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祝26周年!RPG「ゼノギアス」の名曲を振り返る

◯はじめに


 旧スクウェアよりPS1で発売されたRPG「ゼノギアス」が、本日から発売26周年を迎えた。
 ゲームそのものに関しては過去の記事で幾度も言及しているので、本稿で深掘りはしない。「膨大かつ遠大なSF設定」「一般的なファンタジーRPG×ガンダム的なロボットギアバトル」「(納期等の問題で)終盤が駆け足ながら見事に締め括られるシナリオ」……。作品の特性を無理矢理かいつまんで語ると、このような具合になるだろうか。


 さて、「ゼノギアス」の忘れてはならない魅力として、光田康典みつだやすのり氏(「クロノ」シリーズ、直近ではアニメ版「ダンジョン飯」の劇伴等)が手掛けた秀逸なBGMが挙げられる。  
 本日よりYoutube・Spotify等で楽曲のストリーミング配信が始まったらしいので、これを機に「筆者の一押し楽曲」を数曲だけ紹介していきたい。


◯「暗き黎明」

I am Alpha and Omega,
我はアルパなり、オメガなり、

the beginning and the end,
最先(いやさき)なり、最後(いやはて)なり、

the first and the last.
始めなり、終わりなり

 このような『新約聖書』の引用、そして荘厳な「暗き黎明」とともに「ゼノギアス」は幕を開ける。
 オープニングの舞台はゲーム本編の時代より一万年前、宇宙を征く巨大恒星間移民船で発生した大事件。急かすような重苦しいメロディーが事態の重大性を、そしてクライマックスの爽やかな旋律が「物語の始まり」を際立たせてくれる。



◯「遠い約束」

 本作のエンディングテーマ「SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~」のオルゴールアレンジ。ゲーム開始後比較的すぐに耳にする楽曲(作中でも「オルゴールから流れる曲」として使用される)で、とても数十分前に体感した「巨大宇宙船墜落」が嘘のように感じる優しい旋律である。このオルゴールは後々の物語に関わることになるが、これ以上の言及は避けておく。
 なお、光田氏が携わった「クロノ・トリガー」「クロノ・クロス」でも同名を冠した別楽曲(「クロノとマール〜遠い約束〜」「生命〜遠い約束〜」が存在する。三曲とも絶品。

◯「鋼の巨人」

 敵と対峙するイベントやバトリング(格闘ゲーム的なミニゲーム)で用いられる楽曲。曲名は当然、作中で登場するロボットギアを指すのだろう。ロボアニメのテーマ曲として使われてもおかしくない雄壮さが見所である。
 通常エンカウント曲「死の舞踏」は比較的地味なためか、個人的にはこちらの方が戦闘BGM強く印象に残っている。


◯「神無月の人魚」

 静かな旋律が印象的な、ナノマシン群体の少女:エメラダのテーマ曲。メロディに浸っていると、ゆっくりと海底(エメラダ的には地底だろうか?)に堕ちていってしまいそうな気分になる。
 本作は秀逸な楽曲名が多いが、「神無月の人魚」はとりわけ洒落ているように思える。エメラダは「神無月」も「人魚」の要素も持たない気がするが、どのような意味を持つ曲名なのだろうか?サウンドトラックのライナーノーツに何かヒントがあるかもしれないが、iTunesにてDL版を購入してしまったため確認できず……。


◯「風が呼ぶ、蒼穹のシェバト」

 空中国家:シェバトで流れる楽曲。これまでの舞台とは隔絶されたような神秘的なメロディが印象的。個人的には本作で最も好きな街・国のBGM。
 流れるシチュエーション(物語の後半、とある事情から地上でも流れるようになる)や独特の旋律は、「クロノ・トリガー」の「時の回廊」を彷彿とさせる。


◯「飛翔」

 盛り上がるイベントで使用される、個人的に「ゼノギアス」内で最も愛している楽曲。実質的には重量級ギアゼプツェンパイロットの少女:マリアのテーマ曲と呼んでも差し支えない。ラスボス戦手前でも使用されているので、紛れもなく本作を代表する一曲だろう。
 胸が熱くなること必至な「マリアのゼプツェン搭乗」の直前、コメディテイストのイベントで用いられる謎演出があったが、そちらについては言及しないでおこう……。


◯「神に牙むくもの」

 ラスボス戦(実質的にはイベントバトル?)のBGM。直前に発生する事実上のラスボス曲「覚醒」と比べるとテイストが大幅に異なり、軽快なリズムがどこか不気味さを感じさせる。この何とも言えない不気味さもまた「ゼノギアス」らしいと思い、「覚醒」ではなくこちらを挙げさせて頂いた。

↓念のため、比較用に「覚醒」も貼っておきます。


◯「SMALL TWO OF PIECES 〜軋んだ破片(かけら)〜」

 全編英語歌詞によるエンディングテーマ。スクウェアRPG史上初の主題歌だったらしい。
 一万年に亘って巻き起こる幾つもの戦い、凄惨な出来事、悲しみが渦巻く「ゼノギアス」だか、結末はこの楽曲と共に見事な大団円──愛の成就で締め括られる。終盤のギターソロ、それ以降の抑えめなCメロが「壮大な大団円感」に華を添えてくれる。
 確かに本作は終盤の駆け足展開・操作性の悪さ等、全ての要素を絶賛できるゲームではない。しかし、この楽曲が「終わり良ければ全て良し」を体現してくれるような気さえする。「遊んでよかった」「物語を追いかけてよかった」、多くのプレイヤーがその思いを胸に抱いて楽曲を聴いたはずだ。


 さて、「ゼノギアス」は現行ハードでリリースされていないため、遊ぶハードルが少々高い( PS1・2の実機、或いは「 PSアーカイブス」を利用する必要がある)。同世代のスクウェア産大人気RPG「サガ フロンティア」「クロノ・クロス」等がHDリマスター化されている以上、本作のリマスター化を期待しない方が難しい。
 リマスター化が達成されたあかつきには、できることなら多くの方にサブスク配信サービスだけでなく、実際にコントローラーを握った上で楽曲に聴き惚れてほしい。それがいち「ゼノギアス」、そして光田氏のファンとしての切なる願いである。


◯おまけ 光田康典氏の新たなる名曲


 2022年夏、「ゼノ」の名を冠する最新作「ゼノブレイド3」が発売された。
 本作は楽曲の一部を光田氏が手掛けているのだが、その際に産み出してくれた新たな名曲について、最後に一曲だけ紹介させてほしい。 
 こちらのPVの40秒目から始まる「命を背負って」(平松建治氏との共作楽曲)である。


 過去作「ゼノブレイド1・2」のBGMの楽曲を取り入れながら、最新作のテーマ曲(実際にゲーム中では2・3回しか流れないが、「テーマ曲」という捉え方で間違いないと考えている)として相応しい楽曲に昇華してくれた。
 著名な過去の代表作「クロノ・トリガー」「ゼノギアス」「クロノ・クロス」の楽曲にも匹敵する、2020年代の光田氏を代表する新たな名曲と呼んでも差し支えないだろう。
 直近ではアニメ版「ダンジョン飯」で、ファンタジー色溢れる劇伴も手掛ける光田氏。ゲーム・アニメ等の媒体を問わず、まだまだ新たな旋律を我々に届けてくれることを願ってやまない。


※ヘッダー画像はスクウェア・エニックス「ゼノギアス」公式サイトより引用しました。

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