短編小説 |RUMOUR6/6
CYCLE
数日後、百田教授は井坂からの手紙を受け取った。その内容に愕然としながらも、具体的な行動を起こすことはできなかった。なぜなら、手紙の内容そのものが、新たな「ウワサ」となって広がり始めていたからだ。
「山神様の正体は集団幻覚だという噂を聞いたか?」
「いや、それ自体が幻覚を引き起こす新たな儀式だというじゃないか」
「本当に100年後にまた起こるのだろうか…」
こうして、「山神様」の噂は、新たな形で後世に伝播していくことになった。
そして、いつの間にか1世紀の時が過ぎていった。
2024年8月。SNSで奇妙な投稿が話題になっていた。
「N県の山で、100年前と同じ現象が起きているらしい。人が次々と姿を消しているって」
「マジか?写真とか動画ないの?」
「いや、それがヤバいんだ。写真を撮ろうとすると、カメラが壊れるんだって」
「でも、それって100年前の噂と同じじゃん。きっとデマだよ」
「いや、俺の友達の知り合いが本当に消えたらしい…」
「心霊系YouTuberの〇〇が今度そこ行くらしい!」
「RUMOURっていう小説しってる?あれがN県の事件と似てるらしいよ」
投稿はまたたく間に拡散され、様々な憶測を呼んだ。一部の人々は好奇心から現地に向かい、また別の人々は恐怖から家に閉じこもった。
そして、ある夜。全国の人々のスマートフォンに、同時に不可解な通知が届いた。
「山の神様 いらっしゃい
みんなで 行きましょう
百年に一度の お祭りよ
誰も帰れない お祭りよ」
その瞬間、多くの人々が奇妙な幻覚を見始めたという。
「山神様」の噂は、テクノロジーという新たな媒体を得て、かつてない速度で広がっていった。
そして、今、誰も気づかぬうちに、新たな100年のサイクルが始まろうとしている。
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