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デザインリニューアル成功例をデザイナーが分析してみる

Dynamite Brothers Syndicateのデザイナー、本名(ホンナ)です。
日々デザイン業務に励んでいるわたしですが、
受けた案件に対して頭を動かさずにただ作業をしてしまうと、
いくらビジュアル的にかっこよくても
どこか響かないデザインになってしまうと感じることがあります。

そういう時は、クライアントが「こういうデザインが良い」と
希望されたことをそのまま鵜呑みにはせずに、なぜそうしたいのか、
どうしたらKPIをデザインによって達成できるかを考えます。

今回は、デザインリニューアルで成功した事例を踏まえて、
なぜ成功したのか?どうして響いたのか?を考察してみたいと思います。


ブラックサンダー/有楽製菓

リニューアルにより年間売り上げ1億3000万個達成

わかりやすく変わった点とすれば、
・商品名が欧文→カタカナに
・稲妻マークが1つに大きく大胆に

配色は黒、ゴールドをベースに赤を差し色にしている点は変えずにいることで
イメージそのものは維持しているようです。

欧文からカタカナへ変更したのは、小さいお子さんからお年寄りの方まで
読みやすいように配慮された結果でしょうか。
そのカタカナも極太のゴシック体で、ブラックサンダーの食べごたえのある
ザクザク食感を表現しているデザインだと感じます。
やや右肩上がりで勢いを感じる点も良いですよね。
いずれも、一目みただけで、あるいは少し離れたところからでも
「ブラックサンダーであること」がわかりやすく、その認識が
「手にとりやすさ」に繋がっているのではないかと思います。

学び:
・見た目で食感を感じられる
・わかりやすく、大胆な商品名
で、幅広い世代にインパクトを与えるデザインに。

meiji THE Chocolate/明治

販売計画の2倍以上のペースの売上を達成

誰が見ても、大きく印象が変わったといえるデザイン。
もともとも女性をターゲットにしたような、比較的おしゃれなパッケージですが、シックでクラシカルな印象で若い層からすると
「買いたい!」となりにくそうなパッケージです。
もともとチョコレートを“おやつ”という概念から、
ワインやコーヒーと楽しむ“大人の嗜好品”という
概念に変えることを目的にデザインされたものであることを踏まえると、
beforeのデザインも決して間違ったデザインではないですよね。

しかし、リニューアル後は思わずパッケージ買いをしたくなるほどのおしゃれさ。お菓子の箱らしくないクラフト紙のような質感、
カラーや幾何学模様のバリエーションが豊富なカカオのシルエット。
クラシカルで大人っぽい印象から、
エスニック調で、箔押しによる上品な印象のパッケージは、
若者も含めた幅広い年代の方に興味をもたれるデザインになっています。
リメイク方法がSNSに投稿されるなどかなり話題になりました。
口で楽しむだけでなく、目でも楽しいチョコレートは、
どこか丁寧に食べたくなり、当初の狙い通り、
どこかチョコレートを「嗜む」姿勢をつくりたくなります。

学び:
・配色や柄、印刷技術を採用することで上品におしゃれに見せる
・産地やカカオの強さによって統一感をもたせつつデザインを変える
ことで、ターゲット層へ狙いどおりのイメージを与え、
思わず手に取りたくなるデザインに。

(今はさらにパッケージがリニューアルされていますが、比較対象としてひとつ前のパッケージを取り上げています。)

KOIKEYA PRIDE POTATO/湖池屋

年間売上約40億円を達成

デザインリニューアルとは少しずれてしまうかもしれませんが、
年間20億円を売り上げればヒットといわれる菓子市場で、
2倍に当たる約40億円を達成した
KOIKEYA PRIDE POTATOも分析してみたく、取り上げました。
「秘伝 濃厚のり塩」、「松茸香る 極みだし塩」、「魅惑の炙り和牛」の
3つの味が発売されましたが、翌週には「魅惑の炙り和牛」が当初の販売計画を
大きく上回り、十分な供給量を確保できないことを理由に出荷停止。
さらにその翌週には「松茸香る 極みだし塩」が同様の理由で
出荷停止となるなど、大きな反響を集めました。

これまでのポテトチップス業界にはなかった「プレミアム」を
目指して開発されたもので、そのコンセプトは「ワンランク上の贅沢」。
白を基調とし、12枚のポテトチップスが描かれた落ち着きのある
パッケージデザインも、黄色を基調とした
従来のポテトチップスにはなかったデザイン。
通常のパッケージの前面には
「ポテトチップスが重なる画」が配置されていますが、
PRIDE POTATOではパッケージの側面にデザインされています。
実際に店頭でパッケージを手に取る場面をイメージし、
手に取った際にポテトチップスが重なるビジュアルが
一番に目に入ってくるよう、ポテトチップスを側面に配置しているようです。

学び:
・いままでになかった斬新なデザインを採用
・余白を大胆に活用し、白を基調とすることで高級感を演出
・「実際のシーン」を想定してデザインを行う

ことで手にとりやすく、「食べてみたい、試してみたい」と思わせるデザインに。


今回は、デザインによってわかりやすく数値結果が
出ている事例を取り上げて、分析をしてみました。
デザインをかっこよくして、かわいくして、魅力的にして、
その結果、どう売上や実績として貢献できたのか?を
把握しておくことは、これからのデザイナーにとって大切なことです。

どうしてもトライアンドエラーが必要になってしまいますが、
デザイン業界でない方も、普段目にしているパッケージが
「どうしてそういうデザインになっているのか?」
「どうして自分はこの商品を手にとったのか?」と考えてみることで、
「この資料のタイトルは太いゴシック体にして目に入りやすいようにしてみよう」
「女性向けサービスの提案資料だから、柔らかい明朝体を採用してみよう」
「子供向け商品のためのポップだから、あえて手書きで作成してみよう」
「余白を活かしてもっと高級感のある雰囲気で伝えてみよう」
といった発想を、毎日の業務に活かすことができると思います。

生活に馴染んでいるものはすべからく手に取る人がいるからこそ
そこにあるので、そういったものを
「どう見るか?」「どうやって自分のスキルへと昇華させられるか?」といった
視点を持つだけで、思考のスイッチのひとつになると思います。



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