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Vol.15② 法学徒の休学 〜2017年春、ロンドン〜 ⑵

Vol.15① 法学徒の休学 〜2017年春、ロンドン〜 ⑴

ロンドン滞在記 〜 1日目 〜


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コヴェント・ガーデン

ホテルから15分ほど歩いてコヴェント・ガーデンに行き、イギリスの演劇やオペラの歴史をたどるロンドン演劇博物館で衣装や小道具などの展示品を見ます。

しぶい館です。
舞台装置の模型などもありました。

そこからまた少し歩いて、フリーメイソン図書館と博物館、さらにイングランド王立外科医師会を見学します。

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王立裁判所

法学生として、医学にふれた後は法学にふれなければ。

10分ほど歩くと、ストランド通りに王立裁判所があります。
イングランドとウェールズの最高裁判所です。
見学と裁判の傍聴をしてみます。

王立裁判所の近くにあるセント・クレメント・デーンズ教会に入ります。
教会の名前に何か聞き覚えがあるように思えて、しかも親近感がわくように思えて、なぜだろうとずっと引っかかっていたのですが、中を見学しているときにハッと気づきました。

子どもの頃に覚えるほど何度も読んでいた『メアリー・ポピンズ』シリーズの中に、「オレンジとレモン、と、聖クレメントの鐘がいいました」というフレーズが出てくるのですが、これがこのセント・クレメントのことだったのです。

40年以上たってもまだ覚えているフレーズです。
教会の中にいるときにその意味がわかったことに感動しました。

それにしても林容吉さんの翻訳はすばらしい。

トラヴァースさんの原書、シェパードさんの絵、林さんの日本語によって産まれたメアリー・ポピンズは、架空の人物ではありますが、確実に幼少期の私のナニー(乳母兼家庭教師)として生きていて、今も心の中に存在しています。

ちなみに、映画の「メリー・ポピンズ」はキャラクターとしてはまったくの別ものと考えています。

私は小説のメアリー・ポピンズで育ったので、映画版のにこやかで明るくて優しいメリー・ポピンズではなく、厳格で、きどっていて、不機嫌そうで、うぬぼれやで、おそろしくきつい目でものごとをぴしゃりと言ってのける、原作のメアリー・ポピンズが大好きなのです。

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すぐ近くにセント・メアリー・ル・ストランド教会もあります。
その向かいには、キングス・カレッジ・ロンドンのストランド・キャンパスと、芸術や教育系の建物サマセット・ハウスがあります。

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キングス・カレッジ・ロンドン

キングス・カレッジのキャンパス・ショップで大学のロゴ入りTシャツを購入し(大学に来たら必ず大学のロゴ入りTシャツを買ってしまう性分です)、カレッジの最上階にあるパブで食事をします。
まだ昼間なのでエールは飲みません。

サマセット・ハウスの中にあるコートールド美術館で絵画を鑑賞します。

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サマセット・ハウス

キングス・カレッジの裏手に謎の遺跡がありました。
ストランド・レイン浴場遺跡「ローマン」・バスなるものです。
実際にはローマ時代に造られたわけではないようですが。

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ストランド・レイン浴場遺跡への道

ディケンズの小説『デイヴィッド・コパフィールド』でこの浴場のことが言及されていると聞いたので、家に帰ったら本を確認しなければ。


『デイヴィッド・コパフィールド』は何度も映画化されていますが、ジョージ・キューカー監督の「孤児ダビド物語」(1935年)がもっとも好みです。


ところでなぜ邦題はデイヴィッドやデビッドでなく、ダビドなのでしょうね。

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コヴェント・ガーデン方面に戻ります。

ロンドン映画博物館で「ボンド ・イン・ モーション(BOND IN MOTION)」という企画展をしていました。
ボンドカーをはじめ、歴代の「007」映画に登場する乗り物やボンドグッズを観覧します。


ジェームズ・ボンドといえば、私は断然ショーン・コネリー派ということになるのでしょう(「派」、というほどのことはないのですが、そもそもショーン・コネリーが好きなのです)。

コネリー以外のボンド映画はほとんど観てきていないのですが、原作の小説の方はよく親しんできました。
原作ファンからすると、ロジャー・ムーアのボンドは少々色っぽすぎるように思えるのです。
ロジャー・ムーアも好きなんですけどね。

映画化された長編が有名ですが、ボンドの短編集もなかなか好みです。


フレミングの他に、サマセット・モームやジョン・ル・カレやグレアム・グリーンも好んで読んでいました。

この流れに関係ありませんが、私はモームと誕生日が一緒です。
90歳くらい歳下ですけど。


フレミングもモームもル・カレもグリーンも、皆さんイギリスの諜報員だったんですね。
元スパイの作家だから読みたい、と思って読んだわけではないのですが、ローティーン頃の私はスパイの活動に興味があったようです。

あっ、ローティーンどころか。

ちいさい頃にすでに、サンスターの「スパイ手帳」というスパイグッズを所持していました。
水に溶ける紙で秘密の通信文を書く、のようなやつです(いったい誰に宛てるのか)。

そういうわけで、イギリスのスパイに憧れましたし、イギリスのスパイ小説を愛読しましたし、イギリスのスパイになりたいときっと思っていました(いろんな意味で無理です)。

グレアム・グリーンについては全集を揃えていますが(早川書房『グレアム・グリーン全集』全25巻)、その中では『ブライトン・ロック』、『ヒューマン・ファクター』、『叔母との旅』が好みです。


『第三の男』と『落ちた偶像』も収録されていますが、この2作はキャロル・リード監督の映画版がいいと思っています。


イギリスの冒険小説といえば、他に、ギャビン・ライアルを外すことはできません。
『深夜プラス1』がおそらくもっとも有名で、多くのミステリ・ファンから絶賛されています。
私自身も子どもの頃に読んで、その面白さに相当興奮したことを覚えています。


最近のことですが、東大法学部の和仁陽先生とお話をした際に、先生もこの小説を大変評価されていると伺い、嬉しく思いました。
それがきっかけで、先生からライアルの原書をお借りしたりもしました。


そういえば、「深夜プラス1」というミステリ系が充実していた小さな書店がかつて飯田橋にありました。
深夜によく通って、本を買って帰って朝まで読んでいました。
思い出の本屋さんです。

六本木の青山ブックセンターもそうですが、通い続けた本屋さんが(特に、深夜に通えるというワクワク感を味わせてくれた本屋さんが)閉じられていくのは切ないものがありますね。

はなはだしい脱線をしました。ロンドンに戻ります。


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ロンドン交通博物館に行くと、ちょうど閉館するところでした。
ショップはまだ開いていたので、せめて来訪の記念にとロンドンの地下鉄グッズを買いました。

暗くなりました。
また10分程度歩いてデューク・オブ・ヨーク劇場に行きます。

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デューク・オブ・ヨーク劇場

テネシー・ウィリアムズ原作の舞台「ガラスの動物園」(The Glass Menagerie)を観劇して感激します。

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舞台「ガラスの動物園」


コヴェント・ガーデンからセブン・ダイアルズ交差点を通ってホテルに戻ります。
ここは七叉路になっていて、6つの日時計をもつ大きな柱を中心にして7本の小道が放射状に伸びています。

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セブン・ダイアルズ

日時計は6つなのにどうして名前はセブンなのだと不思議に思っていましたが、後で調べたところ、柱自体も日時計になっているんですね。

これも子どもの頃に愛読していた、アガサ・クリスティのミステリのタイトルを想起して、セブン・ダイアルズ交差点を通るときにひそかに興奮していました。
でも、それは思い違いで、小説に出てくる「セブン・ダイヤルズ」はどうもこの場所のことではなかったようです。


クリスティ原作の舞台「ねずみとり」(The Mousetrap)がロングラン上演されているセント・マーティンズ劇場がこのセブン・ダイアルズのすぐ手前にあります。
そこを通って行ったので、セブン・ダイアルズ交差点に差しかかる前から私の頭はクリスティでいっぱいになっていたのでした。

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セント・マーティンズ劇場

なお、舞台「ねずみとり」は前回ロンドンに来たときに観劇して感激したので、今回は行っていません。時間があれば二度三度と観たかった公演なのですが……。


今日はすべて徒歩で移動したので健脚になりました。


お読みいただいてありがとうございます。
次回に続きます!(後日更新)
Vol.15③ 法学徒の休学 〜2017年春、ロンドン〜 ⑶

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