降って樹木が育つように考えがちなんですが、樹木が雨を呼ぶんです。自然はそういうふうになっているんですよ。
実際にあのクブチ沙漠で300万本沙漠にポプラを植えたら、いま雨が降っているんです。だから私たちは自然と共存していくということが大切だと思います。
先ほどから出ていますように近代の科学はここまで発達しましたけど、その分マイナスの部分も必ずあるわけです。今そのマイナス部分が蓄積して、プラスの部分を凌駕してしまって、今度はマイナスが大きすぎるようになっているので、ここで、そのために大転換を図らないといけない。そのためにやはり私はこれから日本の出番だというふうに思っていますので、私の夢は木村秋則さんにノーベル賞をとってもらうことです。木村秋則さんがノーベル賞をとっていただくと、自然栽培が世界中に広がりますので、脱石油社会の環境保全になると思いますので、みなさんよろしくお願いします。今日はありがとうございました。
藤原 高橋さま本日は大変ありがとうございました。目から鱗のお話をたくさん聞かせていただき、改めて本当にいい勉強させていただきました。
それからご参加の皆様も長時間にわたりまして大変ありがとうございました。いろんな気付きも、それぞれ皆さん得られたんじゃないかと思います。今後も高橋さんのグループの皆さんと、いろんな交流を深めさせていただきたいと思っており、いろんな行事も考えております。
同時に、やっぱり一般の人たちにも自然栽培とか、新しいものを紹介していくことが、われわれの重要な使命だと思っていますので、引き続き啓蒙活動にも頑張っていきたいと思っております。
このご縁を生かしまして、皆様がますますご発展されて、われわれの力で新しい未来を作るしかないので、頑張っていきたいというふうに思っております。
今日はご参加の皆様、そして高橋さん、本当にありがとうございました。(22/08/26 文責・高橋啓一)
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