#003 ゆっくり、ゆっくり
「どの子にも絶対にいいところがある」
私たちはこのことを強く信じています。子どもたちのいいところを見つけたとき、私たちは宝物を見つけたような気持ちになるのです。私たちが日々出会う放課後ならではの子どもの成長物語。その一部をご紹介いたします。
放課後を告げるチャイムが鳴り、玄関で子どもたちを待っていると、最初に元気よく靴箱に向かってくるのは、1年生。友達とじゃれあい、話しながら歩いてくるのは、2、3年生。そんな中、うつむき加減に歩く4年生の女の子が目に留まりました。
「Sちゃん、どうしたの? なにか、あったの?」と声をかけます。
「う~ん。今日、アフタースクールに行こうか迷ってる」と返ってきました。
「そっかぁ、迷っているなら、おいでよ」と言うと、「うん」と言って、彼女はひとりでアフタースクールへと歩いていきました。
子どもたちの放課後は、学年によって大きく変化しています。学年が上がるごとに、友達との余暇の時間が習い事の時間へと移り変わっていき、Sちゃんの友達の放課後は、とても忙しいようです。
「校庭にいくよ~!」の呼びかけに、「わぁ~い」との子どもたちが元気よく集まってきました。
私は、校舎の3階から校庭へ向かう途中、子どもたちが勢い余って転倒することを防ぐために、階段をゆっくりと降りるようにと声かけをします。
「ゆっくり!ゆっくり!あぶないよ~!」
集団の最後尾にSちゃんと1年生のM君の姿がありました。Sちゃんは、「M君、ゆっくり、ゆっくりいこうね」と一緒に楽しそうに降りています。
M君は同学年に仲の良い友達が少なく、大人と一緒にいることが多い子です。今日は、Sちゃんが一緒にいてくれるので、とても嬉しそうです。
Sちゃんの声かけは、M君だけでなく、私の心にも響いていました。私の「ゆっくり!」には、びっくりマークが付いているけれど、Sちゃんの「ゆっくり」には、優しさのスマイルマークが付いています。
校庭に着いてからも、Sちゃんが中心となり、学校ごっこが始まりました。「仲間に入れて~」と、異学年の子どもたちが何人か集まってきました。
うつむき加減のSちゃんは、もうそこにはいませんでした。
出典『子どもたちの物語 エピソード2 ゆっくり、ゆっくり』
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