野崎 挽生 Nozaki Bansei

1986年東京は板橋の生まれ。30越えた辺りでのっそりと実家を出る。 2021年1月よ…

野崎 挽生 Nozaki Bansei

1986年東京は板橋の生まれ。30越えた辺りでのっそりと実家を出る。 2021年1月より短歌を転がし中。「短歌人会」所属。

マガジン

  • 「短歌人」掲載歌

    所属結社誌「短歌人」に掲載された歌です。

  • 一首評(という名の雑記)~「短歌人」より~

    主に所属結社誌「短歌人」の会員2欄から気に入った歌(また、そこから派生して考えた事柄)について書いていきます。

最近の記事

「短歌人」2023年8月号 20代・30代会員競詠 10首

断酒アプリ 非純正 燃えた電動自転車の電池の属性伝える見出し ANNA SUIが人の名前と知ってから上書きされた思い出がある アルコール依存と医者に言われたと断酒アプリを君はひらいて 差しだされた断酒アプリのカウントは0年0ヶ月7日2時間 きみのためぼくもおさけをやめようとおもうことすらできない けれど 酒抜きの君との遊びを考えて、ラウンドワンにでもいこうかね 建て付けの悪い引き戸を両腕で引けば便座は自動で開く 悪い足引いてフィリピンパブに来た人の英語の音はな

    • 「短歌人」2023年7月号 月詠5首

      反射神経がすこぶる良い人とぶつかり先に謝られてた 画素数の高いスマホをもつ君が撮った串カツおいしかったね 駅前の違法駐車を取り締まる舞鶴警察署員のふたり 義父母らの入る予定の墓にきて「よろしくおねがいします」といのる 自衛官募集の幕は銀行の名より大きく垂れて揺れてる 以上の5首が会員2欄(P90)に掲載されています。

      • 和食と短歌の型 「短歌人」2023年4月号より

         料理をするようになった。昨年九月の引っ越しで、妻よりも私の方が早く帰宅することが多くなり夕食を作る機会が増えたからだ。 レシピの表示されたスマホを握りしめてスーパーへ行き、材料欄に記されている食材を一つずつカゴに入れていく。店内を行ったり来たりしながらのそれは、テレビゲーム内のミッションに挑戦しているようで楽しかった、のは料理を始めて半月くらいまでの話。新鮮味が失われていくにつれ、仕事終わりにレシピ通りの食材を買ってきて料理をするということがだんだんとつらくなってきた。  

        • 「短歌人」2023年6月号 月詠5首

          午後一時ブルーシートに覆われた足場の中よりアラームの音 マネキンは在庫処分の店を出て荷台の縁に額をつける 号外を持つ手に伸びる手と手と手 やがて売られる3980円(サンキュッパ)にて 看護師は睾丸視触診前にカーテンそっと閉めて外へと リビングの遅れ始めた長針の差した窓より射しこむ夕日 以上の5首が「短歌人」2023年6月号会員2欄(P79)に掲載されました。

        「短歌人」2023年8月号 20代・30代会員競詠 10首

        マガジン

        • 「短歌人」掲載歌
          27本
        • 一首評(という名の雑記)~「短歌人」より~
          3本

        記事

          「短歌人」2023年5月号 月詠5首

          バックヤードの扉の前の一礼は返されること前提とせず 苦労して書いた便箋抱えつつ苦労に見合う封筒を買う 検査前禁欲期間のただなかにあれば聞こえる欲望の声 禁酒やら禁煙やらとまた違う禁欲という原っぱにいる 紹介状は×の印で閉ざされて私のDATAは封筒の中 以上の5首が「短歌人」2023年5月号の会員2欄(P92)に載っています。

          「短歌人」2023年5月号 月詠5首

          「短歌人」2023年4月号 月詠5首

          階段を駆け上がる人の靴裏にあるだろうアディダスのロゴを見た 寝たいのか寝たくないかの判断を委ねた先の珈琲牛乳 記録的寒波の中の人群れを盾にし盾になりつつ進む あの日見た冬の観覧車の回る速度で動く雲を追い越す 夕暮れの日能研の児の背負うNに引かれて駅へと歩く 「短歌人」2023年4月号会員2欄(P78)より

          「短歌人」2023年4月号 月詠5首

          「短歌人」2023年3月号 月詠5首

          熱をもつ下ろしたての札束を抱き国道沿いを選んで歩く 年の瀬の工事現場の白旗は音なくふられ我を動かす お湯割りはお湯をはじめに注ぐのと教えてくれた人は声だけ 関西の訛りの混じる妻と食う臨場感に満ちたたこ焼き くるくると回るアトラクションを待つ列を見下ろす扇風機の錆 「短歌人」2023年2月号会員2欄(P81)より

          「短歌人」2023年3月号 月詠5首

          「短歌人」2023年2月号 月詠5首

          ニッポンのゴールに上がる歓声の中の私の声の異質さ 朝方に<無敵艦隊撃破>というテロップは踊り、私は外へ 魔女狩りの対象となる恐れあり無水カレーを作るあなたは クノールの朝のスープの底にある黄色のだまをすくう幸せ 雨粒に囲まれながら国道を深夜料金にて運ばれる 以上の5首が「短歌人」2023年2月号会員2欄(P78)に掲載されています。

          「短歌人」2023年2月号 月詠5首

          「短歌人」2023年1月号 月詠5首

          妖艶な傘の骨子に守られて私は家路をゆったり歩く 土井善晴の味噌汁の中ピーマンはわたをとられず堂々といる 夜勤明けらしき人らに囲まれた缶チューハイの銀がまぶしい 共通の知人がこの前死んだこと伝えるに足る重さを計る 両膝にポケットを持つ友はよく玄関先で鍵を探した 以上の5首が「短歌人」2023年1月号会員2欄(P86)に載っています。

          「短歌人」2023年1月号 月詠5首

          「短歌人」2022年12月号 月詠5首

          軒下で私は私の自転車が雨に打たれる様を見ている 回転率が想像つかないHERMESの列をしばらく見てた祝日 膨らんで明日以降の合鴨が並ぶ深夜の中華料理屋 いなくなる人は突然いなくなることを泣かない言い訳にする 基地のない原発のない東京に生まれ育つをハンデと思う 以上の5首が「短歌人」2022年12月号会員2欄64Pに載っております。

          「短歌人」2022年12月号 月詠5首

          「短歌人」2022年11月号 月詠5首

          清春が好きだったこと思い出し墓前に流す「忘却の空」 前回と同じ構図で撮ろうぜと一年前の画像を囲む 君の墓中心にしてシャッターを切り続ければ一枚くらい 君の死をきっかけにして会う人と会わなくなった人は半々 コンビニでトイレを借りるときにだけ買うグミがある鞄の底に 以上の5首が「短歌人」2022年11月号会員2欄(P84)に掲載されています。

          「短歌人」2022年11月号 月詠5首

          「短歌人」2022年10月号 月詠5首

          銃声と気づくまでの間 銃社会ではない日本だからこその間 意欲あるコメンテーター監修の表に見つける母の宗教 滞りなく執行された刑の場を思えば浮かぶ漆喰の壁 眼鏡からたまに時計の長針の動く音するひとりの夜に 花柄のソファーのうえに鼻型に窪むマスクがうつ伏せにあり 以上の5首が「短歌人」2022年10月号会員2欄(P74)に掲載されています。

          「短歌人」2022年10月号 月詠5首

          「短歌人」2022年9月号 月詠5首

          拝み屋さんがこれから来ると呟いて祖母は卓上の爪切りをしまう 終わらない閉店セールの靴屋にて買った革靴潰れてもなお 半年に一度外れる顎の処置は十秒七千五百円也 再開発予想図の中タワマンは生まれ故郷の町を見下ろす 政党のうちわで扇ぐ 信号が青になるまでひたすら扇ぐ 選歌を受けた以上の5首が「短歌人」9月号の会員2欄(P66)に載っています。

          「短歌人」2022年9月号 月詠5首

          「短歌人」2022年8月号 20代・30代会員競詠

          婚姻の匂いかぎつけ戦争のニュースに指輪のバナーは光る じゃあなに?と問われることを怖れつつ「私はロボットではありません」 「心臓を捧げよ」という『進撃の巨人』の台詞に高鳴る心臓 祈るとき手は合わせるか組むべきか分からず見つめるブラジルの先 今日ついた嘘の分だけ荒れた手に入店前の液が沁みゆく 振り向けば一コマ落ちの影がある私の不意をわたしがつけば 電線の影は地を這いどん突きの<止まれ>を斜めに突き刺して焼く 県道の行き先示す白色の矢印が差す空の鳩ヶ谷 以上の8首

          「短歌人」2022年8月号 20代・30代会員競詠

          短歌人2022年7月号月詠5首 その他の掲載歌

          旅客機の尾翼についたカメラにて右翼に描かれた日の丸を知る 南阿蘇牧水夫妻の歌碑の立つホテルの人も歌碑を知らない 七味唐辛子の筒をとんとんと叩けば炭火地鶏は紅く 着陸の揺れが覚ました妻の夢スマホで調べる電車の時間 降機後に「戻れません」と記されたゲートを抜けて食べるまぜそば 選歌を受けた以上の5首が「短歌人」7月号の会員2欄(P91.92)に載っています。 ~会員欄以外での掲載歌~ <5月号作品月評 会員2 菊池孝彦選> 戦争が始まったのに三分の遅れで謝る電車は走

          短歌人2022年7月号月詠5首 その他の掲載歌

          「短歌人」2022年6月号 月詠5首

          曇天の路地を斜めに白猫は赤のボルボの下の影へと 都庁前駅で電車を乗り換える大江戸線から大江戸線へ 電車乗るティーンに向けた広告で二重施術の金額を知る 得をすることをためらう癖がある得してなかったわたしのために 原発の定点カメラの映像に価値を与える三月の揺れ 選歌を受けた以上の5首が「短歌人」6月号の会員2欄(P68)に載っています。

          「短歌人」2022年6月号 月詠5首