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【脚本】『弁天推参~粋後姿明治白浪~』

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政府の緊急事態宣言から1週間。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
コロナとは全く関係ありませんが、自宅マンションのベランダでの喫煙が禁止され、煙草を吸うためには寒かろうが雨だろうが近所の駐車場に行っております。
近所を縄張りとするフリーランス猫(野良猫)に喋りかける毎日。
最初は私が行くとすぐに逃げてた彼も、徐々に逃げなくなり。

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それでも一定の距離を保っていたのがついに本日。
撫でることを許してくれました!
感激。。

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そうそう、昨夜、Cheeky☆QueensのメンバーとLINEミーティングをしました。
久しぶりにメンバーの顔を見て、少しホッとしました。
早く気兼ねなく人と会える、そんな日常が戻りますように。


さてさて、本日の毎日脚本連載は、『弁天推参~粋後姿明治白浪~』です。
“べんてんすいさん~いきすがためいじのしらなみ~”
と読みます。

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作中に音羽屋・尾上菊五郎の話なども出てきまして、歌舞伎の外題を意識したタイトルです。
啖呵などもなるべく七五調で。

2008年、私がSTAR☆JACKSで初めて書いた脚本。
その前に一度、古巣の劇団の若手アトリエ公演で脚本を書いたことはありましたが、時代劇を書くのは初めて。
おまけに同年の本公演で調子に乗って色んなことやったら結果大借金を作り、とにかく返済しなければと急遽やることになった公演でした。
今考えたらよく引き受けたなと己の無謀さに半笑いですが、それだけ必死だったということですね。
公演自体も乗り打ち(小屋入り日にリハーサル→本番までやること)で、ゲネプロ含めて初日に3ステージもやったのだから、正気の沙汰とは思えません(笑)

上演後、一度も読み返してなかったので、今回約12年ぶりに改めて読んでみました。
粗さは目立つものの、想像してたより面白い。
いわゆる「白浪モノ」というやつで、足を洗った義賊の物語。
浅田次郎先生の『天切り松』シリーズが好きな私としては、小気味いい江戸弁の啖呵とカッコいい後ろ姿、そんな作品に憧れて書いたような気がします。
あんまり覚えてないけど。
改めて読んでみて、少し手を加えたら再演も可能なのでは・・・?と思ったりしてます。

では、参りましょうか。

登場人物

・新吉:いづも屋亭主。またの名を弁天の新之助。
・河上彦斎(かわかみげんさい):熊本藩士。幕末四大人斬りの一人。実在の人物。
・桐嶋求馬(きりしまきゅうま):新政府役人。元々は彦斎と同じく人斬り。現在は新政府役人。野心家。
・源八親分:元岡っ引き。明治維新後は新政府に仕えず、唯一人、新之助を捕えることだけを生甲斐にしている。
・おさと:新吉の妻。小料理屋・いづも屋を切り盛りする女将。
・志乃:品川の遊女。没落した武家の妻女。夫は上野の戦で戦死した。彦斎に身請けされた。
・幸次郎:おさとの弟。新之助の義弟。跳ねっ返りな気質。弁天の大ファン。
・大工の権蔵:芝居好きの大工の棟梁。実は新之助の兄貴分、閻魔の権蔵。
・川路利良(かわじとしよし):欧米の近代警察組織の骨格を日本で初めて構築した日本警察の父。実在の人物。
・瓦版売り:瓦版売り。背景説明やストーリーテラー的な役割も持つ。
・遊女
・夜烏の五兵衛
・捕り方たち


零:瓦版売り①(前説も含む)

瓦版売りが楽隊と共に客席から入ってくる。
手にはフライヤー(やりすぎ?)を持っている。

瓦版 「さぁさぁ、聞いた聞いた。お集まりの皆の衆、飲み物片手でいいから聞いとくれ。そろそろ舞台の幕開けだ。と、その前にあっしから伝えておきてぇことがある。(と、諸注意。携帯電話、1ドリンク1フード制について、トイレのことなど)・・・それじゃあそろそろ始まるぜ。スタージャックスのライヴハウスアクト「弁天推参~粋後姿明治白浪~」。物語は、その明治に変わるちょいと前、元治元年のとある夜。お月さんも出てねぇ真っ暗な江戸の夜から始まりだ。火事と喧嘩は江戸の華。だが忘れちゃならねぇ、もっと大きな華がある。江戸っ子たちを虜にした、希代の夜盗、弁天の新之助の夜働きだ。・・・おっと、言い忘れた。あっしかい?あっしは、この辺りを根城にする瓦版だ。以後お見知り置きを!」

瓦版売り、そう言ってハケる。

一:弁天推参~幕開け~(幕末の頃/江戸)

夜の闇。遠くから聞こえる呼子の音。複数の足音。
と、客席になだれ込む捕り方たち。口々に「御用だ」などと叫んでいる。
手には御用提灯。
ふと舞台に目をやると、漆黒の中にひとつの影。
ぼんやり見えるその影に、捕り方たちが提灯を一斉に向ける。
幾筋かの光が影に当たる。
そこに片膝をついている男、弁天の新之助。盗人装束。
ツケ。ババン!
ゆっくりと立ち上がり

新之助 「ちっ、こっちにゃ用はねぇんだけどなぁ…」
源八 「弁天、御用だ」

音楽。

舞台上、捕り方たちとの立ち回り。

新之助 「これじゃあキリがねぇや。あらよっと」

と言って、群がる捕り方たちを跳ね飛ばす。
弁天、懐から一枚の札を取り出し源八に向かって投げる。
パシッと受け取る源八。

新之助 「あばよ、親分」

弁天、その隙に去る。
源八悔しそうな表情。
音楽乗り替わる。
映像。
弁財天の札。
その上に重なる「弁天推参!」のタイトル。
キャスト紹介。
キャストロールが流れて、それに合わせて出演者が順繰りにサスに入る感じ。
その最後、二階席に現れる、弁天の新之助。
捕り方たちが御用提灯を向けると共に弁天に明かりが。
ツケ。ババン!

新之助 「盗(と)られて困らぬ天下のお宝、一切合財頂戴してやらぁ」

暗転。
その中に浮かび上がる「粋後姿明治白浪」のサブタイトル。

二:瓦版売り②

瓦版売りが客席から現れる。

瓦版 「さぁさぁ買った買った!明治に入って久しぶりの大捕り物だぜ!場所は木挽町裏長屋、山村座の芝居も真っ青の大捕り物だ。捕られたるは大物も大物、江戸中にその名を轟かせた賊徒の頭領、白足袋の伝右衛門。討ち捕ったるは明治新政府のお役人、桐嶋求馬様だ。真昼間からの大捕り物。白足袋の一家は伝右衛門も含め、五名人の所帯。そこへ乗り込んだ明治新政府司法省直属東京府邏卒(らそつ)、って、長ぇ名前だが要は新政府の捕り方だ、こちらが七人。都合十二人の大乱戦。斬った斬られたの大騒ぎ。さあその結末やいかに!詳しくはこれに書いてるぜ!さあ買った買った~!」

と、瓦版売りハケる。
照明が切り替わって。

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