「クロノ・クロス」の個人的名曲 三選(+殿堂入り 二選)
●「クロノ・クロス」と楽曲の魅力
日本RPG界の歴史に残る大傑作「クロノ・トリガー」(1995)の続編としてPS1で発売された「クロノ・クロス」(1999)。
「ドラゴンクエスト」の堀井雄二氏・鳥山明先生、「ファイナルファンタジー」の坂口博信氏の三名、いわゆる“ドリームプロジェクト”が製作に携わった「トリガー」に対し、その三名が全員参加していない「クロス」は分が悪い。そして様変わりしたシステムや前作キャラに訪れる悲劇的展開などの理由もあり、今日も本作は賛否両論を巻き起こしている。
一方、“パラレルワールド”を題材としたSF色の強いストーリーと「トリガー」と絡み合う綿密な設定、南国を主な舞台とした世界観などには定評があり、今日でも俺を含めた根強いファンが多い。ゲーム性よりもテキストや世界観を重視する、いわゆる“雰囲気ゲー”が好きな人のツボを突いているのかもしれない。
残念ながら本作は現行ハードでは遊べない(プレイするなら実機もしくはPSvita・PS3等の「ゲームアーカイブス」でDLする必要がある)ので、「サガフロンティア2」「ゼノギアス」などと共にswitch・PS4でHDリマスター化してほしいと俺は日々願っている。同時期のPS1の作品「サガフロンティア」「聖剣伝説 レジェンドオブマナ 」は今年リマスター化が実現したので、遅かれ早かれ本作もその後に続いてくれる…と思いたい。
↑プレイ画面。リマスター化によって更に美しい世界が楽しめることを期待している。
そんな本作が人気を博している最大の理由は、「トリガー」より続投した作曲家:光田康典氏による劇伴の完成度が高過ぎるためだと俺は感じている。RPGによくあるオーケストラサウンドやプログレッシブロックと一線を画した民族音楽風の楽曲群が、異国情緒と空と海の“蒼さ”が前面に溢れるヴィジュアルに更なる彩りを与えてくれるのだ。
俺自身サウンドトラックを所持しているのは勿論のこと、近年開催された「CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour」にも現地参戦している。光田氏自身もキーボード等で参加しており、生演奏を堪能できたのは勿論“ナマ光田”を拝めたのも非常に嬉しい経験だった。
本稿ではそんな「クロノ・クロス」の楽曲から、俺が特に気に入っている三曲をご紹介したい。なお、OP・EDの二曲を入れてしまうと選択肢が限られてしまうので、それらは“殿堂入り”とさせていただく。
●<殿堂入り>「CHRONO CROSS 〜時の傷痕〜」
本作の楽曲群で文句無しの最高傑作は、壮大なOPテーマ「CHRONO CROSS 〜時の傷痕〜」である。ファンからの人気もとりわけ高い。例に漏れず俺も大好きだ。
この曲はしっとりとした導入部分、転調後のリズミカルなパーカッション、急かすような弦楽器、そしてメロディアスな“ティンホイッスル”の主旋律※が特徴となる。OP映像のセンスの良さ・カット割の気持ち良さも相まって、「クロノ・クロス」といえば「時の傷痕」というイメージを持つファンも少なくないはずだ。
なお、Youtubeでこの曲を検索をすると、莫大な数の“演奏してみた”動画がヒットする。曲の素晴らしさと人気の高さを認識することができる証左であろう。
※俺は音楽・楽器に疎く、こちらの記事で楽器の名前を知りました。先述のライブの際には尺八で演奏されていました。
●<殿堂入り>「RADICAL DREAMERS 〜盗めない宝石〜」
作品のEDテーマとなるヴォーカル曲。アコギが奏でるシンプルで優しい音色に、みとせのりこ氏の非常にハッキリとした、そして子どもに語りかけるような歌声が合わさった不思議な感触のバラードである。“SFラブストーリー”としての側面がある「クロノ・クロス」の物語を、しっとりとした余韻を残したまま幕を下ろしてくれる一曲だ。
学校のプールや線路など、ノスタルジックな実写風景が使われたED映像も必見である。まだ未見の方はぜひ本作をプレイし、この素晴らしさを直に体験して頂きたい。
●「時のみる夢」
ニューゲーム・ロード等を選択するタイトル画面を表示させたまま、しばらく放って置くと流れる“プレイデモ動画”でのみ流れる勇ましい楽曲。プレイヤーによっては一切存在に気付かない可能性さえある、いわば隠しアイテム・隠しキャラのような曲である。南国の密林を思わせるイントロの打楽器がいかにも「クロノ・クロス」らしい。
なお、曲の前半は“アナザーワールド”のフィールド曲「夢の岸辺に アナザー・ワールド」、曲の後半は前作のOP曲「クロノ・トリガー」のアレンジとなっている。「夢の岸辺に」自体は主人公:セルジュが存在しない世界を表現した大変もの悲しい曲であるはずなのに、アレンジ次第でOPテーマとしても通用しそうな曲になるのが凄い。光田氏の実力を感じる一曲である。
●「トカゲと踊れ」
物語の冒頭、まだ本格的な冒険が始まる前に訪れるダンジョン“トカゲ浜”で流れる曲。「時の傷痕」の勇壮さは何処へやら、これから“ホーム”と“アナザー”二つの世界、そして星の命運をかけた壮大な物語が始まろうとは微塵も感じさせない軽快さが楽しい。
本稿にて紹介した三曲+二曲のうち、残念ながら「20th Anniversary Live Tour」ではこの曲のみ演奏されていない。欲を言えば、是非とも生で聴いてみたかった。
●「生命 ~遠い約束~」
本作で真のエンディングを見るためには、ラスボスに対して特定の技を順番に発動させることで“音”を鳴らし、最終的にとある“メロディ”を奏でる必要がある。他のRPG作品で例えると、糸井重里氏の「MOTHER」一作目のとある仕掛けを複雑化させたようなギミックだ。厄介な事にラスボスはメロディ発動を妨害してくる(一定のダメージを与えることで妨害行動は止まる)ため、少々苦戦を強いられたのが苦い思い出だ。
その行動がようやく成功した瞬間、断続的だったメロディがリフレインし、この曲が流れ出す。“ついにやったぞ!”とプレイヤーが感じるカタルシスと見事に同調した演出・楽曲と言えよう。なお、先に挙げた「RADICAL DREAMERS 〜盗めない宝石〜」のアレンジでもある。
●最後に
#スキな“3曲”という縛りは非常に難しい。数に制限が無ければ、南国情緒を感じて癒される「アルニ村 ホーム」「時の草原 ホーム・ワールド」「ガルドーブ ホーム」、緊張感を煽るボス戦「死線」なども挙げたかった。
このように、書ききれないほど素晴らしい曲に満ち溢れた「クロノ・クロス」。これらの素晴らしさを入り口として、是非とも今以上に多くの人に遊んでほしいものである。
スクエニ様、その為にも早急なHDリマスター化を是非!お願いします!
※画像は全てスクエニ公式ホームページより引用しました。
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