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セコムで目覚める朝、朝の見送り

久しぶりに6時台に目が覚めた。
というのも、セコムのけたたましいサイレンのような音が聞こえてきたからだ。母がセコムの解除をせずにお風呂場の窓を開けてしまったらしい。

せっかく目が覚めたので、二度寝をすることなく本を読んだ。
吉本ばななの「マリカの永い夜 バリ夢日記」
多重人格を持つマリカと元担当医がバリを旅するお話。冒頭は吉本ばななには珍しく、マリカとの出会いや病状の説明で心理描写は少なかった。でもなんだろう、あの空気感。吉本ばななを読むと、すっと心が静まって、本の世界に引き込まれる気がする。

ふと、家が静かなことに気がついた。
母はこの静かな中、朝誰にも会わずに家を出ているのかもしれないと思った。
わたしの母は、わたしがどんなに早い時間に出かける日でも起きて見送ってくれるので、今まで片手で数えられるくらいの誰にも見送られることなく家を出る時ちょっと寂しいようなひんやりした気持ちになる。
その感覚を母は感じていないかもしれないけど、なんだかわたしの方が寂しくなって時計を見た。8時21分。まだ出勤していない時間。

1階に降りていくと、玄関に母の荷物が見えた。よかった間に合った。
「おはよう」と声をかける。昨日庭から摘んできた薔薇のいい香りがすることやご飯をが押しかけしてあることなどの話をしていると、出発の時間になった。
玄関から一緒に外に出た。ひんやりした空気が気持ち良い。

母は自転車に乗って、「母はビューンと行くから、またね!気をつけて出かけてね」と職場に向かった。
突き当たりを曲がるまで、母は3回も振り返ってわたしに手を振った。わたしは最後、母に見えるように今までで1番大きく振り返した。

こうやって朝送り出せたらいいなと思った。
この時間を大切にしたい。
明日から6時くらいに起きて、読書をして、母の朝の支度を手伝って、玄関を出て見送ろう。

空は雲に覆われて、昨日より寒い1日になるみたいだけど、心は満たされて晴れやかだった。

写真:minolta tc-1×kodak color plus200

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