sonohenno_cat

その辺にいる猫です。 できるだけ多ジャンルの自作短編小説を載せていきます。

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最近の記事

短編小説 |RUMOUR6/6

CYCLE 数日後、百田教授は井坂からの手紙を受け取った。その内容に愕然としながらも、具体的な行動を起こすことはできなかった。なぜなら、手紙の内容そのものが、新たな「ウワサ」となって広がり始めていたからだ。 「山神様の正体は集団幻覚だという噂を聞いたか?」 「いや、それ自体が幻覚を引き起こす新たな儀式だというじゃないか」 「本当に100年後にまた起こるのだろうか…」 こうして、「山神様」の噂は、新たな形で後世に伝播していくことになった。 そして、いつの間にか1世紀の時

    • 短編小説 |RUMOUR5/6

      TRUTH 井坂涼は、N県の山奥にある病院での不可解な出来事から数週間が経過した今も、その謎を追い続けていた。彼の研究室は古文書や地図、写真で埋め尽くされ、壁には「山神様」に関する情報が張り巡らされていた。 夜も更けた頃、井坂は古い地質学の論文を読みふけっていた。突如、彼の目に奇妙な記述が飛び込んできた。 「N県の山岳地帯には、特異な地形と気候が存在する。この地域では、特定の条件下で大気中の微粒子が異常な濃度で集積し、幻覚作用を引き起こす可能性がある。」 井坂は息を呑

      • 短編小説 |RUMOUR4/6

        SEEKER 長時間の列車の旅を経て、井坂はようやくN県の小さな駅に到着した。駅前には人影がまばらで、異様な静けさが漂っていた。タクシーを探したが、どの車も営業していないようだった。仕方なく、井坂は徒歩で病院を目指すことにした。 山道を登りながら、井坂は周囲の様子に違和感を覚えた。鳥の鳴き声も虫の音も聞こえない。ただ風が木々を揺らす音だけが、不気味に響いていた。時折、遠くから聞こえてくる低い唸り声のような音に、井坂は背筋が凍る思いがした。 「何かがおかしい…」 井坂は

        • 短編小説 |RUMOUR3/6

          MESSAGE 1924年、入道雲が立ち込める、夏の京都。京都大学の一室では重苦しい空気が漂っていた。 井坂涼准教授は、机の上に広げられた一通の手紙を何度も読み返していた。その手紙は、恩師である百田教授から届いたものだった。通常なら喜ばしいはずの恩師からの便りが、今回は不安と戸惑いを井坂の心に植え付けていた。 「井坂君、君の力を貸してほしい」 そう始まる手紙の内容は、百田教授の娘、フサからの不可解な手紙の解読を依頼するものだった。井坂は、その依頼の裏に隠された深刻さを

        短編小説 |RUMOUR6/6

          短編小説 |RUMOUR2/6

          EXPANSION 1924年の春が過ぎ、ジメジメと雨が降り始めた頃、N県の山奥にある病院では奇妙な噂が瞬く間に広がっていった。フサが赴任してから数ヶ月が経ち、彼女自身もこの地の不可解な雰囲気に少しずつ慣れ始めていた。しかし、その「慣れ」は同時に、彼女の中に新たな不安の種を植え付けていった。 患者たちの間で、突然未知の言語を話し始める者が現れ始めたのは、梅雨の中頃のことだった。最初に気づいたのは、呼吸器内科に入院していた老人だった。ある朝、いつものように回診に訪れたフサは

          短編小説 |RUMOUR2/6

          短編小説 |RUMOUR1/6

          LURK 1924年4月1日、桜の花びらが舞う中、看護婦の百田フサ(29歳)はN県の山奥にある病院に向かっていた。父の勧めで疎開のためにこの地に赴任することになったのだ。都会育ちのフサにとって、この決断は不安と期待が入り混じる複雑なものだった。 病院に到着すると、フサは呼吸器内科の3病棟に配属されることを告げられた。白衣に着替え、病棟を歩き始めると、静かな雰囲気に安堵感を覚えた。都会の喧騒から離れ、のんびりとした環境で看護の仕事に専念できると思ったのだ。 最初のうち、フ

          短編小説 |RUMOUR1/6

          短編小説 |鴨川の宇宙人6/6

          新たな共生の幕開け ある日の夕方、私とハットリさんは鴨川の土手を歩いていた。夕陽に染まる川面を眺めながら、私たちは新しい現実について話し合っていた。 「ハットリさん、人間一人一人が多重人格を持つ宇宙人の乗り物だとすると、社会のルールや法律はどう変わるべきなんでしょうか?」と私は尋ねた。 ハットリさんは少し考えてから答えた。「それは非常に複雑な問題だね、ノア。まず、個人の責任という概念を再考する必要があるだろう。ある行動が、その人の中のどの人格によるものなのか、そしてその

          短編小説 |鴨川の宇宙人6/6

          短編小説 |鴨川の宇宙人5/6

          内なる宇宙の決戦 承知しました。ノアが女の子であることを踏まえつつ、セリフは「僕」のままで、結:内なる宇宙の決戦のプロット設定を守りながら書き直します。 鴨川の土手を歩きながら、私は自分の中に芽生えた新しい感覚に戸惑っていた。人類が宇宙人の集合体だという事実を知ってから、世界の見え方が少しずつ変わってきていた。 突然、私の中から声が聞こえてきた。「やあ、ノア。私はアルファ。君の中に眠っていた宇宙人の一人だよ」 驚いて立ち止まった私に、アルファは優しく語りかけてきた。「

          短編小説 |鴨川の宇宙人5/6

          短編小説 |鴨川の宇宙人4/6

          人類の真実 ご指摘ありがとうございます。確かにその点は不自然でした。設定を踏まえて、より自然な反応と展開になるよう書き直します。 鴨川の土手を歩きながら、私とハットリさんは侵略計画を阻止するための作戦を練っていた。夕暮れ時の川面に映る赤い空が、まるで私たちの緊迫した状況を映し出しているかのようだった。 突然、ハットリさんの体が光り始めた。「おや、これは…」とハットリさんが驚いた様子で言った。 次の瞬間、私の目の前で驚くべき光景が広がった。ハットリさんの体から、様々な色

          短編小説 |鴨川の宇宙人4/6

          短編小説 |鴨川の宇宙人3/6

          地球の危機 鴨川の土手での奇妙な出会いから数週間が経過していた。私、ノアは相変わらず学校に行けずにいたが、毎日がこれまでとは全く異なる緊張感に満ちていた。ハットリさんの体内で、激しい議論が繰り広げられていたからだ。 今日も、私の部屋でハットリさんと密かに会話を交わしていた。狭い世界に閉じこもっていた私にとって、この秘密の会話は唯一の楽しみだった。 「この未開の惑星、我々の植民地とすべきだ」とデルタが冷酷に主張する声が、ハットリさんの口から発せられた。 「いやいや、そり

          短編小説 |鴨川の宇宙人3/6

          短編小説 |鴨川の宇宙人2/6

          宇宙からの来訪者たち 鴨川の土手で起こった奇妙な出来事から数日が経っていた。私、ノアは学校に行かず、部屋に引きこもっていた。不登校になって久しい私にとって、外の世界との接点はほとんどなかった。しかし、あの日の出来事が頭から離れず、再びハットリさんに会いたいという思いが強くなっていた。 ある日、思い切って外に出ると、不思議なことにハットリさんが家の前で待っていた。「やあ、ノア君。君に会いたくてね」と穏やかな口調で話しかけてきた。 私は驚きつつも、内心では嬉しさがこみ上げて

          短編小説 |鴨川の宇宙人2/6

          短編小説 |鴨川の宇宙人1/6

          プロローグ:鴨川の奇妙な出会い 京都の鴨川。古都の中心を悠々と流れるこの川は、数多の歴史を見守ってきた。その土手を、私は放課後いつものように歩いていた。夕暮れ時の空気が心地よく、川面に映る夕陽が美しい。しかし、この日常的な風景の中で、私の人生を大きく変える出来事が起ころうとしていた。 突然、奇妙な声が耳に入った。最初は誰かが携帯電話で話しているのかと思ったが、どうもそうではないようだ。振り返ると、一人のおじさんが立っていた。 「なるほど、素晴らしい洞察だ」と厳かに呟いた

          短編小説 |鴨川の宇宙人1/6

          短編小説 |音楽の向こう側へ5/5

          調和の響き 唄、ケビン、リサの三人は、Qハーモニーを「感情コミュニケーション・プラットフォーム」として再構築することを決意した。彼らの目標は、量子もつれを利用した「感情の共有ネットワーク」を構築し、世界中の人々が音楽を介して感情や経験を共有できるようにすることだった。 「音楽は、言語や文化の壁を超える普遍的な言語です」唄は熱く語った。「Qハーモニーを通じて、私たちはその力をさらに増幅させ、人類の相互理解を深めることができるはずです」 ケビンは技術的な側面から説明を加えた

          短編小説 |音楽の向こう側へ5/5

          短編小説 |音楽の向こう側へ4/5

          調和の乱れ Qハーモニーの存在が世間に知られ始めると、社会は大きく揺れ動いた。メディアは連日のようにこの革新的技術を取り上げ、専門家たちは熱い議論を交わした。賛否両論が巻き起こる中、唄、ケビン、リサの三人は、自分たちの研究が思わぬ方向に進んでいることに戸惑いを覚えていた。 「まさか、こんなことになるとは...」唄はため息をつきながら、研究室の窓から外を眺めた。キャンパスの外では、Qハーモニーの倫理性を問う抗議デモが行われていた。 ケビンが肩を落として言った。「僕たちは、

          短編小説 |音楽の向こう側へ4/5

          短編小説 |音楽の向こう側へ3/5

          共鳴する魂 Qハーモニーの研究が危機に瀕する中、唄、ケビン、リサの三人は新たなアプローチを模索していた。研究室の壁一面に貼られた付箋やホワイトボードの図表が、彼らの必死の努力を物語っている。 「このままでは行き詰まってしまう」唄が溜息をつきながら言った。「私たちは何か重要なことを見落としているのかもしれない」 その時、唄の目に古い禅の書物が留まった。それは、祖父が日本から送ってくれたものだった。何気なく開いたページに、ある一節が目に飛び込んできた。 「心は空なり、され

          短編小説 |音楽の向こう側へ3/5

          短編小説 |音楽の向こう側へ2/5

          量子の調べ MITの研究室に足を踏み入れた唄は、その瞬間から空気が違うことを感じた。最先端の機器が並ぶ lab は、まるで未来からやってきたかのようだった。 「ようこそ、唄」指導教授のジョンソン博士が温かく迎えてくれた。「君の研究提案書は非常に興味深かったよ。量子もつれを音楽体験に応用するというアイデアは斬新だ」 唄は緊張しながらも、自信を持って答えた。「ありがとうございます。音楽と量子力学の融合には無限の可能性があると信じています」 ジョンソン博士は微笑んだ。「その

          短編小説 |音楽の向こう側へ2/5