インサイトを腸内環境から知る時代がくる!?
ウイルスや細菌と戦う免疫細胞。その約7割が生息しているのが「腸」です。昨今は睡眠の質や認知機能を高める乳酸菌飲料も発売され、腸活はますます注目を集めています。そんな腸と、人の性格や感情との関わりが近年の研究で明らかになりました。今回のNew Perspectiveは、性格や感情、そしてインサイトを探る手がかりについて考えます。
インサイト=無意識はどこからくるのか?
インサイトとは「消費者を動かす隠れた心理」を意味するマーケティング用語。消費者自身も気づいていないけれど無意識のうちに抱いている本音や感情です。
このインサイト、よく氷山に例えられますが、意識下に隠れているため発見するのは至難の業です。意識を司っているのは脳ですが、無意識=インサイトも同じように脳から生まれるのでしょうか?ここで興味深い実験を紹介しましょう。
もしかしたら今この記事を読んでいるのも、あなたの意識ではなく、無意識による判断かもしれないのです。
ウォーリック大学経営大学院教授で、英国行動インサイト・チーム(通称ナッジ・ユニット)の諮問委員であるニック・チェイター氏は、著書で次のように記しています。「脳は即興家であり、現在の即興を以前の即興に基づいて作っている。知識や信念や動機からなる隠された内的世界ではなく、それまでの各瞬間の思考や経験の記憶の痕跡を利用することで、新たな瞬間の思考や経験を創り出しているのだ」
これまで私たちは、脳を意識や行動の〝司令塔〟と捉えてきましたが、どうやら別の可能性も存在するようです。ではインサイトはどこから生まれるのでしょうか?そのヒントが、最新の研究でじつは「腸」にあることがわかってきました。
人の性格は腸内細菌で決まる可能性がある
人の性格や感情と腸内細菌の関連性が国内外の研究で報告されています。
まだまだ未開拓の分野ですが、以上の研究から、人の性格や感情が腸内細菌で決まる可能性が大いに考えられます。
腸内フローラの情報を売買する日がくる!?
仮に腸内細菌によって性格や感情が変わり、それがインサイトに関係するとしたら、今後は腸活事情や腸内フローラの状況が重要なマーケティングデータになるかもしれません。そうした個人情報を業者間で売買する未来も、あながち否定はできません。
場合によっては、さまざまな生体情報がインサイトを発見する手がかりになることも考えられます。
ほかに、視線計測(アイトラッキング)や口癖、声色などもインサイトと無関係ではなさそうです。
以上はあくまでも現時点での推測ですが、ひとつ確かなのは、人は常に合理的に生きているわけではなく、必ずしも従来のマーケティングデータ通りに動くわけではないということ。時には矛盾した行動をとる不思議な生き物、それが人間なのです。
そのため、これまで重視されてきたデモグラフィックやサイコグラフィックとは異なる、思わぬ情報がインサイトの発見につながるかもしれません。
さらに視野を広げ、たとえば一年のうちで好きな季節はいつか、カラオケでどんな曲を歌うのか、寿司ネタは何を好んで選ぶのかといった、一見すると課題や目的と無関係とも思える点にも着目し、観察(観察自体はデザインシンキングの欠かせないステップのひとつ)してみることも、イノベーションを起こすうえで時には必要かもしれません。
This is New Perspective
既存のマーケティングデータがすべてじゃない。
思わぬ情報からインサイトを発見できる可能性がある。
Reference:「心はこうして創られる 『即興する脳』の心理学」(講談社/著:ニック・チェイター 訳:高橋達二・長谷川珈)、NHK「ヒューマニエンスQ」、株式会社ヒルダWEBサイト「PROBIO PRESS」、株式会社プリスWEBサイト「技術情報コラム」